どろっとしている

ぼんやりしている。すべての解像度が低くて、よくわからない。
手で払いのけたコバエがいつまでもそこにいる。
触れたものすべてがギトギトしていて、何度も服で拭う。拭った服がズタズタに腐り落ちていく。腐り落ちた服だった物体にコバエがたかる。
服に触れると崩れていくので私はバンザイのポーズで立っている。しかしよく見ると、私の両手はとうになかった。どうやら服と一緒に腐り落ちてしまったらしい。
よくよく見ると、腐り落ちた服だった物体は私の皮膚で、肉で、骨で、私の一部だった。
よくよくよくよく見ると、私の体は輪郭を失っていて、ギトギトした油に塗れたとても脆い体だった。
私は両手を失い、ただ油を放出する腐った彫刻だった。
手で払いのけることができずコバエがいつまでもそこにいる。
もしかすると、私の意識がぼんやりしていて風景の解像度が低いのは、私の頭がドロドロに腐っているからなのではないだろうか。
確かめるべく、限りなく腕に近い両肩の突起を持ち上げる。もちろん届くわけがなく、触れられるわけがなく、確かめられるわけがなく、両腕を失った不安定な体は身を投げるように地面へと落ちる。
私が辺り一面に広がった。
油の海に浮かんだ私の一部たちは重いものから沈んでいき、軽いものからコバエたちに持ち去られていく。
ああ、私の一部が。
散り散りになっていく私の一部を眺めていると眠たくなってきた。
それもそうだろう、私の意識をつかさどる頭もコバエたちに持ち去られてしまったのだから。
ぼんやり。解像度が低くてわからない。
眼前にコバエがいつまでもいた。

寿命が伸びます