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【What is プチ断食?】体重減少だけにとどまらないプチ断食の真価の探求

というわけで、みんな大好き「プチ断食」に関する最新の知見をまとめていきましょうー。

最近では「プチ断食がすごい!」ってのは科学的にもホットな話題でして、少しずつではありますがプチ断食関連のデータはいろんな分野でたまってきておりますので。

とはいえ、「カロリー制限」などの方法と比較すれば「プチ断食」の研究が進み始めたのは最近のことでして、長期的なメリットとか、どんな人に最も効果があるのかとか全然わからないことも多いのが現状であります。なんで、以下で取り上げていく話も詳細はこれからどんどんアップデートされていくでしょう。

まあそれでも現段階のデータを総合的に勘案するだけでも、副作用は非常に小さく、試してみる価値は十分あり。てなわけで、今回は、現時点でわかっているプチ断食のメリットをざっとまとめておきたいと思います。


そもそも「プチ断食」とは何か?

プチ断食はそのほかには、「ファスティングダイエット」とか「インターミッテントファスティング」とか「IF」とか呼ばれたりしますが、基本的な定義は、

■ 1日~1週間くらいを単位に、食事をする時間と食事をしない時間を繰り返す食事法

って感じ。具体的な実践プランはいくつかあるんですが、有名どころとしては、

■ 「〇時間ダイエット」:1日の間で食事をするタイミングを〇時間の間に制限する。〇に当てはまるのは大体4~10時間くらい
■ 「日替わり断食」:好きに食事をする日と食事を制限する日とを交互に繰り返す
■ 「5:2ダイエット」:1週間のうちで、5日は好きに食事をして、残りの2日は食事制限をする

といったところがあります。要するに、「プチ断食」というのは、規則的に食事のタイミングを制限する食事パターンということですね。


で、プチ断食がここまで世界的に注目されている理由としては、やはり「続けやすさ」の面が大きいでしょう。つまり、カロリー制限や低炭水化物ダイエット、低脂肪ダイエット、「〇〇だけダイエット」とかに比べて、(基本的には)食べるものは気にせず、食べるタイミングさえ意識しとけばいいんで、心理的な負担が少ないんですよね。実際、例えば1日の食事時間を8時間に制限するダイエット法の実験とかを参照すると、脱落する人の割合は20人に1人くらいで、「生涯を通じて継続できる食事法」とか言われるのもうなずけます。

しかも、その効果は体重の減少だけにとどまらず、代謝マーカー、認知機能、腸内マイクロバイオームの改善やアンチエイジングとしても高い効果が報告されておりまして、知っておくだけでも価値のある食事法でしょう。

ちなみに、よくある反対意見として、「食事をとらないと集中力が下がってしまう!」ってなものがありますが、実際のデータではむしろ断食をした日の方が活力や注意力、集中力が高まっていることが多かったりするんで、その批判はあまり気にする必要はないでしょう。(プチ断食スタート直後は空腹感で集中できないかもしれないが、それもすぐ収まる)


「プチ断食」で細胞レベルから健康になれる理由

プチ断食を継続したり、プチ断食と普通の食事スタイルを交互に実践することで細胞レベルから健康になるというデータは多く、具体的なデータもあとで大量に紹介していくわけですが、まずはプチ断食で健康になるそのメカニズムを簡単に確認しておきます。

1.体内のグルコース(糖質)が尽きると、肝臓で脂肪酸がケトン体になり、そのケトン体や中性脂肪中の脂肪がエネルギーとして使われ始める(=「代謝の切り替え」

2.このプロセスの中で、細胞や組織を傷つけるフリーラジカルに対する抗酸化物質の防御力が高まり、DNAの修復を促進し、損傷したタンパクを除去し、炎症が抑制される

3.結果、遺伝子の中の老化に関連する回路がリプログラムされ、細胞レベル、個体レベルの老化を遅らせることができる

ってなことが想定されております。そして、このプロセスにおいてカギとなる「代謝の切り替え」が行われるのが、「最後に食事をしてから約16時間後」といわれているんですよ。

要するに、プチ断食で外から体内にカロリーを入れない状態を維持することによって細胞や組織がカロリーの処理や貯蔵の任務から解放され、細胞やDNA等の修復や再生のためにリソースをさけるようになる、というわけなんですな。


