不競法26条 公判期日外の証人尋問等

 秘匿決定がなされると、証人等の尋問や被告人の供述を求める手続において、証人等の尋問が適切に行えなくなることも考えられます。これは、証人等が、誤って、営業秘密構成情報特定事項に言及することも考えられるからです。

 このため、秘匿決定をした場合において、裁判所は、所定の要件のもと、公判期日外に証人等の尋問又は被告人質問をすることができることとしています。

 なお、刑事訴訟手続きにおける公判期日外の証人尋問は、刑事訴訟法158条、281条により認められています。これらの規定は、証人の重要性や年齢等、証人の属性を考慮して、公開の法廷では尋問を適正になし得ない状況を踏まえ、証人尋問等を適切に行うために設けられています。

 一方、不競法26条の公判期日外の証人尋問等は、営業秘密の内容が公開の法廷で明らかにされることのないよう営業秘密を保護しようとするものです。不競法26条は、刑事訴訟法158条、281条とは、(i)趣旨や目的が異なること、(ii)考慮すべき要素も異なること、から、新たに設けられた規定です。


・不競法26条

(公判期日外の証人尋問等)
第二十六条 裁判所は、秘匿決定をした場合において、証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人を尋問するとき、又は被告人が任意に供述をするときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人の尋問若しくは供述又は被告人に対する供述を求める行為若しくは被告人の供述が営業秘密構成情報特定事項にわたり、かつ、これが公開の法廷で明らかにされることにより当該営業秘密に基づく被害者、被告人その他の者の事業活動に著しい支障を生ずるおそれがあり、これを防止するためやむを得ないと認めるときは、公判期日外において当該尋問又は刑事訴訟法第三百十一条第二項及び第三項に規定する被告人の供述を求める手続をすることができる。
2 刑事訴訟法第百五十七条第一項及び第二項、第百五十八条第二項及び第三項、第百五十九条第一項、第二百七十三条第二項、第二百七十四条並びに第三百三条の規定は、前項の規定による被告人の供述を求める手続について準用する。この場合において、同法第百五十七条第一項、第百五十八条第三項及び第百五十九条第一項中「被告人又は弁護人」とあるのは「弁護人、共同被告人又はその弁護人」と、同法第百五十八条第二項中「被告人及び弁護人」とあるのは「弁護人、共同被告人及びその弁護人」と、同法第二百七十三条第二項中「公判期日」とあるのは「不正競争防止法第二十六条第一項の規定による被告人の供述を求める手続の期日」と、同法第二百七十四条中「公判期日」とあるのは「不正競争防止法第二十六条第一項の規定による被告人の供述を求める手続の日時及び場所」と、同法第三百三条中「証人その他の者の尋問、検証、押収及び捜索の結果を記載した書面並びに押収した物」とあるのは「不正競争防止法第二十六条第一項の規定による被告人の供述を求める手続の結果を記載した書面」と、「証拠書類又は証拠物」とあるのは「証拠書類」と読み替えるものとする。


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