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サンコームドルト 〜フランスの最も美しい村その1〜【ルピュイの道10】

世界には「最も美しい場所」が無数に存在している。「最も」なのにいくつもある。
「フランスの最も美しい村」と呼ばれる村もいくつもある。どれが本当のベスト1なのかなんて、そんなのは気にしなくていい。もともと特別なオンリーワン!である。
そんな訳で、ルピュイの道を歩く旅の続きなのだが、ここからは「フランスの最も美しい村」認定された村をいくつも通り抜けるという素晴らしいゾーンが始まる。

「フランスの最も美しい村」とは一応認定基準がある。

1)人口2000人以下であること
2)保護されている2以上の重要文化財/歴史記念物があること
3)村議会で承認が得られていること

この3つの前提条件を満たした村が応募資格を得ることができ、27項目にもおよぶ厳しい基準によって審査され、資格委員会に認められた村々が加盟。2019年時点で、159の村が加盟。
卓越した美しさを持つ「最も美しい村」の価値をさらに高め、少しでも多くの人々に知ってもらうことで、村の過疎化に対して新たな選択肢を与えることが目的。
「フランスの最も美しい村」の共通的な特徴は地域全体の建物の同質性や周囲の自然環境に同化した集合景観。

パリのような大都市ではなく村というところが私の好きな単位でくすぐられる。
そもそもルピュイの道を歩こうと思った決め手の1つが美しい村々を歩いて巡れるという点であった。
悪天候続きの前半ではあったが、美しい村々コーナーに差し掛かるタイミングで雪と雨のシチュエーションは終わった。
非常に楽しみな気分で乗り込んだ1つ目の美村!サンコームドルト。

とっても小さな、城壁跡に囲まれた静かな村だったのでお散歩が、物語の中に入り込んだような気持ちになれたので、写真と共に思い出を。

まずは村の入り口で羊にご挨拶

人がほとんどいない。
人口2000人どころか20人くらいじゃないかとすら思う静かさ。
城壁跡のゲートをくぐると、ねじれとんがり屋根の教会が待っていた。

車がたくさん止まっていた場所は「Mairie」と書いてあり、それは役所だったと後で知る。役所っぽくない造りが素敵である。

行き止まりが多くて迷宮のようなサンコームドルトの村の中。

路地裏探検が好きな私だが、好きで路地裏を探索するのと、意図せず路地裏をぐるぐると迷うのとはまた違うのだが、ねじりとんがり屋根が見えると、迷っていようと嬉しくなる。
お散歩と称して、今宵の宿探しに彷徨っている状態の私とイザベラ。

本日の宿は袋小路の先にあった。
見つけるのにイザベラと苦労したが、ペレグリーノのシンボルマーク(カミーノでおなじみの)を見つけた時は2人で宝箱を見つけたかのように喜んだ。

貝殻が巡礼旅(のようなこと)をする我々の証。


2階の私たちの部屋の窓からの眺め。

青いタオルはイザベラが毎日洗って干している即乾の巨大タオル。懐かしい。
ねじれ具合がかわいい。

シャワーを浴びて洗濯をして、宿での夕飯が19時だというので、2人で村を、今度こそ散歩目的で散歩してお茶することにした。

教会に入る。
静かでこじんまりしていて良い。


あ、そうそう、教会を見つけるたびに立ち寄っては、教会に置いてあるノートに、「お腹すいた」とか「寒いです」とか、しょうもない一言を書いて「のりまき」と名前に加えて日にちを記してきた。
これまでのいくつかの教会で、私より先に辿り着いていた日本人の男性の名前が、大抵私の1日前の日付と共に書かれていて、追いかけているような気持ちで楽しかったのだが、その男性のメッセージがここサンコームドルトの教会には私の書くすぐ上に記されていてほっこり。
しかし、よく見ると今日の日付になっている。
おお。射程距離に入ったか。
何時に訪れたのだろう。
追いついて出会えるかもしれないなあなどと思ってわくわくした。