てなわけで、以下では小難しい話は思い切ってカットして、現段階でわかっているプチ断食の健康メリットをだーっと羅列していきたいと思います。とはいえ、プチ断食に関しては対立するデータも多いし、ばらつきも大きいし、現状動物実験がメインだったりするしで、ヒトにどのくらい効果があるかとかは不透明なところも多いです。なんで、これから紹介するデータは、プチ断食をすでに実践している人にとってはモチベーションを上げるため、これから始めようか迷っている人には背中を押すための参考にでもしていただければ幸いです。


プチ断食のダイエット効果はいかほどか?

では、まずは最も期待されることの多いであろう「プチ断食でどのくらい体重が減少するのか?」って問題について考えてみましょう。この辺りもまだ明確な答えがあるわけではないんですけど、現時点での知見を並べてみると以下のようになります。


■ 全体的には、どのタイプでもプチ断食をすると摂取するカロリーが10~30%減少し、1日500kcalのカロリー制限をするのと同じくらいの減量効果がある

■ 13件の研究をまとめた2015年のレビューによれば、平均2週間で1.3%、8週間のプチ断食で8%くらいの減量を期待できる。Natureに掲載された論文でも、プチ断食のタイプは問わず2.5~9.9%くらいの体重減少を見込めると結論付けられている

■ プチ断食のタイプ別にみると、リーンゲインズなどの時間制限よりも日替わり断食や5:2ダイエットなどの方が減量の効果は大きそう。直近のレビューによれば、日替わり断食、5:2ダイエットは約7%の減量、時間制限系のプチ断食は平均約3%の減量につながる。時間制限の時間は4時間でも8時間でもほとんど変わらない


大まかには以上のような感じで、プチ断食をすると、特に脂肪の量が減少することによるダイエット効果が期待できるみたい。長期的にはカロリー制限の方が効果は大きいというデータもありますが、減量効果に関してはカロリー制限と大体同じくらい、という印象でしょうか。とはいえ、長期的に継続するにはプチ断食の方が有利な感じもしますが。


さらに、ちょっと細かいデータも確認してみると、以下のような感じ。

■ 太りすぎ又は肥満の女性を対象に6週間の日替わり断食を行った実験では、体重が7.1%、内臓脂肪が5.7%減少した。肥満の女性に8週間の介入を行った別の実験では、低脂肪食+日替わり断食、高脂肪食+日替わり断食を行った場合、体重、脂肪、ウエストがどのグループでも減少した

■ 16人の健康で標準的なBMIの大人を対象に、22日間の日替わり断食を行ってもらった実験では、体重が2.5%減少、脂肪が4%減少、空腹時のインスリン値が57%減少、脂肪酸化が増加した。つまり、そこまで太っている人でなくてもプチ断食で痩せられる可能性はある

■ 日替わり断食と普段通りの食事パターンをしてもらった人を比較した実験では、日替わり断食グループで体重が6.5%減少したのに加えて、空腹感は両グループともに変わらなかった食事への満足度や満腹感に関しては日替わり断食グループの方が高かった。つまり、慣れてしまえば、思っているほど空腹感はつらくなく、続けやすいダイエット法だと考えられる

■ カロリー制限と日替わり断食を比べたRCTでは、6か月、12か月のいずれの段階でも体重減少量に有意な差はなかった。24週間にわたってプチ断食とカロリー制限の効果を比較した別の実験によれば、総脂肪、除脂肪体重、内臓脂肪、皮下脂肪の減少量のいずれにおいても有意な差はなかった

■ 肥満の男性51人を対象にした実験では、カロリー制限とプチ断食を組み合わせると、カロリー制限だけの場合よりも体重が減少した。もっとも、除脂肪体重の変化はほとんど同じだった


といった知見が得られております。全体的にみてみると、ダイエット効果がカロリー制限より格段に高い!とかいうことはないものの、別にカロリー制限より劣ることもないし、長期的に継続する必要性を鑑みるとプチ断食の方がちょっと有利かもなーって感じですね。


プチ断食で糖尿病を予防、改善できるか?

