マガジンのカバー画像

お気に入り

20
運営しているクリエイター

記事一覧

愛していても、幸せにはできない

愛していても、幸せにはできない

彼女が離婚した。

離婚した人に言うべき言葉かは悩んだが、おめでとうと伝えた。彼女は魅力的で尊敬すべき人だ。だからこそ、幸せになって欲しい。そして、パートナーは残念ながら彼女を幸せにはしてくれなかった。横半裸だと思いつつ僕はそんな旦那さんを嫌いだった。

彼女が離婚したと言うのは、僕にとって重大なことだ。好きな人が、独り身になったのだから、ザワザワと心の奥底で揺れるものがある。僕も人間であり、男で

もっとみる
堂々巡りで朝が来る

堂々巡りで朝が来る

かつて分不相応にもマネージメントが主業務だった。医者として、当時4年目。自分が思う理想の為には、必要な立ち位置だった。しかしながら、そうこうしている内に澱のように積もったのは、1人の医者としてスキルアップするべき時期なのに、ジジくさいことに注力して自分自身の5年後10年後にとってはマイナスじゃなかろうか、と言う想いだった。その気持ちを信じて、僕は一度所属を離れた。

同一の院内で立場が変わると言う

もっとみる
今、何を以て決断したか?

今、何を以て決断したか?

僕にとっての正しさはJusticeではない。僕にとって大切なのはFairである事か否かである。

神と言うのは偉大だ。絶対的な正しさの尺度であり、これがあれば人は迷わない。もしくは、迷ったとして切り抜ける為の道標になる。それが他人から見て再現性ある事なのかはさておき、それ自体が正しさを規定する因子なのだから、他者の存在は関係ないのだ。

しかしながら、絶対的正義の拠り所になる神を持たない僕には公平

もっとみる

やらなくてもいい仕事をしている。やらなきゃ誰かがやるのだろうと言われる。逆に言えば、そんな仕事しか僕らには無い。唯一無二になることは無いのだから、せめてこいつで良かったと思われる人材でありたい。

独善とポリシーの間

独善とポリシーの間

「僕は延命治療にしかならない治療は勧めません。」
自分のポリシーは明確に患者さんにもご家族にも伝えるように心掛けている。
何を希望するか、何を選択するか、それを決めるのは患者さん自身としても、その決断をするのに必要な情報を提供するのはプロである我々の務めだ。
その意味で、自分の基本スタンスはこうですよ、と伝えなければフェアではないと思う。
プロであっても僕らはバイアスに塗れている。
評価はバイアス

もっとみる
それでも救急医を辞められない

それでも救急医を辞められない

ここ暫く放射線科医として働いている。当然、お師匠さんの庇護の下、やれる事をやらせてもらっているに過ぎないが、少なくとも救急と言う立ち位置を離れて客観的に見る機会を得たように思う。

かつて自分の青春がそうだったように、救急から離れてしまえば過去の事となり、特別な感慨を持たないのかも知れないと危惧していた。あれだけ大切だと強く信じた事を無価値に思えてしまったら、それは悲しい事だろうなと臆病になった。

もっとみる
フラッシュバックが止まらない

フラッシュバックが止まらない

写真と裏腹、雨である。全国的な現象のようで、台風連発している以上は止むないのかも知れない。たまの受け持ち患者さんの少ない連休にて、少しゆっくりと行きたいが、学会の準備はギリギリ食い込んでおり、このままだと間に合わないかも…と言う状況である。まぁ、ラストスパートかければ意外に何とでもなるし少し大きな気持ちでいようかな。

さて、それはさておき。寝てる時など、ふとした瞬間思い出しては網膜に焼き付いて離

もっとみる

とある患者さんのこと。身体的苦痛は十分に取れたし、本人や家族ともラポールは形成できた。その上で治療も緩和もフルにやって、救命できなかった。医者になって初めて泣いた。その最期が僕の心に焼き付いて離れない。何か足りなかったのだが、足りないと分かるものが明らかではない。ああ、困ったな。

主役は俺じゃない

主役は俺じゃない

とある日、とある塞栓術。

治療は難しく、中長期的に考えて何をどうするべきか悩んだ。よくある、片方立てれば片方立たずの状況で悩みに悩んで選んだプランだった。結果、治療は想定以上に綺麗に決まった。

思わず込み上げる高揚感と満足感。どうだ!やってやったぞ!そう言いたくなる気持ちを自覚しながら患者さんの顔を見て、冷静な気持ちを取り戻す。治療が綺麗だとか綺麗じゃないとか、患者さんには関係ない。アウトカム

もっとみる

診断においても治療においても、フェアであることは重要だ。そうであれば、根本的に情報提供がフェアでなければならない。一方でリコメンデーション無しでの情報提供では丸投げである。難しくはあるが、バランスが大切。

最善を尽くせているのか?

最善を尽くせているのか?

ベストを尽くしていると思っている。だけど、ベストであると証明できない。だから、本当にベストを尽くせているのか悩んでいる。

どれだけ全力を尽くしても、患者さんに正しく情報が伝わっているのかは分からない。アウトカムを正しく担保できる保証が無いが、せめてプロセスをなぞって少しでもフェアでありたいと思う。

その意味で大切にしているのは臨床倫理の四分割表に則ったロジックだ。医学的妥当性・適応があるのか、

もっとみる
何処で引くか、何処で推すか?

何処で引くか、何処で推すか?

健全かはさておき、やるしかない、と言う時がある。

例えば、自分達しか医療者が居ない中で、処置せねば患者に生命の危機が生じる状況、他の施設へ転院するとか人を呼ぶと言う選択肢が無ければ、やり切るしかないのである。

一方、引くに引けない状況と言えども、やってはならないこともある。特に、逆立ちしてもやれないことを一か八かでやってみる、みたいなことは大抵良くない結果を招く。やったこと無いけど簡単な処置で

もっとみる

初めまして、こんにちは。ところで、貴方の家族さん、死にそうなんですよ。

そんな会話から入ることが多かった救急医としてのキャリアの後に、度々IVRで関わった患者さんが急性増悪して目の前に現れる経験が増えた。

人生の重ね合せが多い程、増悪時の対応が辛くなる

精進あるのみ。

時には昔の話をしようか

時には昔の話をしようか

学会へ向かう道の中、寝不足とか諸々で久々のJR。ちょうど去年の今時期も恵庭の大学へ教えに行ったり諸々していたことを思い出す。その前は、浜松と往復したり千葉と往復したり、人生における大切のことを札幌で経験したように思う。

医者になろうと思ったのは、いつだったろうか。多分中学生の頃だ。落ちこぼれで荒らくれてはいたけど、僕は文学とかそう言うものをやりたいと思っていた。数式で定量化される世界ではなく、測

もっとみる