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緊張と感激の、モヤモヤ問いづくり

皆さん、こんにちは。
昨年の11月からインターン6期生として活動している大学院生の、ぽんです。

今回の記事では、
1月27日(土)にゲーテ・インスティトゥート東京で開催された高校生ワークショップ
2月3日(土)にオンラインで開催されただれでもワークショップ
の2つのイベントについて、振り返ります。


自己紹介


名前:ぽん
現在学んでいること:大学院で、トランスジェンダーの老いについて研究しています。
趣味:芸術鑑賞(最近は楽焼に興味があります)、韓国ドラマ(最近は「無人島のディーバ」を見ました)
 
どうぞよろしくお願いします。

イベントについて


さて、2つのイベントは
『子どもたちの「抵抗」―テレジンの秘密の雑誌をめぐる対話』
というタイトルで、国連制定ホロコースト国際デーに合わせて行われました。
私は、高校生ワークショップではスタッフ兼参加者として、だれでもワークショップでは参加者として対話をしました。

当日のプログラムはどちらも、
 
①アイスブレイク
②問いをつくる
③子どもたちの言葉と出会う
④「わたし」の言葉で対話しよう

と、皆さんと一緒に徐々に雰囲気を作っていくような内容でした。

 そして、今回の問いづくりの焦点は、

「ぼくたちは、押し付けられた運命を苦しみながら生きるために集まっただけのグループではいたくない」
 ―第二次世界大戦時、ナチ・ドイツの強制収容所に捕らえられていた少年たちが残した言葉より

でした。

これは、テレジン収容所の少年たちによる秘密の雑誌『Vedem』に書かれていた言葉です。プログラムの中には、参加者が分担をして少年たちの言葉を朗読する時間がありましたが、それでも読むことが出来たのは少年たちの言葉の一部です。
『Vedem』について、より詳しく読んでみたいという方は日本語に訳されて出版された書籍がありますので是非ご覧ください。

それでは、2つのイベントの様子をご紹介しながら私が感じたこと、思ったことを振り返ります。

1月27日 高校生ワークショップ(ゲーテ・インスティトゥート東京にて対面開催)


とても寒かったこの日ですが、幸い天気は晴れでした。最寄り駅の青山一丁目駅から会場までは徒歩で10分ほどです。
「今日はどのようなイベントになるだろう?どのような人が参加してくれるだろう?スタッフとして、参加者として私はどのような時間を過ごすのだろう?」と想像しながら会場まで歩いていきました。
私は、以前1度だけゲーテ・インスティトゥート東京を訪れたことがあるのですが、今回会場となった図書館に足を踏み入れるのは初めてでした。

図書館には、絵本から文学、専門書までたくさんのドイツ語の本が並び、中には日本語で読める本もありました。ドイツ語は全く読めない私ですが、それでも1冊ずつ手にとって開いてみたいと思うような素敵な空間でした。
言語を超えて人を魅了する、ゲーテ・インスティトゥート東京の図書館の魅力だと思います。

高校生の参加者は21人、スタッフや教員の方の参加者も含めて総勢30人が集まりました。
そして、対話のためのグループは、各テーブル3~4人という少人数で向き合いました。高校生同士は初対面という人が多い中、ひとりひとりが良い雰囲気を作ろうとしてくださったように感じます。

グループごとの自己紹介では、高校生の皆さんが普段どのようなことに関心があるのか、どうしてイベントに参加しようと思ったのかなどを話してくださったので、少し緊張していた私も安心して話すことが出来ました。

問いづくり、という実践はKokoroの活動に参加して初めて知りました。今回のイベントに先立って、Kokoroのミーティングで何度か体験したのですが、自分の問いを見つけるだけではなく、他者の問いに耳を傾けることを学びました。
イベント当日に、高校生の皆さん、教員の皆さんが出された問いはどれも興味深く、新しいもので、全ての問いをもっと深めたいと思うほど多様な内容でした。

問いづくりの場面では、高校生の皆さんが少年たちの言葉を見つめ、悩みながらも何か想起しようとしている姿が印象的でした。その姿を見て、私も同じように少年たちの言葉を見つめながら、彼らが何を訴えようとしてるのか、この文章からどのような問いを言葉にできるのか...とぐるぐる考えました。そうした時間を経て、

