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TRIPS協定31条の2 特許権者の許諾を得ていない他の使用

 TRIPS協定31条の具体例が、悪性感染病の特効薬に関する特許の強制実施権(加盟国の国内向け)です。強制実施権が許諾された場合、適切なライセンス料の支払義務が生じます。

 この強制実施権は、医薬品を生産・輸入できる国に対して必要な範囲を超えては許諾されません(TRIPS協定31条の2(1))。

・TRIPS協定31条の2

(1) 前条(f)に規定する輸出加盟国の義務は,この協定の附属書の(2)に定める条件に従い,医薬品を生産し,及びそれを輸入する資格を有する加盟国に輸出するために必要な範囲において当該輸出加盟国が与える強制実施許諾については,適用しない。
(2) この条及びこの協定の附属書に規定する制度の下で輸出加盟国が強制実施許諾を与える場合には,当該輸出加盟国において許諾されている使用が輸入する資格を有する加盟国にとって有する経済的価値を考慮して,当該輸出加盟国において前条(h)の規定に基づく適当な報酬が支払われる。輸入する資格を有する加盟国において同一の医薬品について強制実施許諾を与える場合には,同条(h)に規定する当該輸入する資格を有する加盟国の義務は,輸出加盟国において前段の規定に従って報酬が支払われる当該医薬品については,適用しない。
(3) 医薬品の購買力を高め,及びその現地生産を促進するために規模の経済を活用することを目的として,開発途上国又は後発開発途上国である世界貿易機関の加盟国が,1994年のガット第24条及び異なるかつ一層有利な待遇,相互主義及び開発途上国の一層完全な参加に関する1979年11月28日付けの決定(文書番号L/4903)に規定する地域貿易協定であって,その締約国の少なくとも半数が国際連合の後発開発途上国の一覧表に現に記載されている国から成るものの締約国である場合には,前条(f)に規定する当該加盟国の義務は,当該加盟国における強制実施許諾に基づいて生産し,又は輸入した医薬品を,関係する健康に関する問題を共有する当該地域貿易協定の他の開発途上締約国又は後発開発途上締約国の市場に輸出することができるようにするために必要な範囲においては,適用しない。このことは,関係する特許権の属地的な性格に影響を及ぼすものではないと了解する。
(4) 加盟国は,この条及びこの協定の附属書の規定に従ってとられる措置に対し,1994年のガット第23条(1)(b)及び(c)の規定に基づいて異議を申し立ててはならない。
(5) この条及びこの協定の附属書の規定は,加盟国がこの協定の規定(前条(f)及び(h)の規定を除く。)に基づいて有する権利,義務及び柔軟性(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定及び公衆の健康に関する宣言(文書番号WT/MIN(01)/DEC/2)において再確認されたものを含む。)並びにそれらの解釈に影響を及ぼすものではない。この条及びこの協定の附属書の規定は,強制実施許諾に基づいて生産される医薬品を前条(f)の規定に基づいて輸出することができる範囲に影響を及ぼすものではない。

●参考文献
・荒木好文(著)『図解TRIPS協定』(発明協会, 2001)

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