【基礎編】鉄のおはなし。(PMS/うつ改善) #3
本日、第3話は鉄(Fe)のおはなしです。こちらの記事を掲載して早1年。マガジンの中でもなぜかこの鉄の記事のPV数が3倍ほど多く、どなたかがリンクを貼ってくださっているのかな?と想像しています。どなたかリンク元ご存知でしたらお教えください。お礼をお伝えしたいです^^
さて、本題。第1話「からだのおはなし」では、実践している栄養療法において、健康な身体であるために下記2点が大切だと知りました。
⑴DNAが持つ設計図通りにタンパク質をつくること
良質なタンパク質と、タンパク質の合成に必要なビタミンを十分に摂る
⑵十分なATPを作れる身体であること
代謝がスムーズに行われるように補酵素となるミネラル、ビタミンを摂る
⑴⑵を満たすために、藤川先生が推奨している理論がこちらです。
藤川理論=高タンパク/低糖質食+プロテイン+ATPセット
(ATPセット=キレート鉄,ビタミンB,C,E)
糖質過剰では代謝に多くのビタミンが奪われたり、エネルギーの通貨であるATPが少量しか作られない嫌気性解糖が優位となるため、高タンパク/低糖質食が前提となります。第2話では「第一選択薬はプロテイン」といわれるほど重要な栄養素であるタンパク質について基礎知識からプロテイン導入までをまとめました。
ようやく第3話でATPを激増させるビタミン、ミネラルの中でも特に女性に重要な鉄(Fe)についてのおはなしです。ちなみに、私はキレート鉄サプリとプロテインのおかげで、鬱レベルの生理前のイライラや甘いもの欲が2ヶ月ですーっと消えました。PMSに苦しむ女性、パートナーがPMS持ちの旦那様にはぜひお試しいただきたいです。生命の誕生にも大きく関わる鉄。これまた興味深く、命って繋がってるんだな、と素人ながらしみじみ感じました。
鉄(Fe)とは。
鉄は全身に3〜4g存在しているミネラルです。全身の鉄分のうち約70%は赤血球の主成分であるヘモグロビンや筋肉の中に存在するミオグロビンというタンパク質の構成成分で「機能鉄」と呼ばれています。残りの約30%は肝臓や骨髄、脾臓、筋肉などに蓄えられ「貯蔵鉄」と呼ばれ、フェリチン値で測定されます。貯蔵鉄は機能鉄が不足すると血液中に放出、利用されます。赤血球が古くなるとその中の鉄は骨髄へ戻り、新しい赤血球がつくられるときに再利用されます。鉄は吸収率が悪く摂取量の約15%しか吸収されません。体内で生成されるとはいえ、1日に汗や尿などから1mg排出、さらに女性の月経時には1日0.5mgが奪われます。また、妊娠時には月経による鉄の損失はなくなりますが、胎児や胎盤で使われるため、必要量が通常よりも増えます。
鉄のはたらき。
鉄ってどんな仕事をしているの?ということなのですが、一番よく知られているのはヘモグロビンによる酸素の運搬ではないでしょうか。肺から取り込んだ酸素は機能鉄により全身の細胞へ運ばれます。ミトコンドリア内でエネルギーを生産する際に、ADPの酸化的リン酸化反応が起こり、その中で電子伝達体として鉄が使われているのです。酸素が不足すると、細胞はさまざまな代謝がスムーズに進まず、疲労感が増したり、免疫力が低下します。また体内保有量の0.3%と微量ながら、酵素の構成成分にもなっており、エネルギー代謝にかかわったり、肝臓で毒物を分解、解毒する作用も持っています。
隠れ貧血。