「グループっていうのは、何なのか?」
「誰からの押し付けだったのか?」
「なぜ人は同調しちゃうのか?」
「どんなグループでいたいのか?」
「運命とは具体的に何を指していたのか?」
「だけ、以外に何があるのか?」

といった問いが生まれました。

最後に出揃った問いの中から「私にとって最も大切な問いを選ぶ」というワークがありました。

そこで、私が選んだ問いは「なぜ人は同調しちゃうのか?」です。
この問いを選んだ理由は、同調することは大切な場面もあるけれど、同調することで人と異なる意見を発する機会を失う場面もあると感じたからです。
私は、
「私もそう思う」「私も同じ気持ち」
という部分と
「私は違うと思う」「私は違う気持ち」
という部分のどちらも尊重したいと思うのです。
だからこそ、Kokoroは「私はこう思う、あなたはどう思う?」という視点を大切にすることを伝えているのだと思います。
あなたの意見や気持ちを否定することはないけれど、私の意見や気持ちも大事だと思うことで、居心地の良い対話が出来るような気がしています。

2月3日 だれでもワークショップ(オンライン)


土曜日の夜、私は自宅からPCでイベントに参加しました。
プログラムは「どこからご参加されていますか?」の問いかけから始まりました。今回は、日本全国、そして海外から参加している方もいたため、PC越しに全国そして世界の人と出会える機会があることは本当に貴重だと感じました。
またこの日は、だれでも参加可能のワークショップということで、職業も地域も異なる幅広い世代の方が参加していました。
そして、ホロコーストについてよく知っている方も、ほとんど何も知らない方も、それぞれの経験や気持ちを大切に問いを作りました。
続いて、自分にとって最も大切な問いを選び、その理由をグループで共有した後に、最後のワークとして改めて対話をしました。

2月3日には、次のような問いが生まれました。
「少年は、いつ死ぬかわからない状況で、どうやって希望を持ち続けたのだろう。」
「『集められた』ではなく『集まった』と表現した意図は?」
「人が人として生きるためには何が必要なのか」
「共に生活した友達が一人一人去る時どんな気持ちで彼らを送っていたのだろうか」
「テレジンの子どもたちから発せられた言葉に対する、ここにいる私たちの応答は。」

今回、私が選んだ問いは「『集められた』ではなく『集まった』と表現した意図は?」です。
この問いを選んだ理由は、「集まった」と表現することによって読み手に「自分はここにいて、これからも生きていくんだ」というような少年たちひとりひとりの意思を感じさせると思ったからです。
確かに、少年たちは強制的にテレジン収容所に連れてこられたはずです。それでも、『Vedem』の執筆、編集、出版、共有を通じて個としての自分を取り戻し、彼らなりの暮らしを積極的に作っていこうとしていたのではないかと想像させる問いでした。

今回のイベントを通して、私が実感したこと


①当日まで、そして当日も多くの人が関わることで無事にイベント開催ができること
→スタッフとして、できないことは助けてもらいながら、できることをやってみることで少しずつ物事が進んでいくような気がしました。

②問いはひとりひとりの経験や価値観を映し出すものであること
→同じ文章を読んでも、その文章のどこに焦点を当てるかによって全く違う対話が生まれるということを感じました。

③イベントに参加することは緊張するけれど、良い出会いがあるかもしれないこと
→初対面の緊張感や初めての場所での居心地の悪さも、初めての経験ならではの気持ちだと思います。そうした不安な気持ちも互いに伝え合うことで、良い対話の場が生まれるのではないかと感じました。

④同じ場と時間を共有しているけれど、ひとりひとり全く異なるものを見て、感じているかもしれないこと
→対面では、部屋の様子を観察している人、プログラム冊子を熱心に見ている人、スタッフを気にしている人など、視点が異なる人が集まることは面白いと感じました。オンラインでは、そうした様子が分からないからこそ、言葉で伝え合うことがより一層大切だと感じました。

⑤モヤモヤとしながら日々を過ごしている人が他にもたくさんいるということ
→私は、普段からモヤモヤと考え込むことが多いのですが、高校生と対話したことで、そのモヤモヤを共有できたように思います。
個人的な悩みを持ちながら、世界で起きている問題にどう対処すれば良いのか、無力さを感じたり、それでも何か行動してみたいと思いながら過ごしている人が他にもいるのだと感じました。

