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臀物語

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タイトルをしりとりで繋げる物語、です。 「しりものがたり」と読みます。 第1,第3,第5日曜日に更新予定です。 詳しくはプロフィールに固定してある「臀ペディア」をお読みください。
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#喫茶店

ミルクセーキ

 集中する方法というのは人それぞれである。
 深呼吸をする、音楽を聴く、目標を設定して励む、集中力を阻害するものを回りから取り除く、環境を変えるなどなど。
 例えば学生であれば、勉学に励むことが本分なわけだが、自室ではどうしても集中できないからと、自習室や図書館、カフェなどに行って勉強をしたりする。
 残念ながら大人になったからと言って、そんなに人間は変わるわけではない。どうしたって集中できない時

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ら抜き言葉

 ひとしきり昼食を食べ終えて満足した二人は、コーヒーをすすりながら話に花を咲かせた。
「パスタも美味しかったですね。」
「ええ。ランチタイムがまだやっててよかったですよ。」
「ここ、うちからもそれほど遠くないですし、ここも打ち合わせ場所の候補に入れてみましょうか。」
「そうですね、気分を変えたいときなんかはありかもしれませんね。」
 雨相はゆっくりとコーヒーカップを口元に運び、しっかりと味わった。

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カルボナーラ

「いやあ、これいいですよ。」
高森は机の上にある紙の束を見て、思わず笑顔でそう言った。
「はい、結構なものができそうです。」
雨相としても満更ではなかった。
「何ですかね、今日はバンバンいい感じで進みましたよね。」
「確かにそうですね。」
高森の言う通り、今日の打ち合わせはいつになく上手く進んだ。
「やっぱりたまにはこうして違うところに来てみるのもいいんですかね。」
「うん、確かにそうですね。」

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プライベート

打ち合わせと言えばあの喫茶店。それが二人の中での暗黙の了解、というか、もちろん実際に打ち合わせをするとなれば事前に約束はするわけだが、あの喫茶店で行うのが当たり前のことになっていた。
しかし今日は違う。珍しく出版社内での打ち合わせであった。
いくら人気作家の一人といえど、慣れない場所となればやはり緊張するもので、朱里のアドバイスで珍しく正装をした雨相は高層ビルを前に一度深く深呼吸をし、そしてゆっく

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寄付

夕方前の喫茶店。少し慌ただしかったランチタイムも終わり、店の中には落ち着きと静寂が戻ってきた。
いわゆる洒落た喫茶店と言えど、やはりランチタイムは書き入れ時。オシャレだからこそ、SNSで発信され、それを見てくる客も少なくない。
ここは最低限の料理しか振舞っていなかったが、それでも、それこそがオシャレだと、たくさんの人で連日賑わうのだった。
そんな喫茶店の一席に座る男が二人。この店の常連とても呼ぼう

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裏切り

我々の使う言葉の中には、良くも悪くも取れるものがしばしばある。よくあるのが、カタカナ表記による印象操作だ。
例えば、レトロという言葉。この言葉を聞いてどう思うだろうか?古き良き、セピア色の思い出が浮かぶかもしれないが、古いということに過ぎない。ネット用語っぽく言うのであれば、懐古厨である。
リーズナブルという言葉だってそうである。本来は、提供されるサービスに対して適正な価格、という意味だそうだが、

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