近年、赤血球数(RBC)やヘモグロビン(Hgb)の数値に異常がなくても、貯蔵鉄であるフェリチン値が枯渇する隠れ貧血(潜在性鉄欠乏症)が多くなっています。藤川理論ではフェリチン値100以下は貧血と言われており、先生の病院のデータでは15-50歳女性において、99%はフェリチン100以下、80%はフェリチン30以下、40%はフェリチン10以下と多くの方が潜在性鉄欠乏症となっています。ちなみに私のフェリチン値は70でした。特にフェリチンが低下しやすいのは、下記3点。
⑴第二次性徴期、鉄需要が増大する。
⑵妊娠・出産。1回の妊娠・出産でフェリチン50相当の鉄が消費される。
⑶子宮筋腫、等による出血量増大。
PMSがひどい方や産後のイライラが治らない方の多くはフェリチン値が足りていないのではないでしょうか。そして私自身、鉄とプロテインを摂取することでこれらPMSの症状が無くなったのです。(2019.9追記 タンパク質が不足するとイライラが戻ってしまうことがわかりました。)
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鉄が不足すると。
⑴電子伝達系機能の低下
エネルギー生産に不可欠な電子伝達系の機能が低下し、十分なATPがつくられなくなります。動悸、息切れ、頭痛、めまい、怠感、易疲労感、集中力低下などはエネルギー不足の症状であり、少ないヘモグロビンで酸素を全身に搬送するために生じる症状なのです。ちなみに、ヘモグロビンは鉄とタンパク質の複合タンパク質で鉄不足=タンパク質不足といえます。
⑵神経伝達物質が上手くつくられない
鉄不足は神経伝達物質の合成に必要なモノアミン酸化酵素の低下、海馬、前頭葉などにおけるチトクローム酸化酵素の低下も引き起こし、小児では発達・発育障害や注意力の低下、情緒障害、異食症など、成人でも易疲労感、イライラ感、活力低下、運動能の低下、異食症、むずむず足症候群などの神経精神症状が起こるとのこと。(補足:モノアミン=ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、セロトニン、ヒスタミンなどの神経伝達物質の総称です)
⑶ケトン体を燃料利用できない
鉄は肝臓で中性脂肪からケトン体や遊離脂肪酸を生成し、脂質からエネルギーをつくっています。ところが鉄が欠乏するとクエン酸合成酵素やコハク酸脱水素酵素の活性が低下し、ケトン体や遊離脂肪酸の生成がうまくできなくなり、エネルギーとして利用できなくなるのです。
大きく3つ取り上げましたが、この他にも、抵抗力の減少や消化器系への影響などさまざあります。鉄を過剰に摂りすぎると鉄過剰症となり臓器障害が出るといわれていますが、鉄過剰症と診断されるのはフェリチン500以上とかなり高いとのこと。鉄の貯蔵量に応じて鉄の吸収を調整する機能があり、鉄が十分にあれば吸収しなくなるため、日常的に鉄サプリを摂取していても鉄過剰症になることはないと言われています。
ちょっとした小話ですが、海外では早くから鉄不足に注目しており、アメリカでは穀類、シリアルに鉄添加が義務づけられています。イギリスでも小麦粉10gに1.65mgの添加、スウェー デンでは小麦粉10gあたり6.5mgが添加、フィリピンでは米に、ベネズエラでは小麦粉に、べトナムではソー スにそれぞれ鉄が添加され、貧血の頻度が半減しているとのことですが、日本ではまだ何も対策はされていないそうです...
