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[詩集]ときめく


奇跡


二人は桜
自然に零れる花びら、いつか
僕たちが花や木としたら
僕たちが花や木としたら

偶然が言葉を寄せれば
毎日は音を流した
解けた傘は一途に踊り
密かに夜は別れを作りだす

永久とこしえから去っていく
命の中で目を瞑る
暮らしの土に水を与えて
椅子に腰かけていつも待っている
言葉はいらない
目を閉じたなら海
独りのクラゲが来たら
目を開いた、涙が跳ねる


長い思考に続く奇跡を
言葉の中にハマる奇跡を
知らない奇跡を知る奇跡を
通り抜けていくだろう

長い思考に続く奇跡を
言葉の中にハマる奇跡を
知らない奇跡を知る奇跡を
通り抜けていくだろう


二人は桜
自然に零れる花びら、いつか
僕たちが花や木としたら
僕たちが花や木としたら



詩集シリーズの第15弾となります!

今回は、"ときめく" という普段あまり使わないワードをタイトルに付けました

そのタイトル通り、収録されている詞は、"恋"をテーマにした物や、"未知との遭遇"をテーマにした物など、新たな出会いに "ときめく" ような、そのような詩集になっているように思います

新作も4本収録しています
気に入っていただけたらうれしいです^ ^
ゆっくりお楽しみください!




新世界


頭上高くに停まる鳥は落ちるように街を下り
膨らむ風に羽根をあずけ 
鳴き声を一つ残して去った
魚のように流れる雲に、雨の予報は大外れ
見え隠れする日射しは熱く、
アスファルトをただ照らす

ぬるく漂う空気を取り込み、それぞれが街に踊る
空に昇るどこかの煙と、子供たちは帰り道
遠くの遠く望みを託して、
僕も出ていくよさよならと
あの鳥の後に付くように、
今出ていくよさよならと

枯れていく季節の花に浮かび上がる思い出や
昔のことはまるで川のように流れて消えていった
雲は旅人 そこで誰の手も引くように
連れてってくれる新世界へ


遠くに望みを託して今
鞄一つで世界を乗りこなす
時には変わる道 新世界の旅人か
ぬるく漂う空気と人と人との隙間をすり抜けて
あの鳥の上を走る雲 その後を続く旅人か

頭上高くに停まる鳥はまた落ちるように街を下り
膨らむ風の一粒までも含めて、
海の方へと羽ばたく
遠くの遠く望みを託した
一握りの新世界

目を瞑って
溢れ溢れる無意味の束を集め光にする


冬の心


空の星を指で繋いでいた
自分だけの星座創っていた
星座はやがて夜の向こうへ消えていった
消えていった光が優し過ぎるんだ
強く柔らかく包み込むんだ
芝に寝転ぶ僕には壁が出来ているのに

この時間だけ、時間だけ味方でいてくれればいい
分からなくなっていく冬の心、誤魔化さないでくれ
自分が分からなくなっている
冬の心、誤魔化さないでくれ
誤魔化さないでくれ

空の星を指で繋いでいた
自分だけの星座創っていた
星座はやがて夜の向こうへ消えていった
消えていった光が優し過ぎるんだ
強く儚く包み込むんだ
芝に寝転ぶ僕には壁が出来ているのに

未来が 未来が
未来が 未来が
未来が 未来が
未来が 未来が
未来が 未来が
未来が 未来が
未来が 未来が
未来が 未来が

冬の心誤魔化さないでくれ
誤魔化さないでくれ


ストレンジャー


それはまるで手に掬えば滴り落ちていくような
零れていくもの一つ一つ、あの人のおもかげ
カーブミラーに反射する、
私たちは確かに居たんだ
止まった時計の影追って、
どこか繰り出してみるんだ

点と点を繋ぎ合わせた記憶だらけの水深は
深ければ深いほど
知らない、
知らない、
知らない、
知らないことが多くなるのは分かっていたけど
あの人のことも知らない誰かになっていくんだと


忘れてしまったらそれでいい
布のような朝を纏ってもう忘れたい
知らないことが増えていくのは当たり前なんて強がり
手を振るのは、塗りたくった幻

いやいや本当は全部知ってる
そう言ってみるだけみるだけ
何か変わることを期待している
夜の風淡く飲まれて私は


ガードレールを眺めてる、いつもの私の車窓風景
止まった時計の針がチクタク、
時間はここから
遠のいて何十年…何十一年…
チクタク続いていくんだ
当たり前だけど当たり前じゃない日々を


