見出し画像

商標法53条の2 不正使用取消審判

 本条の不正使用取消審判は、他のパリ同盟国で商標に関する権利を有する者の保護強化を目的とするものです。

 日本と外国は国が違うので、日本以外のパリ同盟国等で商標に関する権利(日本での商標権に相当する権利)が成立している登録商標等について、日本で商標権が取得されることがあります。ここで、日本以外のパリ同盟国等での商標権者と、日本での商標権者が同じか同等(グループ会社等)であれば、問題は起きません。しかし、他人に日本での商標権を確保される場合もあり得ます
 本条は、このような場合において、その他人に確保された商標権を、事後的に取り消すための審判を規定しています。

 本条での請求人は、パリ同盟国、WTO加盟国若しくは商標法条約締約国の商標に関する権利(商標権に相当する権利)を有する者です。
なお、本条でのパリ条約同盟国等には日本は含まれません。これは、日本では、商標権以外に商標権に相当する権利はなく、商標権については商標法4条1項11号で対処すれば良いからです。

 また、本条の不正使用取消審判で取り消すための前提として、
(i)日本での登録商標が、パリ同盟国等の権利に係る商標と同一類似範囲に含まれること、
(ii)日本での登録商標に係る出願が正当理由なく(不当に)なされたこと、
(iii)日本での登録商標に係る出願が、代理人、代表者又は出願日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたこと、が必要です。

 日本での商標登録出願における正当理由とは、パリ同盟国等の権利者が、商標権の放棄を行ったり、権利取得の意思がないことを明示している場合や、承諾がある場合です。

 また、代理人とは、自然人、法人等の商標所有者から何らかの代理権を授与された者であり、代表者とは、法人である商標所有者の代表者です。また、本条では、出願日前1年以内に代理人等であった者と規定することにより、パリ条約6条の7より手厚い保護を与えています


・商標法53条の2

第五十三条の二 登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であつて当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするものであり、かつ、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であつた者によつてされたものであるときは、その商標に関する権利を有する者は、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。

・パリ条約6条の7

第6条の7 代理人,代表者による商標の登録・使用の規制
(1) 同盟国において商標に係る権利を有する者の代理人又は代表者が,その商標に係る権利を有する者の許諾を得ないで,1又は2以上の同盟国においてその商標について自己の名義による登録の出願をした場合には,その商標に係る権利を有する者は,登録異議の申立てをし,又は登録を無効とすること若しくは,その国の法令が認めるときは,登録を自己に移転することを請求することができる。ただし,その代理人又は代表者がその行為につきそれが正当であることを明らかにしたときは,この限りでない。
(2) 商標に係る権利を有する者は,(1)の規定に従うことを条件として,その許諾を得ないでその代理人又は代表者が商標を使用することを阻止する権利を有する。
(3) 商標に係る権利を有する者がこの条に定める権利を行使することができる相当の期間は,国内法令で定めることができる。


#弁理士 #弁理士試験 #弁理士試験の受験勉強 #知財 #知財法 #商標法
#毎日note #コラム #毎日更新 #note #毎日投稿 #note毎日更新 #毎日 #最近の学び #毎日更新倶楽部 #考察コラム #クリエイティブ #士業

この記事が参加している募集

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?