参加者のみなさんは、どのように感じたでしょうか。
慣れない場所や人に緊張していた方もいたと思いますが(私はとっても緊張していました)、イベントを通して少しでも楽しい、面白い、参加して良かったと感じられる瞬間があったなら、とても嬉しく思います。

私にとって、スタッフと参加者という2つの立場でイベントに参加できたことは、とても貴重な経験でした。
今後も他者の言葉に耳を傾け、学び、問いを増やし、私にとって最も大切な問いを大切に深めていきたいと思います。

アンケートのご紹介

最後に、1月27日と2月3日それぞれのイベント後に回答いただいたアンケートの一部をご紹介します。


1月27日


「少年たちが作った雑誌や彼らの言葉から様々な解釈ができるということに感動しました。自分と同じ年代なのに少年たちは自分よりもずっと先にいて、全然違うことを考えていたんだなと思い、時代と置かれた状況でこんなに変わってしまうのかと複雑な気持ちになりました。」(高校1年生)

「アクティビティを通して、他者と対話することで、自分の考えも改めて考え直すことができました。自分がどう思っているのかに向き合うことができました。自分では思いつかないことを他者は考えていて、でも、その意見にもすごく共感できて、他者との意見交換ってすごく学びになるなと思いました。」(高校2年生)

「 当日はスタッフとして参加させていただきました。高校生と一緒に問作りを行いましたが、自分とは違う角度からの問いが沢山出てきて面白かったです。例えば、文中の僕達という複数形であることに注目した問など自分が疑問として見れなかった部分を問として出していて勉強になりました。また、グループの高校生が積極的に話してくださったため、対話では色々派生して嫌いな人同士で和解するにはどうするべきなのかという対話を長い時間行うことが出来ました。その中で相手の意見を受け入れることの大事さやある意味距離を保つことで訪れる平和があるのではないかということを対話し、この世の中に平和が訪れるにはどうしても合わないことがあれば一定の距離を保つことも平和なのではないかと思うことが出来ました。更に、平和な世界ってなんなのか?そして、平和とは何かという非常に難しい問いも生まれましたが、最小単位の家族ですら平和が難しかったり学校一つでも平和が難しかったり各々の経験から平和は難しいが、より平和に近づくにはどうするべきなのかということを対話できました。このことから、平和な世界は訪れるのだろうか?という問いは非常に難しく多くの人が完全な平和な世界は訪れないと答えるかもしれないがその先にどうしたら平和になるのか、何が平和なのかと考えることで将来平和な空間が崩されそうになった時の対処法を持つことが出来るのではないかと考えました。高校生という未来を担う存在が、平和とはなにか平和になるにはどうするべきか身近な事例から考えている姿を目の当たりにして、改めて平和について考える重要さや多くの人の意見を聞く楽しさ重要性を学べる会になりました。」(大学生スタッフ)

2月3日


「ホロコーストの歴史の中で、人々がどのように「抵抗」してきたか、という問題に興味を持っています。今回は、テレジンの少年たちが作った雑誌「Vedem」の言葉から、悪への抗議、生きることへの強い意志が伝わってきました。リレー形式で朗読すると、さらに熱を帯びて、時空を超えて自分に向けられたメッセージのように感じられました。歴史に学ぶことが無力に思えるほど痛ましい昨今の状況だからこそ、断ち切れない憎悪の連鎖や報復行為にどのように「抵抗」していくかが切実に問われていると思いました。
問いを作る、選ぶ、共有するプロセスも、対話を導くステップとして、良かったです。ララさんのメッセージも、テレジンの少年たちの様子を具体的に語ってくださり、わかりやすかったです。ありがとうございます!」

「ホロコースト国際デー、テレジンの雑誌そのものを知りませんでした。その内容を知って、びっくりすると同時に、今の私達と彼が繋がっており、同じ世界におり、彼等とともに生き、この世の差別、戦争、戦争準備体制などなどを拒否して行きたいと思います。拒否していない自分が怖くもあります。」


参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。
また次回のイベントでお会いできることを楽しみにしています。

Kokoroについてさらに知りたい方へ


Kokoroの公式ホームページ、インスタグラム、ツイッターなどのSNSでイベント最新情報や活動の様子を掲載しています。さらに、これまでに開催したイベントや学校訪問の様子、ホロコーストに関する資料なども紹介しています。
また、インターン生が中心となって投稿をしているインスタグラム(@kokoroyouth)もありますので、是非ご覧ください。

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