思い出したならそれでいい
布のような朝を置いて浮かんでいく
知らないことも知ってることになるなんてミステリー
手を振るのは、多分そうだね

いやいや本当は全部戻りたい
そう思っているだけいるだけ
何か進んでいくことを期待している
夜の風淡く飲まれた呼吸は


いやいや本当は全部知ってる
そう言ってみるだけみるだけ
何か変わることを期待している
夜の風淡く飲まれて私は


砂上の楼閣


砂の惑星 どこからはじめる
憂鬱と投げたルアーで
何を見るの 何を知りたいの
高層ビルの幻ならば
湧き出る風のすみかから
砂の惑星 どこからはじめる
機械じみた夜の園で
何が居るの 心踊りたいの
グラフィックのハートならば
きらめくログのいただきから


ほら

ここからは砂上の楼閣
陽の光 砂に恋をする
そう言ってみて砂上の楼閣
永遠すら掌に
掴んだようでどこにもない
砂にもまるで跡はなく
昼間が下ろす幕間に
影だけを見せる楼閣


砂の惑星 どこからはじめる
憂鬱を描くペンシル
ひそむ心の何を描いてみたいの
メトロポリスは夢を見せる
川の履歴のずっと先から、


ほら

ここからは砂上の楼閣
川底の石に手を伸ばす
そう言い切れば
たちまち砂の集まりから音だけの
汽車が聞こえたようで
踏切のような場所からひたすら待ってみる
昼間を過ぎた声がする
影だけを見せる人の


聞こえたようでここにいない
砂にも足跡はなく
昼間を過ぎる
空想が膨らむほど浮かぶ楼閣



暁闇-2


風声鶴唳ふうせいかくれいのその刹那が 沈んでいく重力と
残る感覚に沿って 招く光に蠢いていく
思い出せない言葉 
電燈 
さざめく雑踏の方へ
ひた走るクラゲに見えたんだ

立ち止まる僕は影 心は絡繰り屋敷のように
感情の仕掛が次から次へと
立ち止まる僕は影 心は嵐の夜のように
表情の木々を荒々しく

その暁闇の通りを今一度
粒子ほどの憶えを読み返す
また忘れるほどの遠雷から来る
雨に部屋から抜け出そう
冷えた風に悴んで
砂上の楼閣、改めて
忘れるほどの春を抱き寄せて

星の降る日を思い出すほど瞳の奥透き通る
空気に触れるトンネルまで

その暁闇の通りを今一度
粒子ほどの部屋を飛び出せば
忘れるほどの雷から来る
雨は幾重の雲を招く
冷えた夜に蹲る
理想のほむら、暖めて
見惚れるほどの空の月を輝かせ

風声鶴唳のその刹那が 浮き沈みの重力と
少しの感覚を残し 知らせの中を蠢いていく
思い出せない言葉 
風来 
さざめく海の在り処さえ
ひた走るクラゲに見えたんだ


あの子


忙しくなる景色や飾る嘘で伸びる影
部屋に差し込む光の線
埃だらけの中の僕
心の淵をなぞって記憶の中の人の背を見つけた
会話をしたかったけど、言葉が浮かばない
何も返せない

ぬるい風と雨降りしきる駅
これからのことと希望 傘を差して待っていた
あなたは来ないから ふいに傾く雨よ
それが最後だ


忙しくなくなる景色に歩く街の影と飾る笑み
部屋から消えてく光の線
埃を掃いた僕はまた
夕方の淵をなぞって記憶の中の背を見つけた
もう帰らない日を

ぬるい風と夏降りしきる街
これからの希望をただ まっすぐにただ眺めていた
ふいに傾く夏の跡を今でも思い出す
それが最後だ


微かな戸惑い 少しうれ
下る帷に涙の味
何年後かのあなたの背が見えたなら

微かな戸惑い 少し愁い
下る帷に涙の味
何年後かのあなたの背が見えたなら


抱擁


鼠色の影、道端から
かもめ、餌を食む海へ
停留所の椅子の熱から
この町ひとりぼっちの日々へ
大人になって思い出も失っていくものだし
剥がれるような幻みたい夏の
紛れていく枯草と
青と横断歩道を抱擁する

夕方に耳を震わす音が聴こえてきたんだ
すぅっと生活の川と重なる
夏の風は暖かく
すぅっと生活の川に囁く
風の知らせで会えるなら灯の下に戻りたい
次の雨までに

鼠色の影、道端から
鴎、餌を食む海へ
陽の光 反射する水面、波が代わる瞬間を

砂に立って聳てると音が聴こえてきたんだ
剥がれるような幻みたい夏の夜を抱擁する
眠る鳥の木蔭からこの町でひとり咲いた芽の声で
また会えるなら君の街へ帰りたい
風の知らせで会えるならあの灯の下に戻りたい

