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栄養学・栄養疫学・疫学の一端

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ざっくばらん
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#疫学

P値に関する考察・・・アメリカ統計学会の声明を基に

P値に関する考察・・・アメリカ統計学会の声明を基に


ピザ3枚あなたのお友達はこう言いました。
「この間、何回かピザを頼んだんだけど
だいたい20分くらいで来るみたい」

(そんなすぐに来るものなの?)
あなたはそう思いました。

そこで参考までに自宅で試してみることにしました。
3回オーダーしたところ、掛かった時間は
22分、33分、29分
でした。

つまり
平均=28.0 分
標準偏差(ばらつきの指標)=5.6 分
でした。

(たった3回だ

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甘味料摂取とがんリスクとの関係に関する論文への懸念

甘味料摂取とがんリスクとの関係に関する論文への懸念

先日、WHOから一種の甘味料の摂取が悪性腫瘍発生(がんのリスク)と関係するかもしれないという主旨の発表がありました(註1)。その発表内容を支えるヒト研究のエビデンスは私の知る限り低質です。ヒト研究のうち、核となるものは次の論文ですが、これについて私は批判的な考察を抱いています。その内容をこのNoteでは紹介します。

Debras, C et al., Artificial sweeteners

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論文執筆について思うこと ⑤・・・「科学論文の書き方の科学」 by Gopen et al.

論文執筆について思うこと ⑤・・・「科学論文の書き方の科学」 by Gopen et al.

ここで紹介する内容は10年以上前にボストンにいた際に、ボストンの研究者向けに寄稿した文章を改編したものです。寄稿したものはメルマガのような形で5つほどあったように記憶していますが・・その1つが次の論文の紹介です。

George D. Gopen and Judith A. Swan, Science of Scientific Writing, American Scientisit, 1990

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有名論文に基づいた一般向け情報の様子 ・・ 断食・ファスティングを題材とした一例

有名論文に基づいた一般向け情報の様子 ・・ 断食・ファスティングを題材とした一例

筆が進まないですが公開・・

New England Journal of Medicine(NEJM)という医学誌に報告された間欠的断食/絶食(Intermittent Fasting)について致命的と私が考えている問題点について以前、述べました(リンク)。多くの方が読んでくださったようで感謝しています。それとともにそうした情報に対する関心の高さに懸念を抱くばかりです。

その懸念とは、世の中に

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疫学の基本から注意してみる・・ビタミンDの急性呼吸器感染症に対する効果①

疫学の基本から注意してみる・・ビタミンDの急性呼吸器感染症に対する効果①

COVID19の蔓延に対してビタミンDのサプリメントによる予防効果(あるいは治療効果)を期待してもいいのではないか・・という話があります。医学論文にも掲載されているように今のところ、その効果を期待させる強いエビデンスはありません。

このNoteはそれに関連しそうな疫学研究の補足の内容になります。簡単に述べると呼吸器感染症に対するビタミンDの予防効果はそもそもそんなに強くないよということです。

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なぜNEJMを含む医学誌の”断食”、”絶食”、”ファスティング”に関する総説がダメなのかという話(intermittent fasting, 間欠的ファスティング)

なぜNEJMを含む医学誌の”断食”、”絶食”、”ファスティング”に関する総説がダメなのかという話(intermittent fasting, 間欠的ファスティング)

改訂1)ちょっと目次が上に来るように構成変えました。あと"てにをは"なども改善。(10:11 pm in UK, on 15 Apr 2021)

続きともいえる内容を更新しました(5月4日)。ここで紹介する論文を引用した際の情報発信の一例についてです。

先日、下に表示してあるようにTwitterで発言しました。New England Journal of Medicine(NEJM)は医学界で

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【臨床疫学】アダプティブ試験の実例・・ビタミンDのサプリメントによる転倒に対する予防効果は示されず

【臨床疫学】アダプティブ試験の実例・・ビタミンDのサプリメントによる転倒に対する予防効果は示されず

太陽のビタミンと呼ばれるビタミンD。COVID19、コロナウイルスに対しても話題がつきません。ビタミンDについて様々な効果が仮説として検証されているのですが、特に骨格筋に対する効果は期待が大きいです。カルシウムの吸収を助ける働きがあり、欠乏すると「くる病」や骨粗しょう症といった病気の原因となることに由来しています。それに関連して、このNoteは次の研究に基づいた内容で記しました。