巡礼のシンボル、貝がらのマークが村のあちらこちらに。


村を歩いていると、毎日昼頃に私を追い抜いては、早くゴールして目的地で夕方にまた出会うことを繰り返しているフランス人男性のルドがいたので声をかけた。
「日本人の男性を知ってる?」と聞いてみた。
すると、「昨日同じ宿だったよ」とのこと。
ルドが私の話(日本人の女性も歩いているという話)をしたらしく、どこかで会えるかなぁと2人で話していたらしい。
ルドいわく、その日本人の〇〇さんはもう一つ向こうの村まで進んだようだ。
今日の昼間にそこのカフェでランチをしていたと言う。
面白いなぁ。
ということで、開いているところは村に一つくらいしかなさそうなそのカフェにイザベラと入った。サベスケレウというビールで乾杯。

チーズやケーキを注文しお喋りに花を咲かせた。
年齢を告白しあい、39歳と41歳という、お互いに妙齢なことが分かり、将来子供を産みたいかというテーマでじっくり話し込んでしまった。
旅や登山が好きなイザベラはまだまだ自由に動き回りたいし、子供を持つことに興味はなく、夫クリストファーと2人でこれからも生きていきたいのだけど、タイムリミットが迫ってきているから、あとで気持ちが変わった時に後悔しないか悩んでいると言う。
私も同じような気持ちだし、子供の頃から自分が親になる未来を描かずに生きてきた。その気持ちは今までずっと変わらなかったし、これからも多分変わらないと思うけどもう時間的にもタイムリミットだし、などと2人で拙い英語で語り合った。
時折、「あなたはまだまだ大丈夫だよ、時間がまだあるよ」と言うため、イザベラの方が歳下なのにおかしいなあと思いながら話をしていて、後半で「君はあと10年は迷っててもいいんだから」と言われた。
あれ?私41歳て言ったよね?と思って確認したら私の英語が下手すぎて「フォーティーワン」と「サーティワン」をイザベラが聞き間違えていたことが分かった。
THの発音は昔から苦手であるが、Fの発音も聞き間違えられるとは、まだまだだな私。
改めて「I'mフォーティーワン」と伝えると、イザベラはびっくりして「歳上!」となって笑った。


フランスと日本の結婚制度と少子化問題について、ろくに英語を話せない日本人とフランス人で語り合っていたら、何やらこちらの中年男性もすぐ横で熱弁していた。
ジャックとティエリだった。

絵になる2人。
彼ら曰く私とイザベラのお喋り姿も素敵だよとのこと。

ナスビナルの宿の4人が揃ったこのカフェ。
笑い合ったのも束の間、時計を見てびっくり。
19:20を過ぎていた。19時から宿のみんなで食べるディナーなのに。
同じ宿の4人がまだここにいる。
サベスケレウで酔っ払っていたのか、サマータイムの日の暮れなさで時間を忘れていたのか、びっくりである。
「本当に時間がないよ、私たちには!」とイザベラと私がお互いに言い合って、4人で急いで店を出て走った。
「タイムリミット超えちゃった!」と笑いながら走った。
酔っていて「もう走れないよ」と言う私に、「あなたはstill youngだよ」とイザベラが言うから、
気づいたら私は、フランスの最も美しい村の中心で「No〜!I'mフォーティーワン!!」と叫んでいた。

時間厳守ジャパニーズの名を汚してしまった申し訳なさを感じつつ、宿のオーナーに謝ると、「あなたは今年1人目の日本人ゲストだよ」と歓迎してもらえた。
「よっぽど飲んで楽しかったんだね」とニコニコしていた。
タイムリミットを超えてしまっても、その時が楽しければアリなのかもね、などと思いつつ。いや、ごはんの時間は厳守だけど。
楽しい晩ごはんの宴は25分遅れで始まったのであった。



フランスの巡礼路、ルピュイの道をひたすら歩いている旅の話はこちらにまとめています↓


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