思い出も失っていくものだし
空の唸り声と共に
起きるその時まで夜に眠ろう

ただ揺れる枯草の青



夏の幽霊


手を引いたのはきっと透明なおもかげ
それは夏の幻 走る幻
どうしても夕暮れを見たいんだって思ってた
肩をゆらし 心躍る日々の人たち

夢の外側でまた会えたらさ
心に仕舞う微かな光話せるかな
灯りが幾つ数えてみて 感情を映す川にほら
目に見える 聞こえてくる それ以上の夜にまで

冷えた夏が指先に希望を込めて描きだす
寄り道の模写や帰り道の切り抜きを
言葉にすればどれだけ誰かに伝えられるか
瞳の中で歳を取るゆめうつつの色々を

僕の知らないあなたまで話せたなら
掌で言葉を掴み、時空を越えたら
覚えていてベンチの記憶
きっと分かり合えるはず、冷夏
その幽霊


形に残らないものが確かにあることを
比喩のような雲がそっと耳を打つ
パっと輝く花火もまた
あなたにとってのワンシーン
スっと消える夜に今
佇む僕のワンシーン


冷えた夏が指先に希望を込めて走りだす
時には雨の一粒を会話に含めた切り抜きを
言葉にすればどれだけ誰かに伝えられるか
瞳の中で歳を取るゆめとうつつの間から

僕の知らないあなたまで伝えられたら
掌で水を掴むような夏を越えたら
覚えているベンチに座り
隣同士になれるから、冷夏
その幽霊


手を引いたのはきっと透明なおもかげ
それは多分、幻 答えの幻
どうしても夕暮れを見たいんだって思ってた
前を見つめ 漕いだ車輪が繋ぐあなたと


海を見ていた


海を見ていた日 その波打ち際で
比喩じゃなく 嘘でもなく 座り込んだ君のこと 
髪をゆらしてる飄飄と 
風に声を吹き込んでいた
肩をゆらしてる桃源郷 
足下の砂を読み込んでいた

海を見ていた日 その小さな窓で
寄せては返す波の夢 眺めていた君のこと
この部屋から飛び立つものは 
鳥の群れを紡いだ言葉
海 空 その紙一重まで 
星の無数を紡いだ言葉


あの子は放課後 寂しそうに 石を蹴っていた 楽しそうに
陽射しはふいに 頬を色づく 道の灯りを 両手に握る
何も言わない それだけなのに 何よりもほら 近くなれるみたい
陽射しの鏡 赤い水面に 足が浸かる 二人きりの海


大人になるんだって 気にしてみれば、足下に見る
雲模様に込める理想 誰も知らないほどの理想
君と歩いていけばほら 明日にもなれる想像が
膨らんでいくんだよ きっと今も

海を見ていた 波打ち際のずっと先まで指を差して
耳を澄ます空気にいつも子どもの頃が見えるよう


あの子は放課後 楽しそうに 頬を色づく 道の灯りが
何よりもほら近くなれる 陽射しの鏡に二人きり

一人きりの帰り道の空いた分だけ風は包み込む
寄せては返す波の夢 きっと今も海を見ている



彗星


言葉にそばだてる耳がすらりページを現在に
言いたいことだって沢山あるから
石が捩じれた言葉のように佇む頃に
言わないようにしていたこともあるなら

彗星降る夜の大地でまた会いましょう
彗星降る夜の地でまた会いましょう


陽射しを避けて影を踏み歩く
一握のいかずちにハッと顔を向けた日のことも
躍る夜に移る思い出

言いたいことだけ持ち寄って
路地のさざめく夢の轍を追って
大地に抜け出せば


彗星降る夜の大地でまた会いましょう
彗星降る夜の地でまた会いましょう
次の星を見つければ
見えない花も笑うでしょう

彗星降る夜の大地でまた会いましょう
彗星降る夜の地でまた会いましょう
見えない花を描き写したら
知らない朝を知るでしょう




閲覧ありがとうございます^ ^

今回も様々なテーマの集まった詩集になったと思います

また読み進めていく内に、詞の中の季節感が、冬→春→夏 と移り変わっていくようにも見えました

今回の4本の新作の内、「冬の心」「あの子」「抱擁」は、3年近く前の詞を原型に、修正したものになります

また「暁闇-2」は、以前に制作した「暁闇」という詞の続編にあたるので、このタイトルになっています


今日で3月も終わりますね
去年の今日は、こちらの詩集を投稿していました



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