現代において糖尿病が非常に深刻な問題となっているのはご存じの通り。2016年の国民健康・栄養調査によると、糖尿病かその予備軍に当たる人は2000万人いるそうで、すなわち6人に1人が糖尿病またはその予備軍に属しているらしい。

そして、それらの9割が生活習慣が原因の2型糖尿病でして、糖質の取りすぎや運動不足が主な原因とされることが多いですが、プチ断食をすればある程度2型糖尿病を予防できるんじゃないの?って声も結構多いんですよね。

そんなところで、現段階でわかっていることをざっとまとめてみると、こんな感じです。


■ 2019年のレビューでは、全体的に、プチ断食でインスリンレベルが低下、インスリン抵抗性が改善、糖尿病リスクが低下する可能性が指摘されている

■ 8人の健康な若い男性を対象にした実験では、隔日で20時間の断食を15日間行ったところ、体重は維持したままインスリン感受性は改善した

■ 糖質制限と5:2ダイエットを組み合わせた場合には、糖質制限のみの場合と比べて、3か月後のインスリン感受性がより改善していた(体脂肪の変化には有意差なし)

■ 4:3ダイエット(週3回の断食)で糖尿病予備軍または2型糖尿病患者のインスリン抵抗性が改善した

■ カロリー制限とプチ断食を組み合わせた場合には、カロリー制限のみのグループと比較して体重やその他のバイオマーカーの変化はほとんど同じだったが、前者の方がインスリン感受性が大きく改善していた


といったところ。メリットの方を多く取り上げましたが、一方で、「8時間ダイエットでインスリン抵抗性が改善したがコントロール群との有意差はなかった」なんて報告もあったりするんで、やはりはっきりしたところはわかりませんが、食事の内容にも気を付けておけばプチ断食自体も糖尿病に効く可能性は十分あるかなーって感じっすね。


心血管系の問題

インスリンレベルや糖尿病を改善できれば、心血管系の問題にもポジティブな影響があるんじゃないの?ってのは想像に難くない話。実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて心臓病で死ぬ確率が2~4倍も高いなんてデータもありますしね。

で、プチ断食との関係で今のところ分かっているのは以下の通りです。


■ プチ断食によってトリグリセリドや血糖値が低下する結果として、心血管イベントのリスクが低下する可能性がある。また、これには心拍変動の増加も関連しているかも

■ オスのマウスを対象に、4週間の日替わり断食を行った結果、内臓脂肪の割合が減少し、脂質プロファイルが改善した

■ ヒトを対象にしたテストとしては、若い女性を対象に、5:2ダイエットとカロリー制限の効果を比較した結果、前者の方がレプチン、遊離アンドロゲンインデックス、CRP、総コレステロール、LDL、TG、血圧が大きく改善していた

■ 50人の参加者を対象にラマダーン断食を行ったところ、断食期間中には普段より炎症マーカーが低下していた。同時に、血圧、体重、体脂肪の減少も確認された

■ LDS教徒を対象にした観察研究のメタアナリシスによれば、断食を行っている人は通常の食事パターンの人に比べてBMIが低い傾向があった。また、教徒は冠状動脈性心疾患、T2Dの発症リスクがそれぞれ35%、44%低かった

■ 3週間の日替わり断食を行った実験では、HDLコレステロールが上昇したがトリグリセリドは低下していた。(同時に体重が2.5%、体脂肪が4.0%減少していたことに起因すると考えられる)

■ 197人の肥満の成人を対象にした実験では、食事のタイミングを制限したグループでは、血圧が有意に低下していた

■ 日替わり断食と有酸素運動を3週間にわたって実践した人は、総コレステロールとLDLが低下した。ついでにトリグリセリドも低下していた


みたいな感じで、動物実験だけでなくヒトを対象にした試験でもそれなりのメリットが見込まれております。メリットが現れる期間としては、プチ断食を始めてから2~4週間くらいで心血管関連の健康指標の改善が確認されるようになり、通常の食事に戻せば数週間後には元に戻るってところ。比較的短期間でメリットが現れる一方、継続しないとすぐに元通りになるってことっすね。


がん

がんに関しては、現状動物実験がほとんどですが、理論的にはプチ断食で以下のような効果が期待されております。

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