Appel e

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論文執筆について思うこと ④・・ガイドさんに従ってみては?③・・バイアスの評価基準から考える

論文執筆について思うこと ④・・ガイドさんに従ってみては?③・・バイアスの評価基準から考える

論文の執筆の際には「ガイドラインに従ってみては?」という主旨で、研究デザインに応じていろいろと発表のガイドラインがありますよということを概要として、そして栄養疫学に特化した内容として以前、紹介しました。

論文執筆について思うこと ②・・ガイドさんに従ってみては?①

論文執筆について思うこと ③・・ガイドさんに従ってみては?②・・栄養疫学研究向け

さて、論文を執筆する際のガイドがあると同時に、

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論文執筆について思うこと ③・・ガイドさんに従ってみては?②・・栄養疫学研究向け

論文執筆について思うこと ③・・ガイドさんに従ってみては?②・・栄養疫学研究向け

以前、「ガイドさんに従ってみては?①」という主旨のNoteで種々の論文執筆に関するガイドラインを紹介しました。今回はそのひとつであるSTROBEを拡張した、栄養疫学研究の著者に向けられたSTROBE-Nutというものをここに紹介したいと思います。

STROBE-NutSTROBEとはStrengthening the Reporting of Observational Studies in E

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科学や健康に関する情報を伝える際の推奨される10項目

科学や健康に関する情報を伝える際の推奨される10項目

ここ何年もの間、公衆衛生関連の情報を含め、科学研究の内容がメディアで公開されることが増えてきたように思います。英国ではそうした報道の内容に関してScience Media Centreという機関から指針が発表されています。原著はこちらのPDFです。

簡単ではあるものの、それを翻訳したものをここに記載します(許可は別途、得てあります)。実は過去に公衆衛生関係、疫学関係の複数のメーリングリストに流し

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脂質の摂取に関して誤解を導く話・・・比が出てきたら警戒しましょう

脂質の摂取に関して誤解を導く話・・・比が出てきたら警戒しましょう

ここでは不飽和脂肪酸の話をしていますが、要は比に関する話で、体重/身長の二乗(いわゆるBody mass index・BMI)といった話にも通じます。

誤解を生んでしまう研究の例仮の研究発表会で次のような抄録があったとします。妥当な研究・解釈といえるでしょうか? 

タイトル:低ω6・高ω3不飽和脂肪酸の摂取バランスが自己免疫疾患の予後をよくする傾向

序文:ω6およびω3不飽和脂肪酸は体内にお

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論文執筆について思うこと ②・・ガイドさんに従ってみては?①

論文執筆について思うこと ②・・ガイドさんに従ってみては?①

先日、「関連性・因果推論の表現は正確に」というNoteを残しました。よく考える問題点・懸念材料について書き記しておこうという意図です。お役に立つようであれば嬉しいです。

さて、このNoteに記しているのも同様の意図です。ヒトを対象にする医学研究に限る内容かもしれませんが、「こういうのもある」と理解してもらって、うまく使えるようならぜひどうぞ・・と思っている内容です。

私が関わる学生やポスドク、

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論文執筆について思うこと ① ... 関連性・因果推論の表現は正確に

論文執筆について思うこと ① ... 関連性・因果推論の表現は正確に

写真はマンチェスター大学の図書館。公開後、てにをは、ですます調、ちょっと説明を足したり微調整しています。タイトル変更。内容には変更なし。

このNoteは、回り道しつつ「論文を書くとき、気をつけるといいのではないか」と高い頻度で思ってきたことを書いています。特に科学論文を書いたりする方に読んで頂いて、生かしてもらえると嬉しいです。多くは私のこれまでの論文を査読した経験に基づいています(査読について

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選択バイアス・・栄養疫学において考えられる例

選択バイアス・・栄養疫学において考えられる例

先日、選択バイアスに関するNoteを残しました。たまたま先日、読む機会のあった次の論文にそのバイアスが疑われるので追記+備忘録という意で記しておきます。

Buijsse et al., Plasma 25-hydroxyvitamin D and its genetic determinantsin relation to incident type 2 diabetes: a prospect

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