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コンクまでの最後の道【ルピュイの道2019#13】
2019年のルピュイの道の旅は、コンクという町を今回のゴール地点にしていた。
ルピュイ・アン・ヴレからコンクまで180kmほどの距離を、大雪のためにバスに乗ってスキップしたパートもあったが、150kmくらいは歩いたと思う。
カミーノのフランス人の道800kmを歩いた経験から言えばたった150kmではあるが、それでも見どころのあるいくつもの美しい村を通り抜け、良い出会いも多く、毎日笑い、毎日美味しいフランス料理を平らげて歩いた道であった。
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ルピュイの道で出会って大の仲良しになって、歩き旅の時間を一緒に過ごして一緒に飲んだり食べたり笑ったりしたイザベラとは、エスタンの町でお別れ。
宿を出る時に笑顔でハグしたのだが、ハグが終わって体を離す時にイザベラが笑いながらも泣いていて、私も目の奥が熱くなってきてしまい、笑ってごまかした。
私はそういうところがある。
ごまかさなくてもよかったのになぜかそうしてしまった。結局、2人で笑顔でまた会う約束をしてバイバイできたから良かったのだけど。
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旅で出会って一緒に時間を過ごした人とは、日本で普通に生活をしていて知り合う人と違う時間の積み重なり方と深まり方をすると思う。
経験上、そういうことが多い。
たった1週間程度とは言え、ほぼ毎日寝食を共にし、お互いの母国語ではない英語を使っていろんなことを話した時間はとても大切な時間になった。
この人とはきっと仲良くなれるなと思える要素ってどこで分かるんだろう。
言葉で説明するのが非常に難しいが、イザベラとは最初からそういうものを感じたし、向こうも感じてくれていたのだと思う。
イザベラの住むボルドーの家へ1年後に行くことを約束した。
この時は、当然翌年にまたフランスに来てルピュイの道の続きを歩いてボルドーへ行くと決めていたし、簡単に叶えられる約束だと信じていたし、世界がこうなるとは思っていなかったし、イザベラに会えないまま3年も経つとは思ってもいなかったけど。
それでも必ず叶える約束だと思っている。
エスタンの街は思い出深い場所になった。
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さて。
毎日フランスを歩いて旅したが、「ボンジュール」の発音が最後まで上手くならなかった。
フランス人の仲間やアメリカ人でフランス語を勉強中のアルが教えてくれる「ボンジュール」の発音は、何度聞いてもどう考えても「饅頭」と聞こえる。
もう、ボンジュールは格好つけた感じのリズミカルな「まんじゅうっ」でいくしかないな、と心に決めた。この日は腹を決めて、出会う人々に「饅頭!」と挨拶して歩いた。
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歩きながらの朝ごはんは、ブーランジェリーに寄って買ったマドレーヌとチョコクロワッサン。
残念ながら饅頭は手に入らないのがフランス。
饅頭は歩き食いすると喉が乾くからパンの方がベターだと思った。
道標に「Conques」が出てくるようになった。
最終目的地。
最終日のコンクまでの道のりもまた美しい道だった。
こじんまりした可愛らしい村を通り抜けたり、牧場を歩いたり艶々で世界一美しい髪になる馬油の持ち主と出会ったり、最後の道も「まったく飽きさせないぜフランスめ」と言いたくなるくらい良い道だった。
最終日の今日が一番天気も良かった。
序盤の暴風雨、大雪、霰が降っていたのが大昔のような気がする。
ドラマチックな道のりだった。
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サラサラヘアーの秘訣。
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白と赤のラインが道標。
コンクの少し手前からは森の中に入った。
なんとなくスペインのカミーノに似ていたし、むしろ日本の熊野古道のような雰囲気もあったから歩いたことのある道のような気がして面白い。
トイレがなかなかない道にようやく現れたトイレスポット。
そこにちょうど良いテーブルと椅子があったので、途中の村のスーパーで買ったパンやチーズを広げてランチタイムにした。
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白と赤の印にようやく見慣れてはきたが、やっぱりホタテの形のこの巡礼のシンボルマークを見つけるとホッとするし嬉しくなる。
森の中で栗を拾った。
するともうそこから頭の中はずっと栗ごはんが食べたいという煩悩に占められてしまった。
ほくほくのあれを食べたい。
疲れもピークに達していた。
他の人はどうなのか知らないけど、私は昔からよくこける。
しょっちゅうこける。
地元の駅の階段でも時々こける。
そんなへっぽこな足なので、ルピュイの道でも、ちゃんとクライマックス目前で疲れて足がもつれてこけた。
擦りむくだけで済んで良かった。
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気を引き締めてラストスパート。
時々は軽くこけておいた方が引き締まるから、私のおすすめのトラベルハック。
骨を折らない程度に軽めにこけるのがコツ。
さてさて。
ドキドキしてきた。
毎日毎日歩いてきたけど、もう今日でしばらく歩き旅はお預け。
寂しいけれど、やっと終われるという解放感も無くはなくて、疲れと汗でぐちゃぐちゃになっていた頃。
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それは突然現れた。
山の中から急に現れたのである。
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コンク。
何だここは。
こんな山の中に突然現れる美しい村。
まるで中世から取り残された秘境をさも自分が発見したかのような感動があった。
RPGゲームや映画の主人公のような気分にもなる。
わざわざ少しルートを行き過ぎてみて、あえて上からコンクという村を見下ろしてみる。
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あの真ん中の大きな教会のような建物が今日泊まる予定の修道院だろうか。
こんな美しい村の真ん中のあのような美しい修道院に泊まれるなんて夢みたいだなあと立ちすくむ。
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思えば旅の始まりのルピュイの街も圧倒的な聖地感だったが、ゴール地点のコンクも凄い。
この村も「フランスで最も美しい村」認定を受けているが、そういう次元のものではない気もする。
こんな山の中に隠されたこの村まで、なかなか普通の旅では来にくいと思うので、歩き旅をしてきて辿り着けたことはやっぱり感動も大きい。
さて、歩いてあの村へ入ろう。
あの美しい村に入れることがとても嬉しいしワクワクする。
旅の終わり、ゴール地点へと向かう頃にはすっかり疲れは飛んでいた。
門をくぐればそこはコンク。
素敵な世界が広がっていた。
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この日、泊まるのは、サン・フォア修道院付属教会。世界遺産らしい。
サン・フォア教会に併設されている修道院を巡礼者用の宿にしているのである。
今夜の私の宿は世界遺産である。
晩ごはんもこちらの修道院で大勢の人たちと一緒にいただく予定。
ティアリとジャックはもう着いているだろうか。アル達にもどこかで会えるかな。
今日また会えた人には、ありがとうとさよならを伝えないといけない。
旅の最後はそれが寂しいけど大切なミッションだ。
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最後の夜にふさわしい締めくくりの場所だと思う。
ここで過ごす夜が楽しみで仕方なかった。
150kmの歩き旅の疲れはもうどこにも残っておらず、バックパックの重さすら感じないほど身も心も軽くて晴れやかな気分だった。
続く…
ルピュイの道の旅の記録は、こちらのマガジンでまとめています。
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