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お気に入りの記事まとめ

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好きだな、とか、また読みたいな、と思った記事たちをブックマーク代わりにまとめています。どの記事もとっても素敵なので、良かったら見てください。
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2021年7月の記事一覧

母の背中

看護師になってから、20年近く経とうとしている。 正確にいうならば、18年くらいだ。最初は指折り数えていた何年め、も、この歳になるとどうでもよくなる。 新人として十把一絡げに病棟に送り込まれて以来、異動や転職はあるものの、一応途切れることはなくコツコツと働いている。 10年くらい前に結婚して、子どもが産まれた。 そのときも自然と産休と育休をとってフルタイムで復帰する道を選んだ。運良く、とても素敵な先生たちのいる保育園に入ることができたので、そこからの仕事は先生たちとの

「思い描いた未来」はやってこないからこそ。

大好きな友だちと、オンラインで3時間以上おしゃべりした。夜はまた違うオンライン(こちらはちょっと頑張るもの)があるから、それに備えてお風呂に入った。 お風呂から上がると、夕方6時半前。 夕日に染まった空がほんとうにきれいだったから、部屋のエアコンを切ってカーテンを空けてみた。 風がびゅんと通って、夕方の光、空の色、蝉の声、大好きな、夏の夕方の空気ぜんぶが部屋じゅうを満たす。 あ~しあわせだな。 一瞬で、心からそんな気持ちが湧いてくる。 お風呂に入っているときから、

そして誰も見えなくなった

確かにそこに存在しているはずなのに、自分以外、誰にも見えていないということがある。 最近、そんなホラーのような場面を二度、目撃した。 一つ目は、家の近所にある池でだ。 その小さな池では、鯉(コイ)にエサをあげてもいいことになっていて、 とても蒸し暑い夏のある日、5歳くらいの女の子とお母さんがエサをやりにきた。 ホラーはすぐにそこで起きた。 子どもが言った。 「あ!金魚さんがいる!!」 すぐにお母さんが言った。 「あれはね、金魚じゃなくてコイって言うのよ」

コント「アンジャッシュ」

30年間生きてきて僕が最もすれ違ってしまっていた日の話をしよう。 すれ違いは恐ろしい。恋人を引き裂くこともあれば、つなぎとめることもできるからだ。 ____ まだ二十歳そこそこの頃、韓国人と付き合っていた。 韓国人といっても、日本で育ったので日本語はペラペラで、意志疎通は一切滞ることなくできた。 あるとき、僕が何度もLINEを返していなかったことがきっかけで、喧嘩をしてしまい、「もう私、韓国帰るから」と母国へ帰ってしまったことがあった。 それから数日して、韓国人の彼

「高校入ったら告っていい?」今言えよ

大人なら絶対にありえないような不可思議でヘンテコな、それでいて大真面目なことが、子どもになら容易に起こりうる。 子どもの醍醐味は、人生経験の乏しさから生じる、目の前のことに対する一所懸命さにあると思う。 _____ 大学生の頃、小学生向けの模試の試験監督をやっていた。 教室で小学生に試験用紙を配って、「それでは始めてください」「時間です。ペンを置いてください」と書き終えた試験用紙を集める仕事だ。 12月のある日、小学4年生の模試の試験監督をした。 外には大雪が降っ

30年分のコンプレックスの値段

今まで生きてきて一度も話したことがない、誰にも知られたくなかった話をしようと思う。 30年間、抱え続けてきたコンプレックスの話です。 なんだ、そんな些細なことを恥ずかしく思っていたのか、と思われるのが恥ずかしくて一度も言えなかった。 とても個人的な話で、かつ誰かの役に立つとも思えなかったので、UPするかギリギリまで迷っていたのですが、コンプレックスを抱えている誰かに、もしかしたら何か届くものがあるのかもしれないと思い、書くことにしました。 ____ 僕の左腕には大きな

ドラえもんに権利を与えるべきか?~JILISシンポジウム登壇によせて~

こんにちは。NFI理事の加藤です。 NFI理事としてははじめてのnoteの投稿です。 私は普段、情報法制、個人情報やプライバシー保護、知的財産法等について研究をしています。 最近では、EUによって公開されたAI規則案に注目しています。 先日、情報法制研究所(JILIS)のシンポジウム「テーマ①:AIが作る著作物」にパネリストとして登壇させていただきました。この分野の最先端の研究をされている先生方と同席をさせていただき、大変勉強になりました。 当日の様子(資料・動画)は、以下

