化学って何だろう? その3

受験生の学部選びにも関係するが、化学系の学部選びの話。

理系の場合は、国家資格の受験要件に関係する医歯薬や建築系を除くと、基礎科学系(理学系)とテクノロジー系(工学系、農学系、と薬科学系)に分かれる。
そのため、理学系と工学系でどこが違うのかという問いが出てくる。

ざくっと言えば、基礎科学系は社会に役立つかというよりも、科学を深掘りすることに重きを置く。
基礎科学系は、物理学、化学、生物学、天文宇宙、地球科学(地学)、数学といった内容で、高校の理科や数学を深掘りするようなイメージだ。
当然、その先には科学そのものを発展させる研究も視野に入ってくる。

テクノロジー系は基礎科学の成果をもとに経済性を考慮しながら社会実装(社会に役立つ製品や建造物を作ったり、社会で使いこなすこと)することを目的とする。
物質・材料系、バイオ系、環境系、建築土木系、機械系、電気電子系、通信系、ソフトウェア系、資源・エネルギー系など、内容がイメージしやすい。ここでは、物理学、化学、生物学、数学、ソフトウェア等が横串的に入ってきて、社会にどうやって活かしていくのかを勉強したり研究したりする。

ここで、どこに進んだら将来が有利か?

大学で学んだ専門知識が就職後の仕事に直結することは稀で、大凡の方向性が見えるに過ぎない。
社会人にはよく分かることだろうが、社会に出てからの応用力がポイントとなる。
資格系以外は、基礎科学系でもテクノロジー系でも大学は社会に出る為の力を蓄える時期で、力を発揮するのは社会に出てからと考えることも出来る。
理系の場合は、身につけた基礎科学やテクノロジーの知識と論理的な思考力、及び、その応用力が将来を有利にする武器になるのではなかろうか。

化学の話に戻る。

実は、化学の場合は、基礎科学系(理学系)とテクノロジー系(工学系、農学系、と薬科学系)の差があまりない。
工学部、農学部、薬学部、理学部で同じような内容の研究を行っている研究室が多くある。
研究では、自分の研究テーマに適った最良の手法を用いるので、化学に関しては、基礎科学系(理学系)とテクノロジー系(工学系、農学系、と薬科学系)での垣根はほとんどないと言って良い。
但し、テクノロジー系では関係する分野を広く学ぶ機会がカリキュラムとしてある。
薬科学系では薬とは何かを学んだ上で化学を考える。
工学系では工業化学や化学プラント/製造装置を俯瞰した上で化学を考える。
製図がカリキュラムにあったりもする。
農学系では生態系や生物機能、食品等を俯瞰した上で化学を考える。
理学系では、薬や工業化学や生態系等についてはカリキュラムにない分、化学の深掘りや周辺の物理学や生物学を学びやすくなる。
実験の時間が多かったりもする。
新しい分析技術を開発していたり、医薬品の研究をしていたり、新材料の研究をしている理学部の研究室があったりする。

この他、大学によって様々なカリキュラムが準備されている場合が多いので、学ぶ機会は幾らでもあるだろう。
今の大学は学び研究する環境は昔に比べて遙かに整備されている。
大学で学ばなかったことは、社会に出てから学ぶ。
理学部出身で化学工場に配属となったら製造技術やプラント管理の方法を自分で学ぶ。
工学部出身で新規材料の探索研究に配属されたら無機化学を自分で深掘りする。
経営分野に進む場合もあるかもしれない。
事業企画、ファイナンス、経営管理、マーケティング等。
自分を自分で鍛え上げ、必要な知識を獲得出来るようになる事が大事だ。

そんなんで、
実は、自分は何を、どのような方法で学ぶのかを自分で決めることが最も重要となる。
これは自分の将来を自分で設計することでもある。
自分の将来設計は自分でしか出来ない。
大学選びや学部選びは、その第一歩。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?