古代中国の世界に入り込む「金陵図数字芸術展(金陵図デジタル芸術展)」
中国の博物館や展示について、皆さんはどれくらいご存じでしょうか。どのような展示施設があって、日本の展示とどう違うのだろう、と気になっている方もいるかもしれません。
今回は2023年の年末に尋ねた中国南京市にある徳基芸術博物館の企画展「金陵図数字芸術展」をご紹介します。
はじめに
中国国内でも大都市の一つ南京市(名古屋とは姉妹都市です)にある大型商業施設「南京徳基(Deji Plaza)」内にあるのが徳基芸術博物館です。博物館は南京徳基の8階フロア全体に広がっています。館内(フロア)では、古代から現代まで様々な中国の美術品や工芸品を展示しています。
今回ご紹介する「金陵図数字芸術展」も、8階フロアの一画に特設会場が設けられていました。
かつての南京を活写する金陵図
企画展で紹介している金陵図とは、金陵(現在の南京)の風景や風俗を描いた絵図のことを指します。金陵図はいくつかの種類がありますが、この企画展で取り上げられているのは、清代に馮寧が描いた『仿宋院本金陵図』です。これは宋代(960~1279)の金陵が描かれており、巻物に仕立てられたその長さは、なんと約110メートルにもおよぶ大作です。
絵図には金陵が繁栄していた当時の都市とそこに住む人々が生き生きと描かれており、「繁栄期の金陵の歴史、文化、民俗を記した百科事典」とも称されています。
デジタル技術で金陵図を魅せる
では展示会場に入ってみましょう。企画展のタイトルは「金陵図数字芸術展」。「数字(デジタル)」で金陵図に親しんでもらおうというものです。入り口と正面の壁には、金陵図に描かれているたくさんの人々が切り出されて並んでいます。こう並んでいると様々な人が描かれているのだとわかります。
受付ではスマートフォンでIDを登録し、ウォッチ型の特殊な測位システム端末を受け取ります(※なんと、小児と高齢者は無料なんです)。これで金陵図の世界をデジタルで体験できるんです。
このウォッチを付けながら、携帯で画像操作をすると、自分のアバターがデジタルの金陵図に入ることができます。
金陵図の世界を体感する
会場内は暗く、天井には美しいランタンが浮かんでおり幻想的な空間になっています。そして、壁にはコの字の通路に沿って大型LEDモニターが続き、モニター内には金陵図の絵巻そのままの世界が映し出されています。絵図の中では描かれた人々が動いており、まるで、タイムスリップして当時の人々の生活を眺めているかのようです。
さらに、絵図内には、IDと測位システムによって連動した来館者のアバターも登場します。入口であらかじめ選んだアバターが絵図の中に現れ、来館者の動きに合わせて絵図の中を移動します。子どもたちは自分の動きに合わせて動くアバターを楽しんでいました。
ほかにも、スマートフォンを操作することで絵図内に文字や花火を出すなどのコンテンツがあり、解説もスマートフォンで読むことができます。まさにデジタルで味わう金陵図の世界です。
実際現地で体験したムービーはこちら:
おわりに
会場内には金陵図も展示されています。デジタルで絵図の世界を体験し、実際の絵図も鑑賞して歴史と文化を知る、大人から子供まで、デジタルによって文化財を楽しむことが出来る展示でした。
文化財に馴染みのない方々にも、その価値や面白さを伝えるためのデジタル技術の活用は、今後も積極的に導入していくと良いと感じました。
徳基芸術博物館のサイトには「2021.10.29 - 2024.12.31」の展示期間が書かれているので、ご興味がある方はぜひ今年中にお訪ねしたほうが良いかと思います。
公式HPはこちら: