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大学院、ビジネススクールには行くべきか?

縁あって大学院のビジネススクールに通いました。
お世話になった方々には感謝していますし、私にとって一定の意味はありましたが疑問に残ることもありました。

ビジネススクールに通うメリット/デメリット、行く意味のある人/ない人についてお伝えしたいと思います。迷っている方の参考になれば幸いです。

~メリット~
・会社以外の人脈ができる
(教授や学会など研究者、異業種、多様な年齢の学生や卒業生)
・実践してきたことの整理ができる(理論と実践のつながり)
・学位が取れる(MBA:経営管理修士)

~デメリット~
・お金がかかる(学費等の支出、休職などに伴う収入減少など資金面)
・時間がかかる(授業、課題、調査、論文等に要する時間大)
・体力的に大変(家庭や仕事との両立面からも負担大)

学部で学んだ研究を深めるために大学院へ進学するのと違って、一度社会に出てからビジネススクールという形で大学院に進む際には、上記のメリット、デメリットをよく考えたほうが良いと思います。

もし、借金をしてMBAを取りに進学しようとしている人が身近でいたら、私は止めます。(米国で多額の借金をして学位を取っても、経済的な成功に至らず返済に苦しむ人がある、という事例は日本でも参考になります)

MBAという学位がとりあえず欲しいという場合、その学位は何のために必要かを良く考えた方が良いです。

~起業したいなら~

起業するのにMBAはあまり関係はないです。

確かに起業家にはビジネススクールに行った人もいますが、著名な起業家がみなそうかというとそうでもないです。むしろ、行っていない、行っていたが中途退学した、そんな人も多いのです。

起業するつもりがあるのなら、ビジネススクールに資金と時間をつぎ込むよりも、ベンチャー企業(いわゆるスタートアップ企業)を仲間と起こすなり、ベンチャー企業に入社してビジネス経験を積んでから、自分で起業するなり、そうしたことに時間と資金を使った方が有益でしょう。

~大手企業の幹部になりたいなら~

大手企業の幹部になるためにMBAを取るのも、以前だったら有効でしたが、徐々にその威力、意義は落ちてきていると思います。

MBAは特定の環境下でオペレイティブなこと(安定した運営面)をしっかり回すための知識としては意味があると思いますが、ゼロからイチを起こす、しかもイノベーティブなこと(革新的な創業・起業面)を起こすのには必ずしも有益とは思いません

大手企業をベンチャー企業が凌駕する下克上の時代にもなってきており、MBA取得後にその知識を活用する場所はあなたが今想定している場所ではない可能性が高いです。例えば、大手ではなくベンチャー企業とか。

ただ、その場合も、下克上を起こすベンチャー企業が成長する過程で、ある一定の段階に達してオペレイティブな状況ができてから、あなたのMBA知識を活かす場面があるかもしれない、という感じです。そこでMBAホルダー(保有者)のあなたが得られるものは、あなたがベンチャー企業に入る前から活躍していた人よりも少ないでしょう。

~ビジネススクールの一番大きな問題~

根本的な問題として、大学(院)の研究が後手に回っていることがあります。

教授陣は思考と調査に相当の時間を費やして、学術論文を完成させる世界の方々です。論文は公の批評に耐えるだけの根拠を求められます。アカデミックであろうとするうえではやむを得ないことでしょう。

しかし、そうして出された論文が発表されたときにはそれはもう過去を前提とした古いものになっています。今起きている変化は学界のスピードより速いのです。

学界は今のビジネススピードについていけていません

もちろん、学界によるもので古典的なものなど今でも有用なものはありますが、それらはビジネススクールに行かなくても図書館やネットで情報は得られます。ビジネス事例など海外の事例もネットで見ることができます。

大学、論文ではFACT(事実)が求められます。
俗に言うイノベーション、革新的なことは誰もやっていないからこそ革新的です。説明可能、予測可能なものではありませんから、そこにFACTはありません。逆に説明、予測が容易ならば、それは革新性がないものと言えます。

FACTや実現可能性ばかり指摘されるアカデミックな世界に閉じこもるより、実際に自分で試し、失敗しながら学んでどんどん進んで結果を出すことに集中したほうが遥かに得るものは大きいと思います。

SNSで人が繋がり、世界的に情報を得ることも容易な昨今、多くの人(特に30代くらいまでの世代の人)にとっては、大きな負担をしてまでビジネススクールに通う意義は薄れてきていると思います。

~それでもビジネススクールに行く意味のある人~

そのうえで、ビジネススクールに行く意味がある人は、①お金と時間、体力があり、ビジネススクールへ行った/学位を取ったということそのものに満足を得たい人、②そこに行かなければ人脈、知識などへの足掛かりを持てないと不安を抱える人、だと思います。

後者の②の人は、やりたいことや自分の想いを整理(自分の整理)できれば、ビジネススクールに行かずとも人脈、知識、情報は近づいてきます。

自分のやりたいことを実現するために「どうしてもこの人でなければ!」という人が大学院にいるのであれば別ですが、そうでなければ大学院に行かなければならない理由は必ずしもないでしょう。

あなたが自らそれらを取りに動くことができるようになるからです。もしそれができない状態にあるとすれば、まだ自分の整理が不十分だということになります。このままビジネススクールに行っても得るものは限定的です。

ビジネススクールでは論文のための整理はできても、やりたいことや自分の想いを整理(自分の整理)することは手伝ってくれません

自分がやりたいことをどうやるか(How)は教えてくれますが、なぜやるか(Why)は自分で考えるものだからです。

自分は何がやりたいのか?それはなぜか?といった目的の整理、自分の整理がないまま、大学院に行っても迷走するだけです。学位は取得できるでしょうが、それ以上の効果はあまり期待できません。卒業後にまた同じ悩みを繰り返すことになる可能性は高いと思います。

なんとなく大学院やビジネススクールに迷っている人に本当に必要なのは「目的の整理」「自分の整理」でしょう。これには「自分との対話」「他者との対話」が必要です。これは大学院ではやってくれません。

大学院に限らず、今、教育機関に必要なのは「教える教育」ではなく、潜在している答えや力を引き出し、互いに育つ「引き出す共育」でしょう。

しかし、多くの大学院、教育機関はこの「教育」から「共育」への転換が遅れています。

目的の整理、自分の整理は自分と向き合うこと、適切な対話相手を見つけて深い対話をすることが突破口になります。そうして見つけた自分の軸「自分軸」を見出せると、自分の為すべきことが整理され、今後の人生での迷いもずっと少なくなります

そうした対話相手を見つけてください。

見つけられない場合はご連絡ください。

~ まとめ ~
・借金してまでビジネススクールに行く必要はない
・起業にMBAは要らない
・大手企業の幹部のためのMBAもかつてほど威力はない
・学界はビジネススピードについていけていない
・行く意味のある人はお金と時間の余裕があり、学位そのものの満足が欲しい人くらい
・迷っている人に本当に必要なのは「目的の整理」「自分の整理」、そのためには「自己との対話」「他者との対話」が必要
・大学院、ビジネススクールでは整理のための対話は困難


以下もご参照ください。

2020/09/02 追記


歩く好奇心。ビジネス、起業、キャリアのコンサルタントが綴る雑感と臍曲がり視点の異論。