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すごい日記

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すごい得のない日記
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#エッセイ

自己紹介をしてください

自分らしい時なんてものは存在しなくて、その時の気分が自分を形作っている。仕事をしているときも友達と騒いでいるときも親といるときの自分も自分でない。それじゃあ私はいったい誰で、なんなのか。

私は、あるときは真面目であるときは適当だ。人からは暴力的だと恐られ、博愛的過ぎると気がかりに思われることもある。とてもネガティブで常に最悪の状況を想定して動いている、と同時に楽観的でもあって人間はその叡智と善性

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どろっとしている

ぼんやりしている。すべての解像度が低くて、よくわからない。
手で払いのけたコバエがいつまでもそこにいる。
触れたものすべてがギトギトしていて、何度も服で拭う。拭った服がズタズタに腐り落ちていく。腐り落ちた服だった物体にコバエがたかる。
服に触れると崩れていくので私はバンザイのポーズで立っている。しかしよく見ると、私の両手はとうになかった。どうやら服と一緒に腐り落ちてしまったらしい。
よくよく見ると

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みっともない負け犬

「負け犬」と罵倒されます。反抗できるほどの気力もなければ現実的な勝ち筋もない。頷くしかない。血の混じった戦場の泥を舐める。唾液でベトついた手の甲。常に汚れたズボンの膝。目が上手く開かない。ラジオの音楽と雑音が内耳で踊る。人混みを歩けばみんなが勝手に道を空けてくれる。そこに存在しないものかのように扱われるよりかはいいかもしれない、なんて地に落ちた自己肯定感がかろうじて絞り出す。
「負け犬の遠吠え」と

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変わり者だけど悪魔じゃない

私はスリル、カフェイン、アドレナリンの中毒です。
同じことばかりしていると退屈でしょうがなく眠気と一緒に手足が痺れてくる。痺れは脳に達して、身に合わない電気マッサージを施されているようで苦痛だ。比喩でなく退屈で死にそうになる。
数をこなして上手くなる、重々承知しているが数をこなす前に退屈になってやめてしまう。たった一度で一人前になれたら良いのに。

私はかなりの偏食でもある。好きになった食べ物を何

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「やくしまるえつこはもともと相対性理論というバンドで歌っていたんだよ」

「やくしまるえつこはもともと相対性理論というバンドで歌っていたんだよ」

ということを伝えると「えっ、そうなんですか! 知らなかった~」ひと回り年下の青年が無邪気に笑う。僕は衝撃と愛想笑いがないまぜになって、微妙な表情で笑う。

 やくしまるえつこ氏率いるバンド『相対性理論』を知ったのは高校生の頃、確か2年生ぐらいだった気がする。あんまり覚えてない。ファーストコンタクトはサムネで使われている『シフォン主義』ではなくて『ハイファイ新書』だった。

 当時の僕は厨二病・オタ

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推し萌ゆ

推し萌ゆ

 アイドルを『推し』と呼ぶのに伴って、それらを応援する行為を『推し事』と呼ぶようになった。
熱狂的な支持者を指す言葉であった『おっかけ』はここ数年で死語になりつつある。スリーピースとかアベックみたいに。

 かつてはアイドルとファンの間には幾重もの壁があって、ファンはその壁を通してアイドルを見る。周知されている事実と知られざる秘密。事実に熱狂して、秘密をミステリアスな魅力として受け止めていた。
 

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我らは滅びゆく、おのおの1人にて

我らは滅びゆく、おのおの1人にて

 目の届く範囲にいる何者かが何かをやめると知ったときの寂寥感には未だ慣れない。肌の瑞々しさは年々失われていくのに心の肌年齢は歳を重ねる毎に潤いを増して、したたり落ちる水滴でプールができる。

 慣れる必要はないのかもしれない。毎日誰かが何かをスタートさせて終わらせている。何かの終わりに一々感情的になっていたら身が持たないよと、指摘を受ける。それでもきめ細かい心は器用になにかの終わりを感じ取り、絡め

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