小川花林

短歌してます。

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5/9日記

 働くのがしんどかった。  この場だけで信じられている社会、ほとんど私の先輩と私のみの、限定された価値観を絶対的な社会のように錯覚していた。どうにかしてこの場に縋り付きたいというおもいと、転がるように、飽きるように、手放す衝動が両極になってわたしを引っ張った結果、甘美な憂鬱が勝利し、私は早退した。  最近は時間の過ぎ方が異常に遅い。怒られたことも鬱が見せた被害妄想かと思ったが、多分しっかり怒られていた。というか苛立ちを隠さず当たられるのは辛かった。怠慢に見えるのは仕方がない、

    • 1/17日記

      喫茶店に来たので橋爪さんの「微差の生活」を読む。リュックの中でからまったケーブルをごにょごにょ探っていたら帯がやぶれてしまい、そのままだと読みにくかったので表紙裏にはさんだ。帯はできるだけそのままにしたいのに、いつもぼろぼろにしてしまう。昔は帯専用のカゴをもっていたのをおもいだす。どれがどの巻のかわからんくなるので良くない気がする。 p13 ライフ・イズ・オールナイトの背中にはフェンスの錆がざらついている p101 抱きあえば崖の端みたく狂おしいきみは古着のにおいをさせて

      • 12月21日 日記

        整理整頓がほんとうに苦手で、でもすぐになにか買ってしまうから、部屋がいろんなもので沈んできてしまった。空のペットボトルを今度袋にまとめておろしてきて、と母親に言われてそういえば分別のしかたも捨てる日もしらない、ってことに気がついた。わたしはこの土地の分別のルールを把握していない。ひとりぐらしをしてたときは何回もその月の分別のカレンダーをみていたし、そういうルールのない寮に住んでからもなんとなくおぼえていた。 どの土地にも思い入れがない。あるよって言いたくなることはたまにある

        • 23/12/20 日記

          やりたいことがある気がする。とおく。今日は資本主義の話や、音楽の話や、本の話や、仕事、いろんな構造の話をたくさんした。たのしかった。勉強をしたい、としきりに言った。知識がほしい。もっともっと話をしていたいから、もっともっと話をしてほしいから。この仕事をいつまでするのかむずかしい。だれのこともわからないものだなとおもう。つらい思いをできるだけせずに、らくをしていてほしいとおもう。みんな。ほんとうにみんな。 今日は朝起きたら、あずきちゃんがソファとカーペットいっぱいにたべかすを溢

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          いつでもイブの日

          赤く燃え広がれ燃え広がれ砂漠という永遠の密室に 濡れていたスーパーの中は沼だからそうか、と思った銃口を向けて アクセルが意識を正常に克明に思い出す抱いた体を 向かい合う体はいつも反転し分からなさの多さに逃げ込む 冗談はよしてブラッディ・イブ・ほんとう は息で口をするものなんだ 皮膚からも吸収されるアルコール吐きまくるディスプレイ目を開けろ 水滴が落ちる音で眠れない 夜に限って心が恋しい 気負わないふりをし続けようベイべ悲しまないで派手なスニーカー

          いつでもイブの日

          外へ

          みなしごの桑をはむ音が重なってはじめて繭は地球を覆う 死ぬことの痛みを知らないひとを死なす時間が恋しい角部屋 言の葉の端くれに切れる指先と、窓辺にひかる資源ゴミだろう どこまでなら大事にできただろうか、踏み抜けなかった雪道の轍 コンビニに行った帰りに襲われて消えてたはずで家はここです タクシーを待つ間だけ待っている待っていたんだ救いの道を 夕立に似た表情の車内からその先の街を心中させる 心臓が窮屈だから心とか痛みなんか存在すること 親愛を燃やした土地に芽吹くろ

          料理中

          辿り着くことのない橋を何と呼ぼう うみほたる、それかデラシネ 講義室の生徒みんな行儀良く行儀が良くて顔が見えない 雨曝しすこし外して口ずさむ声かき消してやがてセピアに 待つはずのひとからメールが来てそこから風雪の野へと入る 毎日はおれんひととの表題は、「生活」で合っているんだろうか じゃがいもの皮を剥かずに料理する手先をみている光の先を 情欲をそのままにした瞳であってどうしても光ってしまう 豪雪の窓辺にいても死ななくて栞を挟む場面で閉じる おおま

          機嫌なおそう

          夕立のように黄砂と憂鬱が降る町で影を踏んでは消して いつかみたおさかなやさん過ぎて電車は須くなぎ倒しゆく 殺された時のぬめりがナマコになった海だけはそういうところ 魂は空 煙草が核をつくり霧にみたされる 知った気になる 嘲笑の潮汐に似たケロイドをゆるすというのかゆるすというのか サイゼ行こうよ酒を飲んでさ嘔吐しようね捻挫するまでずっと 吹き出しのついた拙い絵本ごと煮沸消毒じんせいあかるく 立ち上げた夏の空気に驚いてみんな死んだよ大丈夫だよ

