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The Beatles 全曲解説 Vol.90 〜You Won’t See Me

『Rubber Soul』3曲目。
ポールの作品で、リードボーカルもポールが務めます。


よく聴くほどに緊張感と不気味さを増す “You Won’t See Me”

これまでジョンに比べると、失恋や恋人どうしの喧嘩などを扱った曲は少ないポールでしたが、このアルバムではそういった恋愛の負の面を積極的に取り上げるようになります。

というのもこの時期、ポールは恋人のジェーン・アッシャーとの関係があまりうまくいっておらず、電話をかけても無視されることがしばしばあったのだとか。
そもそも付き合い始めた当初からすれ違いを繰り返すようなカップルだったようで、この時期の仲の冷え具合はポールも危機感を持つほどだったようです。

そんな時期のポールの心情を描いた作品ですが、よく指摘されるのは、当時のビートルズとしては最も長尺の曲だということ。
長尺といっても3分20秒とちょっとぐらいなんですが、ビートルズの表現が2分半の世界では収まらなくなりつつあることも、じわりと示していると思います
実際、複雑なリズム構成にチャレンジした “Ticket To Ride” も3分を越えていますしね。

驚くほどに単純なギターフレーズに反して、コーラスとリズムセクションは複雑怪奇、単なるラブソングの域を超えた、ただならぬ雰囲気が漂います
曲の緊張感が更に増すのは最終盤、よく聴くと、オルガンが一音だけ途切れることなく鳴り続いているのにお気づきでしょうか。
ちょっと不気味ですらありますよね。

こういった、一聴すると目的すら掴めないような味付けが、中期以降のビートルズサウンドでは頻繁に登場します
その傾向の土台を作ったような曲と言えるでしょう。

ちなみに、このオルガンの音を出しているのは、マル・エヴァンズという男。

ビートルズのロードマネージャー(楽器や機材の管理を行う裏方さん)を務めたことで有名です
恵まれた体格と温厚な性格から、メンバーから非常に頼られ、友人としても好かれていたそうです。

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