アメリカではキレート鉄が主流。
ここまで調べると、鉄の大切さが理解できます。そこで、鉄は鉄でもどんな鉄を飲めばいいの?ということなのですが、ヘム鉄でも非ヘム鉄でもなくキレート加工されたフェロケルとう鉄剤が推奨されています。植物性非ヘム鉄の吸収率は1ー5%、動物性ヘム鉄の吸収率は10-20%。鉄剤は嘔気や下痢などの消化器症状の副作用が出ることも多く、服用できない人もいます。実際私も病院で処方されたヘム鉄を飲むとすぐに胃痛、下痢を引き起こしました。フェロケルはアルビオン社特許の特殊キレート加工された鉄で、胃に優しく便秘になりにくい鉄です。 キレート加工するとミネラルの吸収率が数倍に跳ね上がると言われており、ヘム鉄で効果がなかったがフェロケルに替えて顕著な効果が出た人も多いそう。そしてヘム鉄よりキレート鉄の方が安価です。ネット上ではキレート鉄批判もありますが、実際にヘム鉄、キレート鉄どちらも試して、キレート鉄は胃痛やお腹を下すことなく飲めて、症状も改善されているため続けています。
<推奨摂取量>
NOW社の鉄剤→2錠(36mg*2)
Source Naturals社の鉄剤→3錠(27mg*3)
※摂取すると便が黒くなりますが問題ありません
※プロテイン、ビタミンCと一緒に摂ると吸収率UP
※寝る前に摂取すると吸収率UP
※ビタミンEは鉄の吸収を阻害するため8時間以上空ける
アメリカのサプリサイトiHerbで購入できるフェロケル。1000円前後であります。なぜかリンクが貼れないので商品名よりご検索ください。
※iHerb紹介コード入力でどなたでも初回10%OFF→ANG7430
●Now Foods, 鉄、ダブルストレングス、36mg、植物性カプセル90粒 ¥985
Now-Foods-Iron-Double-Strength-36-mg-90-Veg-Capsules
●Source Naturals, アドバンスト フェロケル、180 粒 ¥1,065
Source-Naturals-Advanced-Ferrochel-180-Tablets
(カプセルが苦手なので私はタブレットタイプのこちらを飲んでいます)
鉄と生命誕生。
さいごに、鉄と生命誕生について。なんと鉄の存在が、生命をもたらしたというのです。大昔、地球誕生の過程で重い鉄は沈み、中心核となりました。鉄は電気伝導性が高く、この中心核が回転して複雑な作用により磁場を発生させています。この地磁気があるおかげで、宇宙線や太陽風を防ぐことができ、生命の誕生に適した星となったのです。また、地球が誕生した当時、大気には酸素がなく、二酸化炭素や塩酸、窒素などが充満、大地には酸性雨が降り注ぎ、地表の鉄分が海に溶けていました。約27億年前になると「シアノバクテリア」が生まれ、光合成によって海中に酸素を出し始めます。そして、活動を活発化するためのエネルギーとして酸素を採り入れる生物が登場。その際に重要な役割を果たしたのが「鉄」なのです。多くの元素と親和力を持つ鉄は酸素と結び付いて、生物の体内を移動し、体内の至る所に酸素を運びエネルギーを生み出す役割を果たしました。生物内で、鉄はFe2+とFe3+の2種類のイオン状態にあり、これらは電子のやり取りによって簡単に変化できるため、さまざまな生化学反応に役立っています。鉄は、生物の活動範囲の拡大とともに採り込まれてきた、生物の体にとてもなじみやすい物質なのです。鉄があってこその生命。感謝です。
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▼連載マガジン第4話はこちら。
<参考サイト>
●精神科医こてつ名誉院長のブログ『(超基礎編)日本人女性の鉄不足』
https://ameblo.jp/kotetsutokumi/entry-12274187743.html
●藤川徳美Facebook『(超基礎編-8)鉄不足患者のほとんどは「貧血を伴わない鉄不足」』
https://www.facebook.com/tokumi.fujikawa/posts/1324650200984634
●藤川徳美Facebook『(超基礎編-15)宇宙、地球、生命と鉄』
https://www.facebook.com/tokumi.fujikawa/posts/1357513681031619
●精神科医こてつ名誉院長のブログ『鉄(Fe)について、基礎的な知識、治療の実際、臨床症状』
https://ameblo.jp/kotetsutokumi/entry-12238471134.html
●山崎一和『鉄の起源 宇宙の創造から生物の進化まで』
https://www.nipponsteel.com/company/nssmc/science/pdf/V15.pdf
<参考文献>
●小阪昌明(2012)『わが国における鉄欠乏,鉄欠乏性貧血女性の増加と栄養』
●井上正子(2012)『新しい栄養学と食の基本辞典』
●田中和明(2009)『図解入門よくわかる最新「鉄」の基本と仕組み: 性質、技術、歴史、文化の基礎知識』
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