          機嫌なおそう

          ラミネート

          強くなって土にまみれた足で有限の道いつまでも歩こう 蛍光の贖罪が派手に浮いている みてよ、こっちが現代版なの 愛されてみたいと君が言い出したからだよ太陽落ちてくるのは なんだって綺麗に加工されているその消化器をつくるものすら だからさあ守れないなら持つなよって!煙草が雨に湿気っていく ハリボテの街でデートを繰り返しちゃんと子供を産んだ両親 細胞膜を上手く隔てて同日に刺す方と刺される方と 来世ではおんなじひとに生まれよう人熱れに戸惑わぬひとに 叫んでもドラマティ

          ラミネート

          寝・死刑・坊

          おはようとこんばんはの境目はない、空腹だけが鋭利にある 「――あげようか」答えるまでに息を、吸う、それまでの時間が吹き溜まる 名水を詰めて動かして私の咥内、驚くほど冷たい 口も食道も腸も俺のものじゃなく、地球の、というあきらめ 取れるだろう球逃してしまったふりをするわたしの膜は怠慢である どこまでが悲しみだろう、暴力におけるどこからが倒錯だろう 目が覚めてからワンピースを翻すまでの気怠さ愛せないのね レモンティごときで覚める脳ならばすべてを愛して笑っていたろう

          寝・死刑・坊

          火と血

          背の低い藤棚を掻き分けて行く人殺しの汗纏わりつく 躊躇い傷の副作用なのか真剣なとき月がふたつ見える 思い出に塗り潰されて散々で散々で咳込んでばかりで 長く生き火で遊べるようになった燃やされる前の演習 入園料を払いわすれて入る病棟 僕の影は白いメスに揺れて コンコースの人それぞれ割れ損ねた水風船たまたまだろう 燃やし尽くさないことを弔いと呼ぶ畦道に髪の燃えるにおい 自罰としてのマクドナルド夢見てるみたい夢見てたいおねがい 可食部の少なさ故に褒められて浮き出たあば

          Neurotoxic Addiction

          君にだけ見える花束を贈ればきっと燃やしてくれるから愛 甘味から順に消えて塩味へ 薄まってゆく、この霧の中では 水泳の息止める瞬間花水木ふやけるまでも永遠 蓮の泥濘にぬらりと帰って行く沼の子らのゆきてかへらぬ自尊心 息を吸いこんだ瞬間わかる毒毒の海で踊って見せるわ 曖昧な午後に曖昧なダンス憂鬱にかしずく人からこちらへ だんだん黄色にみえるね視覚情報遮断の禁断の果実 このなかにお医者さんはいません、良かった晴れた日にバイバイ 神経に効くお薬・神経から殺す毒、世界最

          Neurotoxic Addiction

          目を見て言った

          ぬめついた手を洗い流すいつから生活に慣れてしまったのか 愛憎を誤魔化すような母子手帳右に傾く角が丸い文字 帆を立てて夢うつつなる貝柱海水に溶ける金属の味 間違った思想そう思うかみさま解答ばかり欲しくない もっともっと激しくして!心臓燃やすくらいの花火を上げて! 分解の進んだ美しい四肢をなげだして奇妙な草原だ 化学反応が終わるまで交わろうそういう雨をふらせよう 重くるしい空気をにぎりしめてぼくらの空気はいつも発砲 人間賛歌・人間還元・わらけてきちゃうだろ

          目を見て言った

          冬に待つ

          氷嵐たる顔で君は弾く語り継ぐべき君の楽譜を 君はプリズムに人は死ぬという雪原だとおもう孤独の祈り 間違えて線路に出てしまったらそのまま真っ直ぐ雪の日々へと 鶺鴒は軽やかに踏む晩冬に僕の叶わず割れる薄氷 結晶を手渡すような接吻を白樺の幹へ捧げましょう 白樺に縋るなら女がではなくあの子が欲しいと言わなくちゃ ひとり立つ、氷雨に打たれるようにおのずと俯く、大切なんだ 白き空気に視線が向く自らの輪郭を確かめる儀式 白の古書雪道に投げ捨てて白いものはみな白に還れよ 指

          冬に待つ

          悪寒

          ブレーキをかけずに足をぶらつかす正しい自転車の乗り方 笑顔はかつて威嚇だったらしい心が強張る瞬間がある 足が枝のような犬足が枝のような人みんな服を着てる この駅を何度通り過ぎたっけ乗客の顔は何度見たっけ 円形の真空管が作るわたしという使徒 わたしというモノ この部屋に揺られているのは自覚コーヒーを入れるときの手は自動 薄暗がりに目を凝らしている此岸と彼岸のどちらにいるのか 違和感が支配している大きな講義室に椅子が並んでいる 大半の知ってる部屋は壁が白くて

          漁火ペンギン

          次々に灯り始めるそして猛火へ魅かれる命はひとつのこらず 海の中喘ぎつつ進む、親火に君が微笑むのをみた 漁火をかざして魂を呼ぶ企鵝になって還ってくるはず 杞憂を気泡に返してどれだけ経つのだろう真珠なるなんて 太陽を望む人魚であるならばどんな願いも叶うしかない 水中でかなしみを抱くのはむずかしいかなしみは液体だから 不知火に紛れて燃えている 空にだけ ほらあれが月だよ 大切にしたとて沈む街があるのだから皮膚と水と間を 企鵝が騒めいている大群を連れてくる忌火のうね

          漁火ペンギン