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ビジネスホテルで趣味と向き合う


 出張の季節がやって来た。仕事の慌しさは消せないが、その代わりとなる楽しみがある。以前述べた通り、ビジネスホテルへの宿泊だ。


 浴槽にお湯を貯めている間、ひとまず汗で蒸れたシャツと靴下を脱ぎ、テイクアウトしたフレッシュネスバーガーにかぶり付く。近所に店舗が無いため、滅多に食べる機会のないフレッシュネス。出張は味わうのにうってつけの機会だった。
 顔の正面には鏡に映った半裸の俺。たとえ眼前に半裸の自分がいたとしても、美味しいものは美味しい。

椅子、デスク、そして鏡
フレッシュネスバーガー1個のみ注文。
チキンかポテトを追加してもよかった。


 非日常空間でテンションが高まるのはさがであるが、今回はいつも以上に気分が高揚している。チェックイン直前に、Mr.Childrenのホールツアー・国際フォーラム公演(2024年1月)の当選通知が来たためだ。約5年振りの生ミスチル。嬉しさは筆舌に尽くし難い。
 普段の宿泊ならば、特に意味もなくラジオ代わりにTVを付けるが、今回は違う。「生で一度は聴いてみたいミスチルの楽器」をチョイスしてiPhoneから流し、程々の音量で口ずさんでみる。「少年」「靴ひも」「掌」「bird cage」「UFO」「その向こうへ行こう」……。いずれも望み薄な10〜20年前の曲だが、願うだけなら自由だろう。別に歌われなくても会場で暴れたりしない。一方、もしセトリに入っていたら、興奮で鼻血を出してしまうかもしれない。


 唐突だが、俺はミニマリストではない。リビングは収集物──書籍・ゲーム・DVD/BD等々の収集物で溢れている。確かに、時折雑誌等で見かける「ミニマルなライフスタイル」は素敵に思えるが、俺には不可能だと断言できる。理由はシンプル。愛着のあるコレクション達は俺の心の一部。絶対に手放したくない。
 そんな俺が「何もない空間」を味わうには、ホテルに泊まるしかない。ホテルは自分のアイデンティティを構成する要素が一つも存在しない、無色透明な空間なのだ。


 そんな空間を、今回はあえて自分の「好き」で満たしている。耳慣れたミスチルの曲自体は、家で聴くそれと何ら変わらないはず。だが、今の俺の周りには目と集中力を奪われるアイテム──漫画やぬいぐるみ等が何一つない。自分でも意外に思えるが、ホテルは純粋に好きなアーティストへと没頭できる、類稀な場所だったようだ。


 ……さて、俺は風呂を済ませガウンを羽織った後、この記事をベッドの上で記している。
 そのうち「まだ寝るのは勿体ない」などと思いつつ、慣れない高さの枕に頭を預けるのだろう。明日は仕事。眠りに就くまで、さほど時間は掛からなさそうだ。



※後日談。先述のミスチル国際フォーラムツアーの感想です。

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