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科学が認める最強の勉強法【検索練習入門】THE FINAL「ここまですごい、インターリービング」「注意点は?」

科学的に最も効率的な学習法「検索練習」に入門!シリーズの10回目です!(#1, #2, #3, #4, #5, #6, #7, #8, #9)今回が最終回となります!

前回からは検索練習のパワーを存分に秘めた「インターリービング」の話に進んでまして、今回もその続きになりまーす。


▼インターリービングの具体的な効果(承前)

インターリービングの学習効果を語るときに必ずと言っていいほど引用されるもう一つの研究が、こちらも南フロリダ大学の2009年の研究(R)。

実験の概要はこんな感じ。

1.対象は4年生の子供24人で、多角形の面、辺、頂点、コーナー(交わる辺の数)の公式を使う問題について学んでもらう

2.この際、子供たちの半数には、ブロック練習で(面→面→面→辺→辺→…)、残りの半数にはインターリービングで(面→辺→頂点→辺→コーナー→…)、例題や演習問題に取り組んでもらう

3.翌日、両グループとも同じ問題で、学習した公式を使う問題のテストを解いてもらう

スペーシングの間隔は統一して分散学習の効果は除いたうえで、インターリーブ練習の効果をチェックしたわけですな。


その結果は、

■ インターリービンググループは、演習のセッションではブロッキンググループよりスコアが低かった(68% vs 99%)

■ が、翌日のテストでは、インターリービンググループのほうが圧倒的にスコアが高かった(77% vs 38%)

だったそう。つまり、練習の段階ではブロッキンググループでは問題が予想でき、使うべき公式がわかる分成績も高いけど、問題がシャッフルされた翌日のテストでは立場が逆転し、インターリービンググループのほうが2倍以上スコアが高くなったんだ、と。


さらに、この研究では生徒たちの「エラーの種類」もチェックしておりまして、

■ 「どの公式を使うべきか?」の選択を間違う確率はインターリービンググループのほうが圧倒的に低かった(10% vs 46%)

てなことも報告されております。公式自体をすべて覚えていたとしても、「どの公式を使いべき場面なのか?」がわからなければ意味がないわけで、この場面を見極める能力がインターリービンググループのほうが高くなっていたというわけっすね。


この結果を踏まえて、研究チームはこんなことを言っておられます。

インターリーブの潜在的なメリットにもかかわらず、ほとんどの数学の教科書はブロック式の練習ばかりだ。さらに数学の教科書(および教科書ソフト)の著者にとって、インターリーブ式の練習問題を増やすのは容易であり、次の版では練習問題の順番を並び替えるだけですむ。それだけで、生徒はこれまで何度も実証されてきたスペーシングの大きな恩恵を享受できるだけでなく、今回のデータで示されたインターリーブのメリットも同様に享受できることになる。

インターリーブを導入するにあたってのコストは非常に少ない一方で、それに比較したメリットは非常に大きなものになる、と。同じことは、教育者だけでなく独力で勉強する場合にも当てはまるでしょう。


また、別にインターリービングのメリットが上回るのは1日たってから!というわけでは決してなくて、同様の研究では学習直後のテストでもインターリービンググループのほうが成績が有意に高かった!という報告も複数あります。

なので、当日の午後に試験が控える場合でも、1週間後に試験が控える場合でも、同様に、テスト・クイズをするならインターリービングを取り入れたらいいんじゃないの?とか思うわけです。


対象を数学に限定すれば、代数、幾何、比例、指数とか、ジャンルは問わないし、対象者も小学生から大学生まで広くインターリービングの効果は確認されておりまして、数学のような単なる暗記では対抗できない概念的な学習でもインターリーブが効率的な勉強であることがうかがえます。


もちろん、インターリーブの効果を期待できる対象は数学以外にも多岐にわたっていて、一部を紹介すると、

■ 絵画のアーティストと作品の対応を大量に学習し、学習の段階で提示されなかった絵画を見て誰の作品かを当てる実験(R)では、ブロッキングよりインターリービングのほうが高い成績を残した

■ 大学生を対象に、立体の体積の求め方を学習してもらった実験(R)では、演習では提示されなかった新しい形の立体の体積を求める課題では、インターリービングを行ったグループのほうが、ブロッキンググループの3倍以上正答率が高かった(63% vs 20%)

■ 同種の実験(R)では、最終テストのスコアを予測する精度もインターリービンググループのほうが高かった

といった感じで、学んだ内容を他の問題に応用する能力や、自分の能力を正しく把握してより効率的な学習戦略を構築する能力でもインターリーブはブロッキング学習に勝っているらしい。しかもその差の度合いがかなりでかく確認されているんで、長期的に見たらインターリービングをやっているか否かで数十倍とかの差が開いても全然おかしくないでしょう。


▼インターリービングの最大のメリット「情報の識別性」

そんなわけで、インターリービングにはいろんな方面でもメリットがあるわけですが、そのなかでも、まず重要なのが、「長期記憶に残る」こと。すなわち、問題のたびに記憶のタンスにアクセスしてどの引き出しを引くべきなのか?っていう選択のプロセスを繰り返すことで神経接続が強化され、記憶に残るというポイント。

もっとも、インターリービングに関して、個人的により重要なポイントだと思うのが、「ある問題に対してどの戦略を使うべきかを見抜く力がつく」ということ。

唐突ですが、以下の問題を解いてみてください。

問題:
ある少女が東に8㎞歩き、その後北に15㎞歩きました。さて、スタート地点からゴールまでの直線距離は?

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