マガジンのカバー画像

#エッセイ 記事まとめ

1,142
noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
運営しているクリエイター

2020年6月の記事一覧

落語はポップでもキャッチーでもない。

「さや香さんって“キャッチー”だけど“ポップ”ぢゃないよね」 と、以前とある人に言われたことがある。 ふーん。笑 「そだね!間違いナイトプ~ルぅ~っ!パシャっパシャっ☆」 とでも返しておけば、わたしに不足な“ポップ”は多少でも補うことができたのだろうか。 たしかに『EXIT』は“ポップ”で“キャッチー”だと思う。 カタカナ語故の定義の曖昧さは否めないものの、 『ポップでキャッチー』=『大衆ウケしやすいわかりやすいもの』 と考えれば、なるほど『EXIT』はその条

あの時、返せなかった手紙。(#磨け感情解像度)

 手紙を貰った記憶がある。  ひどく曖昧で、もしかしたら捏造した思い出かもしれない。手元にその手紙は残っておらず、差出人の顔は朧気で、名前も思い出せない。  それでも、手紙を貰った記憶がある。  その手紙に返信をしなかったことが、今になって少しだけ、心の底に引っかかっているんだ。   〇  その男の子のことを、私はよく知らない。恐らく、同じクラスだった同級生の誰も、彼の事を詳しく知らなかっただろう。  まだ入学したばかりの高校一年生、外部進学者の集まる五組の端に、確かに彼

月にいちど顔を出す、魔物のような自分を肯定する

心がささくれ立っている。 大好きなはずの映画を観ても、本を読んでも、内容が頭に入ってこない。何をしていても集中できないし、楽しくない。 気分が沈んで、自己嫌悪に陥って、溜まったLINEも返せない。誰にも会いたくない。 そんなとき「もしかして……」と思って体調管理アプリを開くと、ほらやっぱり。 表示されるのは、「生理日予測 5日前」の文字。 イライラの正体はPMS。わたしを悩ませる、月にいちどやってくる魔物だ。 PMSの正式名称は「月経前症候群」。その名の通り、生理が始まる

ゲイになったら、職場で自分が消えた

「おはようございます」 聞こえていないのかな。 不安になってもう一度挨拶を試みるが、やはり、届いていなそうである。というよりも、体を動かしても視界に入れてもらえていない、そんな気がする。 わたしは昔から声が小さい。 ガラス細工か、絹糸のようなものと自分に対しては言えない。ただ、「そうだったらいいのにな」と妄想をしたことは何度もある。天然を願い、涙が落ちたその場から、生まれ変わりたいと想う。 「男なら泣くな」「もっと男らしくしろ」と言われても、上手にはできなかった。む

壮大に濡れるか? 案外、憧れています。

自分の髪はくせっ毛です。 ロン毛な時は毛先だけまるでパーマを当てたように程よくクルンとした感じで流せて、江口洋介さんやキムタクのようになったものです。 あくまで髪型のみですが。 今は短くしているのですが、短くしても毛先のクルンは常です。 特にいまの梅雨時は期待以上にクルクルっとなります。 つむじもヘンな方向だそうで毛量も多く、美容師さん泣かせです。 幼馴染が美容室をやっているので、2~3か月に1回カットと白髪染めをお願いします。 オシャレなお店は苦手ですが、子供

人間関係は、お花と同じ

「人間関係は、お花育てるのと一緒。ゆっくり時間と手間暇をかけな、どんな花が咲くかはわからんよ。育てていくうちに、土が弱いとか、日光が足らんとか、水をやりすぎとか、そもそも育てている種が悪いとか…いろいろ出てくる。根気強くそういうのをクリアできて、やっと綺麗な花が咲く。苦労して育てたお花は、それがどんな花をつけても、すごい綺麗に思えるもんやよ。」(旦那さん修正済み) 旦那さんの言葉を反芻してみる。種が悪かったら、悪い花が咲く。真っ先にバッタモン家族を思い出す。キレイな花を咲か

ヤンキーになったS君に「私は覚えてるからなー!」と伝えたい。

梅雨時期になると思い出す男の子がいる。 幼稚園から中学校まで、11年間、同じまなびやに通ったS君。 幼稚園の頃から、同じ年の子と比べて背が高くがっしりした体格。その体に対しても大きめの顔に坊主頭。ハンサムというよりは愛嬌のある顔つきだった。 そんな少しいかつい見ためとは対照的に、茶目っけたっぷりのキャラクターだった。園の行事の前、並んで静かに待っていないといけない場面で、皆がだんだん堪えられなくなり、おしゃべりの声が大きくなってきた。「あー、まずいぞ、このままだとまた先生

