ルピュイの道の歩き始め【④】
フランスのカミーノの一つであるルピュイの道を歩き始めることにした日のことを、写真と共に思い出したことをぽつぽつ書いてみようと思う。
(#ルピュイの道 で綴ってます)
スタート前夜に泊まったルピュイ=アン=ヴレの宿は修道院で、古いがスッキリしていて清潔で居心地が良かった。
部屋は個室でシンプル。
いつも通り、私の旅の相棒のバックパック、チャチャが机の上に置かれ、
いつも通り、靴が謎の場所で脱いである。靴下も無造作にオン。
窓から見た景色はどんよりしているが、何故だか美しく思えるのが、旅のマジックである。
歩き始めのしばらくは、大きな街を抜けるための道、いわゆる一般道を歩く。
しばらくすると、さっきまでいた街が遠くに見えて、緑の溢れる自然の道に入ることとなる。
カミーノを歩く時はガイドブックというか地図本を持ち歩いているのだが、ルピュイの道のガイドブックは当然フランス語で書かれている。一番メジャーなガイドブックは「ミャンミャンドゥードゥー」と呼ばれており、本の内容はもちろん、タイトルの意味すらもさっぱり分からない。そんな私は、ひたすら簡単なイラストだけを頼りに歩くのである。
しばらく登り道かーとか、川を渡ったら次の町かーとかその程度の理解。
例えば初日は、上の写真のページを見る。
そして、ルピュイの街を出て、23.5km歩けば「Saint-Privat-d’Allier」という街に着くことと、そこに宿があるらしいことは分かったが、その街の読み方すら分からないし、フランス語の大文字と小文字の使い分けも謎で、歩いているフランス人を捕まえて、「これは何て読むの?」と聞いても日本のカタカナ50種類しか分からない私に到底理解できる発音ではなく、初日から頭を抱えた。
スペイン語はローマ字読みでなんとかなったがフランス語の読み方の分からない街はなかなか覚えられないし、愛着も湧きにくかった。
大きな街になると詳細な地図が載っているが、それはあまりちゃんと見ない。知らない間に街を抜けている。
オリンピックのピクトグラムが話題だったが、この本ほどそういったマークが頼りになるものはなかった。水道マークは水が補給できる場所、コーヒーマークはカフェがあるのかなとか。
理解できる情報が少なすぎる方が、宝探しゲームのようで楽しいもんである。
スペインのカミーノは青地に黄色の矢印や、黄色のモハンと呼ばれるシンボルマークを辿って歩くのだが、フランスは赤と白のラインが道標となることが多かった。フランスでは、あちらこちらにハイキングコースが作られていて、ルピュイの道はGR65というハイキングコースでもあるらしい。
歩き出して見つけた赤と白の矢印には「1517km」と書いてあった。
スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの距離を示している。サン=ジャン=ピエ=ド=ポーからサンティアゴまでの後半の800kmはもう私は歩き通しているのであと717kmで私の歩いた道は繋がる。
私はもうスペインの巡礼路フランス人の道は歩き通してゴールしちゃってる訳なので、今回のルピュイの道は、特に歩き通すことにはこだわらず、好きな道を歩くことに重きを置いている。
しかし、800km歩いたと言うと大抵の人に驚かれることが多いが、1717kmと数字が4桁になるとさすがの私も果てしない距離だなあと気が遠くなった。
時々、こんな風な、白いバツ印と赤白のマークが出てきて、これは進んでいいのかダメなのか悩みながら歩く。
ところで、空模様が非常に怪しい。
天気予報では夕方から吹雪となっていて、まったくもって信じられなかったが、歩き進めるとなんだか信憑性が出てきた。
カミーノを歩いていると時々いろんな国のTVクルーと出会う。
私は1人で海外を旅していると、アジア人女1人だと目立つし物珍しいのか、よくインタビューをされる。しかし、語学力がアレなもんで、自分の中で厳しい局面となりがち。フランス語だったので堂々とインタビューNGにして通り過ぎた。
ロバと共に歩く巡礼者。
スペインのカミーノと違って気軽なハイキングとして歩くフランス人も結構いて、こんな赤いスカーフなんか巻いちゃうおしゃれないでたちで歩く人に会ってびっくりした。
牛全員に凝視されたり
牛全員にそっぽを向かれたり
突然道を牛に遮られたりしながら歩き続ける。
天気の方はと言うと、晴れて夏のような日差しの時間帯となり暑くて半袖になったのだが、嵐の予感は確かに近づいていて
馬のヘアスタイルを見ていただければ、暴風が吹きはじめていることに気づいていただけると思う。
こんな街を通り
こんな村を通り過ぎて、夕方「Saint-Privat-d’Allier」という読み方の分からない街に到着。
写真でお気づきかもしれないが、土砂降りの暴風雨に出くわしたのである。
雨が雹に代わって痛くて雨宿りをしたりして、なんとか23.5km歩き、到着したのでありました、やれやれ。
なお、暴風雨の最中の道の写真はほぼない。
とにかく1日を通して、春夏秋と目まぐるしく季節が変わるような天気だった。
そういえば、この辺りは「ジェヴォーダンの獣」という伝説の残っている街で、巨大な獣がこのあたりの人間を食べまくったという。
ジェヴォーダンの獣のサイズ感がエグい。
霧も出てきて、食べられちゃったらどうしようという恐怖心で歩みも早まった。
街に入ってから予報通り吹雪がやってきて、1日の間に春夏秋冬と、とうとう四季をコンプリートした。
雪が少しおさまるまでまたどこかの店の軒先で雪宿りをした。
昼ごはんの時に雨宿りしていたお店の人と少し話していたら、スペインの巡礼と違ってフランスの道では宿は予約をした方が良いと教えていただき、私のガイドブックを見て良さそうな宿に私の代わりに電話をして予約までしてくれた。
メルシーボークーの発音の仕方のレクチャーも受けて、本当にメルシーボークーである。
そんなこんなで、初日の宿に到着。
着いた時はこの程度の雪だったが、夜通し吹雪で、翌朝は白銀の世界だった。
ちなみにこれは4月末のこと。
4月末って春じゃないの?と何度も心で叫んでいた。
フランスの自然の厳しさと寒さに、弱音を吐きそうな夜だった。
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