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ナスビナルを忘れない 【フランス歩き旅 ルピュイの道⑥】

フランスのルピュイの道を歩いた旅のこと。

茄子嫌いの私がしっかり覚えられた数少ないフランスの地名、「ナスビナル」

私は、誰かが書いた旅行記を読む時、自分が行ったことのある場所だと地名も位置関係も頭にスッと浮かんで入り込みやすいのだが、行ったことのない場所や聞いたことのない地名だとまずはじめの土地のイメージがつかなくて、その後の文章が入ってこないことがよくある。行ったことはないけど興味がある時は地名をGoogleマップでチェックしたり、調べたりしてイメージを膨らませることもあるが、興味関心の偏りが激しいタイプなので旅の文章を読むのが好きなくせして流し読みしちゃうことも割とあるなあと勝手に反省している。
自分でも旅について書くことが増え、読んでる人をそれほど意識せずにただ自分のために書き残しておきたくて書くことが多いのだが、それだと不親切な旅行記にはなるのだなあとは感じている。普段はそれでいいんだけど、ルピュイの道のことは、なんとなく不親切にはならぬようお伝えしたいなぁという気持ちがある。なので、私のような茄子嫌いな方にも茄子好きな方にもナスビナルについてちょっと知ってもらおうと思う。

まず、ナスビナルとはフランスのロゼール県にある。
外国なのになんとか県っていう呼び名にいつも少し戸惑うが、地図の赤い場所がロゼール県。パリよりだいぶ下にあたる。

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そしてナスビナルっていう街はロゼール県の左端にある。多分だけどルピュイアンヴレから緑の矢印のように歩き進んできて辿り着く。

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そして西のスペインの方へ歩き進めていく訳だが、ナスビナルの次あたりから、世界遺産であり「フランスで最も美しい村」認定を受けた村が続々と待ち受けている。
この辺りはオーブラック地方とも言い、オーブラックと言えば、牛なのである。

以上、私のなけなしの知識とWikipediaさんのご協力によるナスビナルの説明終了。(こんなんでイメージつくかは謎だが、とりあえず世界地図から考えたい私のようなタイプには少し親切だったかと思われる。)

そんなナスビナルの宿はジット(Gite La Grappiere)で、イザベラと同じ部屋。

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宿に着いてシャワーを浴びて、明日も履かなくてはいけないので、雨で濡れた靴下やサポートタイツなどをヒーターで乾かすことにした。イザベラにあとで気が向いたらレストランで落ち合うゆるい約束をして、町ブラをしに出掛けた。

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と言っても、ナスビナルはとても小さい町で、素敵な教会を見たらもうこれといった見所はなく街ブラは終了し、教会のすぐ横のホテルの中のギフトショップに入って色々と物色していた。
すると、日本人が珍しかったらしく、色んな人たちに声をかけられ、1人の女性が「カミーノを歩いてるの?」と聞いてきたので、少し話すことになった。
その女性はフローレンスという名前で、ルピュイからスペインの端まで歩いたことがあるらしく、ガイドブックを一緒に立ち読みしながら、色々とこれから私が歩く予定のフランスの町のことを教えてくれた。
そして、フローレンスが晩ごはんを一緒に食べよう、と言ってくれて、あとでもしかしたらもう1人来るかもとお伝えし、一緒にディナーを食べることとなった。

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フローレンスがディナーを奢ってくれると言い、ここのホテルのレストランは、割といいお値段のお店で少し気が引けたが、「いいのいいの、ここのホテルに泊まってて昨日も食べて美味しいのを知ってるから、心配いらないよ。それに、これからあなたはまだまだ歩くんだし、1日くらい誰かから奢ってもらってもいいのよ」と勢いよく話して連れてこられたので甘えることにした。

ここはオーブラック地方と言って、オーブラック牛が有名なのよ、とフローレンスは言う。
なるほど。
ならばオーブラックの牛を食らおうではないか。気合いが入った。

まずはオーブラックの地元のビールで乾杯。

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フローレンスに、オーブラックの牛の肉と、この地方に来たからにはこれを食べないと通れないというブツを勧められて食べることになり、フローレンスチョイスのコース料理を食べることになった。

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なので、珍しくサラダも食べる羽目になる。オーブラックの牛と例のブツをめいいっぱい食べたいからサラダでお腹いっぱいになりたくないのだが、致し方ない。


そして。
きたよ、誰が例えたかは知らないがフランスの松阪牛こと、オーブラック牛の肉の塊の入ったシチュー。たまらないです。ガツンとした旨味。筋ばっていて固いかと思ったら、よく煮込んであってとろけました。

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からの、例のブツ!
オーブラック地方の有名郷土料理アリゴーーー!

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なんということだ。
のびるのびる。
じゃがいもとチーズとニンニクと生クリーム。
天才集団アリゴ。
フランス人てやつは、なんとすごい発想をお持ちなのか。こんな田舎の地方で、この料理が生まれたことに感動を覚える。
「アリゴ」で調べると、じゃがりこで簡単に作る方法が出てくるが、あのね、そんなもんじゃないからねアリゴ。
ラクレットともまた違う。
パンにも肉にも合うし、割とこってりしていて、オーブラック牛の付け合わせというか主役というか、チーズ料理というかイモ料理というか。本場でビヨヨヨヨーンってしてもらえて、たらふく食べられて、とにかく幸せすぎるディナーだった。



それから、コース料理なのでもちろんおフランスのスイーツもついてきて、最高の締めくくり。

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この地方産のフルーティーなビールも美味しかった。

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フローレンスは独身で、かつてはバリバリと教師の仕事をしていたがリタイアし、今は少しペースを落として教育の仕事をしているらしい。カミーノの道をまた歩くのではなく、気に入ったカミーノ上の地を時々また訪れてゆっくり旅しているの、と話してくれた。
私の持っている、フランス語で書かれたさっぱり分からないガイドブックに、フローレンスが過去に歩いた時に泊まって良かったジット(宿)や村に丸をつけてくれた。
「はるばる日本からフランスを知ろうと歩いてくれているのがとても嬉しい、ありがとう」って言われた。
いつもそうだ。
旅先で親切にしてくれた人は、私がぐずぐずしていてお礼を言う前に、先に必ずお礼を言ってくれる。
ありがとうはこっちのセリフなのに。
歩き始めて2日目の夜だったが、先にありがとうが言える人になりたいと思った。

この後、イザベラも合流して、フローレンスと別れ、イザベラとよなよなお喋りは続く素敵な夜だった。


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翌朝。
いつもは早めに起きて、低血圧ゆえに宿の朝ごはんは食べずに1人で出発し、目を覚ましながらお菓子やパンなどを食べながら歩くのが私のカミーノルーティンなのだが、飲み過ぎたせいと、この日は17kmしか歩かない予定だったこともあり、ゆっくりジットで朝ごはんを食べてから出発することにした。

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この日一緒の宿だったのはイザベラちゃんと、ジャックとティエリと私だけ。
ティエリがこの日も、私の分の今日泊まるジットの予約電話をしてくれた。
この3人には最後まで世話になったし、最後まで笑わせてもらったし、たくさんありがとうを言い合えた。
この日、ナスビナルの宿で、4人だけで朝ごはんを一緒に食べていなかったらそうなっていない気もするから、不思議な縁である。

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相変わらず天気は悪いが心は晴れている。
続き↓



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