地元

 先週、三ヶ月ぶりに実家に帰ってきた。  ついでに、というわけじゃないんだけど、まだ電車に乗って出かけることはほとんどしていない今、せっかくそちら方面まで行く貴重な機会だったので、用事をすませたり、馴染みの場所にも足を運んできた。  鎌倉の美容院に行って、タイに行く前から半年以上放置していた髪にパーマをかけ直して(というかかけ足して)もらい、小町通りと御成通りをぶらぶらして服を見たり、CHOCOLATE BANKのクロワッサンを食べたり、お母さんのキャラが好きでいつも立ち

雨、午前二時

「こんな時間に」の「こんな」は、誰が決めているのだろう。 午前二時、コインランドリーへ車を走らせる。雨。点滅する赤信号が雨とライトに反射して、なんだか物騒だ。私に見えていないだけで、私が見ようとしていないだけで、今この光の交錯のなかにどれだけの「異界の者」がいるのだろう、そんなことばかり想像する。 フロントガラスに雨がへばりつく。キレの悪い雨だ。こういう粘度のある、空気までべたべたしつこい雨は、きらい。でも、こんなとき、この雨の粘度を数字にする力がないから、うまく伝わらな

推し雑記〜ジャニオタがかまいたちにハマった話〜

ジャニオタがすゑひろがりずさんにハマったブログを見て私も書いてみようと思った次第です。theパクリ。ミルクボーイのネタをパクるかまいたちと一緒。オタクは推しの真似をしたがる。 当方節操がないオタクなので、オタクという自我を確立してから10年ほど、アニオタから始まり声優若手俳優ジャニーズ芸人殆どのオタクをしてきました。きましたというか現在進行形で全ての沼に浸かっている。上記についてもそのうち書く日があるかもしれないです。 ジャニオタの人格としてはKinKi Kidsの堂本剛を

気力が湧かないので、植物を育てることにしたはなし。

なんだか生きる気力が湧かない毎日が続いていた。 気力が湧かないというと、 まるで以前は気力の湧く泉があったかのような言い方だけれど、 そもそも自分にそういった面があったかすら、よく分からなくなっている。 高校を卒業して、早一年が経ち、社会の海にどぷりと投げ入れられた私は、やはり心身共に疲れていたのだと思う。 深い海に溺れそうになりながら遠くを見ると、蜃気楼が見える。 それも美しいものではなく、鬱々とした未来の姿をしていた。 振り返れば、立たされていた砂浜は消えてしまってい

どうして僕に「答え」を聞くんだろう

若い人と関わる仕事をしているので、将来のことや就活のことについて質問されることも少なくないのだけど、返答に窮する質問の定型に次のようなものがある。 今、入っておくべきという業界はどこですか? 新卒にオススメの会社はどこですか? 狭く深い専門性と、広く浅い経験と、どっちが必要ですか? いつもこの手の質問に対しては、「わかりません」と返してしまう。それは僕がこの手の就活やら業界やら企業の動向に対して無知でそう言っているというよりは、「これらの質問は全て、関係性課題だから」僕に

思い出のピザトースト

「隅から隅までおしゃれで緊張するね」 初めての神戸旅行で母が呟いた。手を繋いで歩いた記憶があると言うことは、きっとまだ私が小学校低学年の頃。レンガ造りの建物が並ぶ目抜き通りには深緑の街灯が立っていて、私の暮らす町とは明らかに違う雰囲気を醸し出していた。 そうか、おしゃれは緊張するものなのか。 それまで私の「おしゃれ」は可愛くてきらきらしているものだった。透き通るピンク色の消しゴムや、ラメが入ったペンケース、それからほかには、裾がフリルになったデニムのスカートのような。け

アルゼンチン日記「雪の降る誕生日」

約2年ぶりのことだそうだ。 数日前から、ネウキーノ(ネウケン州の人々)達は、そわそわと落ち着かない様子でいた。金曜日に雪が降ると予報されていたからだ。しかし、天気予報は僕達を何度も裏切った。人々はあり得ないと思いながらも、心のどこかにある淡い期待を捨てられずにはいられなかった。 金曜日の12時30分頃、料理をしていた妻が叫び声をあげた。 「雪よ!雪が降ってきたわ!」 妻が遮光カーテンを慌ただし気に開けた。窓に向かうと、ねずみ色の大きな雲から、ひらひらと粉雪が落ちていた