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意匠法10条 関連意匠☆

 本条は、意匠法9条の例外を規定しています。本条は、意匠法独自の規定です(特許法などには対応する規定はありません)。

1.意匠法10条1項

 ある意匠(本意匠)に類似した意匠(関連意匠)は、原則として、意9条の規定により、登録されません。しかし、本条の関連意匠制度を利用することで、ある意匠(本意匠)に類似した意匠(関連意匠)についても登録を受けることができます。

 関連意匠制度は、(i)デザイン戦略がより機動化・多様化しつつあったことや、(ii)自社製品に共通の一貫したデザイン・コンセプトを用いることで独自の世界観を築き上げ、製品の付加価値を高める流れに対応するために設けられています。

 実務上は、①1個の基礎意匠の周りを関連意匠で埋めて権利を強化したり、②時間とともに変わるデザインを意匠権で保護するために用いられています。このため、関連意匠の出願をした後、その関連意匠が基礎意匠と非類似と判断された場合には権利化しない(無駄な意匠を公開しない)という実務もあるようです。

2.意匠法10条2項

 関連意匠については、本意匠との関係において、意3条1項、2項の適用除外とされています(意10条2項)。これは、関連意匠の出願時には本意匠が意匠公報発行や自己実施などにより公知となっていることが考えられるためです。

3.意匠法10条3項

 関連意匠が出願人の秘密意匠(先願)と類似する場合、関連意匠が、秘密意匠(先願)の公報発行から秘密解除までの期間に出願されると、意3条の2により拒絶されてしまいます。このため、関連意匠についての3条の2ただし書の適用は、秘密解除時に発行される意匠公報の発行日前まで除外することにしています(意10条3項)。

4.意匠法10条4項

 本項は、関連意匠の関連意匠を認める規定です。
 具体的には、関連意匠にのみ類似する意匠は、当該関連意匠を本意匠とみなして一項の規定により関連意匠として登録することができます。また、当該関連意匠に連鎖する段階的な関連意匠にのみ類似する意匠についても、当該意匠が類似する関連意匠を本意匠とみなして同様に登録を受けることができます。以前は、類似の無限連鎖を防止するため、関連意匠にのみ類似する意匠は、登録を受けられませんでした。

 具体的な関連意匠の無限連鎖(関連意匠の関連意匠)については、マツダさんのプレゼン資料をご確認ください。この資料の車両デザインの連鎖が、分かりやすいと思います。

5.意匠法10条5項

 本項は、意10条4項における関連意匠の関連意匠の出願時期を規定しています。意10条4項における関連意匠の関連意匠の出願時期を、本意匠とみなされた関連意匠の出願から10年までとしてしまうと、関連意匠の連鎖によって一つの意匠群が永続的に保護されてしまいます。このため、意10条4項における関連意匠の関連意匠の出願時期を、最初に選択した本意匠の出願から10年までとしています。

6.意匠法10条6項

 本項は、専用用実施権を設定した本意匠に対する、関連意匠は登録を受けることができないものとした規定です。
 なお、(i)本意匠だけに通常実施権を設定することや、(ii)本意匠と関連意匠に対して同時に専用実施権を設定することは問題ありません。

7.意匠法10条7項

 本項は、本意匠に複数の関連意匠が登録された場合、関連意匠相互が類似していることも考えられます。このような場合、関連意匠と関連意匠の間にも9条1項、2項の規定が適用されません。

8.意匠法10条8項

 基礎意匠の関連意匠及び当該関連意匠に連鎖する段階的な関連意匠が複数登録される場合がありります(特に無限連鎖した場合)。これらの関連意匠同士について意3条1項、2項の例外規定を設けています。

・意匠法10条

(関連意匠)
第十条 意匠登録出願人は、自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(以下「本意匠」という。)に類似する意匠(以下「関連意匠」という。)については、当該関連意匠の意匠登録出願の日(第十五条第一項において準用する特許法第四十三条第一項又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張を伴う意匠登録出願にあつては、最初の出願若しくは千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日。以下この項において同じ。)がその本意匠の意匠登録出願の日以後であつて、当該本意匠の意匠登録出願の日から十年を経過する日前である場合に限り、第九条第一項又は第二項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができる。ただし、当該関連意匠の意匠権の設定の登録の際に、その本意匠の意匠権が第四十四条第四項の規定により消滅しているとき、無効にすべき旨の審決が確定しているとき、又は放棄されているときは、この限りでない。
2 第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた自己の意匠のうち前項の規定により意匠登録を受けようとする意匠の本意匠と同一又は類似のものは、当該意匠登録を受けようとする意匠についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。
3 第一項の規定により意匠登録を受けようとする意匠についての第三条の二ただし書の規定の適用については、同条ただし書中「同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)」とあるのは、「当該先の意匠登録出願について第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求したときは、第二十条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものに限る。)」とする。
4 第一項の規定により意匠登録を受ける関連意匠にのみ類似する意匠については、当該関連意匠を本意匠とみなして、同項の規定により意匠登録を受けることができるものとする。当該意匠登録を受けることができるものとされた関連意匠にのみ類似する意匠及び当該関連意匠に連鎖する段階的な関連意匠にのみ類似する意匠についても、同様とする。
5 前項の場合における第一項の規定の適用については、同項中「当該本意匠」とあるのは、「当該関連意匠に係る最初に選択した一の意匠」とする。
6 本意匠の意匠権について専用実施権が設定されているときは、その本意匠に係る関連意匠については、第一項及び第四項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
7 関連意匠の意匠登録出願があつた場合において、当該意匠登録出願が基礎意匠(当該関連意匠に係る最初に選択した一の意匠をいう。以下同じ。)に係る関連意匠(当該基礎意匠の関連意匠及び当該関連意匠に連鎖する段階的な関連意匠をいう。以下同じ。)にそれぞれ該当する二以上の意匠の意匠登録出願であつたときは、これらの意匠については、第九条第一項又は第二項の規定は、適用しない。
8 前項に規定する場合において、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた自己の意匠のうち当該基礎意匠に係る関連意匠(当該関連意匠の意匠登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、若しくは当該関連意匠の意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき、又は当該関連意匠の意匠権が第四十四条第四項の規定により消滅したとき、無効にすべき旨の審決が確定したとき、若しくは放棄されたときを除く。)と同一又は類似のものは、第一項の規定により意匠登録を受けようとする意匠についての第三条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。

●過去記事
(~'22/02/05)意匠法10条 関連意匠

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