私は結婚できない

「今度、夫と子どもを連れて家族で集まろうよ」 来月で私は35歳になる。周りは結婚をしていて、子どもがいる友人ばかりである。それに比べ、私は子どもはおろか配偶者すらいないのが現状だ。世間一般が求める幸せの尺度に当てはまらない私は、今日も友人たちの会話に馴染めないままでいる。 恋をした経験もあるし、結婚を申し込まれた経験もある。でも、家族を持つことにそれほど魅力を感じられなくて、結婚の申し出を断った。「結婚できないなら別れる」と言われ、当時お付き合いをしていた恋人とは、3年前

失われた「かわいい」を求めて、 原田治展

わたしは一時期、「かわいい」についてめちゃくちゃ考えていた。 「かわいい」会社でファッション商品の企画デザインに携わる会社員として、常に「かわいい」を考え、「かわいい」を使い、「かわいい」を作ってもらい、「かわいい」を売ってきた。それは誰からもわかる「かわいい」なのか。どうすれば「かわいい」が伝わるか。 かわいいについてはイヤというほど考えてきたつもりだったけど、まだまだちっとも足りていなかったんだと、この展示を見て思い知らされた。 「かわいい」の発見 原田治展である。

オンライン上で手紙参りをはじめたわけ

手紙参りとは手紙寺には【手紙参り】という取り組みがあります。 実際には届けることが叶わない相手へ手紙を書いて、手紙寺に送っていただきます。届いた手紙は手紙寺でお焚き上げをして、書かれた人の想いを送り届けています。 手紙寺の活動と手紙参りが始まったのは2016年、発起人の井上さんの想いがきっかけでした。 船橋にある手紙処のTポストに届く手紙参りの手紙は年々増え、今では毎月100通ほどの手紙が届いています。 届く手紙の数が増える中、私たちへこんな言葉も届くようになってきま

無敵の用務員

ある人と同じモノを使っているのに、それが全く違うモノに見えた事はあるだろうか。 昔の通販なんかは、わりとよくあった。 中でも一番ひどかったのはトランペット。 映像ではすごくカッコよく演奏しているのに、3日でキミもこうなれるってガイジンのおっさんは言ってたのに、家に届いて箱を開け20年が経過した今でも、マウスピースすらまともに鳴らない。 親父にあげたら、2日で鳴った。 完璧にその人のコピーなんか出来ない事はわかっていても、真似をしたくなるのは、きっとそこに憧れがあるからだ

心の水面を眺める日々。

会う度に最近あった事件を話してくれる人がいる。 「どんな生き方をしていればそんなことが起こるんだろうか」 と思うのと同時に、 「なんでそんなに色々なことが起こるんだろう」と思うばかり。 僕には話して盛り上がる様なエピソードトークを持ち合わせていない。 なんでかなー。と考えると、すぐに答えが出てきた。 単純に、交友関係の数とか頻度なんだろうなと気づく。 可笑しなこと、不快なこと、唖然とすること... 全て人間関係の中で生まれるのだろう。 人生の悩みは全て人間関係だ。

いつかあなたに会えたら

「プロのエキストラさんなんですか!他はどんな作品のエキストラやったことあるんですか?」 通っている高校で映画の撮影があり、エキストラとして撮影に参加した日のこと。一言もセリフはなくとも、かつて女優になることを夢見た私にとってこの機会は夢のようだった。 そして、撮影の合間の時間。 たまたま近くにいた方とお話していたときのこと。40代くらいの女性であるその方はエキストラ事務所に所属し、これまでも数々の作品に出演してきたというので、冒頭のような質問をする運びとなった。 すると

23年越しの探し物を見つけた話

ものすごく個人的な、取るに足らない話なんですけど、すごく嬉しかったので、それから、また記憶があやふやになってわからなくなることがないように、書いておくことにしました。 高校生の頃(もう20年以上前)、学校の行事で日帰り修学旅行?みたいなかんじで横浜へ行きました。昔の話なので正確には覚えていませんが、ざっくり言うと、5・6人くらいのグループで横浜を周遊、どこへ行くかはグループで話し合って決めて良いというかなり自由な行事でした。誰が言い出したかまったく覚えていませんが、私がいた