特許法187条 特許表示

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 店舗で販売されている商品や、商品の箱、商品のパッケージに「特許製品」「特許〇〇号」という記載がなされていることがあります。この種の表示を「特許表示」といいます。

 少し細かく見ていくと、特許出願した技術に関する製品に付ける表示としては、「特許出願中」「特許出願済」「特許製品」「特許技術」「特許〇〇号」とかが多いです。このうち、特許表示は、「特許製品」「特許技術」「特許〇〇号」になります。

 特許法187条は、特許製品「のみ」特許表示をしてよいことにして、虚偽の特許表示を禁止したものです。なお、虚偽の特許表示は、誤認惹起防止のために特許法以外でも、不正競争防止法で規制されています。具体的には、特許発明の非実施品、特許権や専用実施権の侵害品、それらの広告に特許表示をした場合や、特許表示と誤認する表示をした場合には、虚偽表示になります(特許法188条)。

 特許法187条は努力義務なので、日本では、特許表示をしなかった場合でも、法律上不利となることはありません(損害賠償請求など)。

 しかし、米国では、特許表示をしなかった場合には、過去の損害行為に対する損害賠償請求が制限されるケースがあります(US特許法287条(a))。具体的には、物の特許に関しては、特許製品に特許表示をしていなかった場合には、侵害通知後の侵害行為に対する損害賠償請求しか認められません(US特許法287条(a))。

 面倒なのは、米国での特許表示は、特許権の範囲に含まれる「全ての製品」(ライセンス製品含む)に行う必要がある点です。つまり、一部の製品「のみ」に特許表示をしていても、特許表示をしていない製品がある場合には、損害賠償請求でのペナルティがあります。

 ここまで書くと、製品の箱には特許番号の記載で埋め尽くされるのではないか、と想像されるかもしれません。また、新たな特許権が成立したり、特許権が消滅した場合の処置も面倒です。このような問題に対処するため、米国では、HP等に具体的な特許表示内容をすることが認められています(いわゆるバーチャル特許表示)。具体的には、①特許製品には「patent」「pat.」の文字とHP等のURLとを記載し、②そのURLで表示されるページに、特許製品と特許番号の一覧を掲載する、という手法です(US特許法287条(a))。

 バーチャル特許表示を使うことで、多くの特許がひとつの製品に使われている場合でも、特許表示が簡単になりますし、新規特許権が成立した場合の特許番号の追加や削除も簡単になります。

 「知財系ライトニングトーク #15 拡張オンライン版 2022 冬」向けに「特許表示のデメリット」という記事を投稿しました。この記事では、特許表示をしたことが逆効果になってしまったケースを紹介しています。

・特許法187条 特許表示

(特許表示)
第百八十七条 特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、経済産業省令で定めるところにより、物の特許発明におけるその物若しくは物を生産する方法の特許発明におけるその方法により生産した物(以下「特許に係る物」という。)又はその物の包装にその物又は方法の発明が特許に係る旨の表示(以下「特許表示」という。)を附するように努めなければならない。

・特許法188条 虚偽表示の禁止

(虚偽表示の禁止)
第百八十八条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 特許に係る物以外の物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為
二 特許に係る物以外の物であつて、その物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付したものの譲渡等又は譲渡等のための展示をする行為
三 特許に係る物以外の物の生産若しくは使用をさせるため、又は譲渡等をするため、広告にその物の発明が特許に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為
四 方法の特許発明におけるその方法以外の方法を使用させるため、又は譲渡し若しくは貸し渡すため、広告にその方法の発明が特許に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為

●過去の記事
(~22/01/24)特許法187条 特許表示

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