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台風でも出社させるのは、違法?

土砂降りの雨の中で出社するのはひと苦労。

そのとき、ふと「台風の中で出社させるのって問題じゃない?」と安全面での懸念を感じませんか?

労働契約法では企業は従業員に安全配慮義務を果たさなければなりませんが、この場合はどうなのでしょうか?


台風の中で出勤を強要すると、安全配慮義務違反の可能性がある!?


労働契約法によれば、企業は従業員の安全確保に努めなければなりません。

法的には災害発生時にオフィス出社を強要などして、万一、従業員が通勤中に被害を受けた場合、企業は安全配慮義務違反の責任に問われる可能性があります。

法的根拠としては労働契約法第5条です。

(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

出所:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/dl/13.pdf

ただし、安全配慮義務はあくまで「業務遂行のプロセス」が対象範囲です。したがって、通勤という行為を強要した場合を除き、原則、安全配慮義務の対象にはなりません。

具体的に見てみましょう。

まず、民法1条2項に基づく信義則(社会の一員として誠実に行動する原則)により、雇用主は労働者から労務を提供してもらう代わりに、賃金支払いと不随義務としての安全配慮義務を負います。

よって、雇用主は労働者の生命と健康を保護するように配慮する義務を負っていますが、これは業務遂行プロセスに対して負うものであり、労働者の通勤は当てはまりません。

もちろん通勤を強要してしまうと問題になりますが、基本は労働者が自己責任のもとで安全を確保し、通勤の可否や方法を決定することが原則となるのです。


とは言え、企業としては労働者自らで判断できる基準を設けたいところ


通勤行為は労働者の自己責任・判断で行うとしても、企業としてはその可否を判断できる基準を示しておきたいところです。台風のような災害が発生した際はなおさら、出社の基準を明確にすることは非常に重要です。

では、台風発生時の出社基準について、どんな論点を押さえておけば良いのでしょうか?

第一に、「どんな情報をもとに判断すべきか?」という論点です。

台風の状況は場所によって異なります。したがって、会社も従業員も、なるべく同じ情報源をもとにしながら、個々の状況に応じて判断していきたいところです。例えば、公的な防災情報や公共交通機関の運行状況などで、事態を正確に把握することが重要です。

次いで「どんな軸で判断すべきか?」という論点です。

通勤は業務外の活動ですが、それでも大事な従業員の安全には最大限配慮したいところです。したがって、就業規則などで明確なガイドラインを設け、従業員が自己判断・責任で決定できるように整備しておくことが大切です。

最後に「会社として業務継続が必要な場合、代替策を用意できているか?」という論点です。

例えば、柔軟にテレワークに切り替えられたり、他拠点で業務を引き受けられるようにしたりするるなど、災害時にも業務が続けられるように準備することが大切です。そのほか、台風発生時は有給休暇の取得を奨励するなど、具体的な指針を設けることも考慮すべきです。

経営としては、災害発生時に従業員の安全を確保することが最優先事項です。したがって、従業員の判断に委ねる部分はあれど、個々がしっかり判断できる基準を設けることが大切です。

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