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アーティスト/田舎暮らしの日々

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アーティストが田舎で過ごす日々をnoteに綴ります。 アーティスト/演出家/メダカとウーパールーパー飼い/田舎暮し 紅茶と宝塚歌劇、ピンク色と紫色が好きな人間
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#観客論

街中のビルの屋上、雲を見ながら天気の話をする夕暮れ

街中のビルの屋上、雲を見ながら天気の話をする夕暮れ

「ほら、あそこに黒い雲が見えるやろ?あれが1時間ぐらいしたらここに来て、雨を降らすんや」

タバコを吸いながら、おじさんは言った。時刻は夕方の18時過ぎ、日が暮れる時間も徐々に早くなり、18時には空がオレンジ色に変わっていく。
私はそこで育てているハーブの剪定をしていた。大きめのプランターには、そろそろ花を咲かせそうなバジルとモリモリの日日草。両者は私が植えた訳ではないが、昨年の種が残っていたのだ

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キラキラ世界の休日

キラキラ世界の休日

5月に展示が終わったものの、その後も何だかんだ忙しく過ごしていた。久しぶりに休みの日らしい日が出来たのも、元々用事が入っていたからだ。

その日の予定は実家の近くであった為、前の日の晩から実家に戻っていた。両親との夕食。父親から父方の祖父に顔を見せに行くように言われる。前々から祖父が心臓を悪くして病院に入院した話を父から聞いていた。医者からは、持って1年、と言われたことも関係しているのだろう。次の

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美味しいお味噌汁を作るということ

美味しいお味噌汁を作るということ

1人暮らしを始めてから、味噌はもっぱらチューブタイプの味噌を使っていた。スプーンも使わずに、サクッと味噌汁が作れる分には重宝していたし、何も不満もなかった。ところが、少し前に土井善晴さんの『一汁一菜でよいという提案』を読んだことをきっかけに、その考えが一転した。

お料理は、どこまでも簡略化しようと思えば出来るものでもある。しかし、その一方で一つ一つを分解して見ていくと、それぞれに深い世界が広がっ

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Respect for others

Respect for others

最近、副菜の万能性に気付き、専ら副菜系のおかずをよく作るようになった。そんな時、ふと葉物の野菜が食べたくなり、スーパーに向かう。昨年の秋頃から、隣のおばあちゃんや周りの人から野菜を分けてもらう機会が多く、私はスーパーで野菜を買うことが自体が久しぶりだった。
スーパーで並んでいる野菜を眺める。春先は冬野菜が終わって、夏野菜の準備に入る谷間の時期の為、収穫できる野菜の種類は少なくなる。特に露地栽培だと

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お弁当工場でアルバイト(2)

お弁当工場でアルバイト(2)

↑前回のnoteはこちら

作業場に到着すると、もう既に作業が始まっており、私はパスタの麺を計量するように言われた。そして、男の子は計量したパスタを容器の中に綺麗に入れる。作業場では、ラインを囲むようにして人が配置され、流れ作業で一つのお弁当が完成するシステムになっている。例えば、パスタなら、パスタを入れる→ソースをかける→具材を盛り付ける→蓋をする→完成、のように。そこのラインの責任者は外国人の

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お弁当工場でアルバイト(1)

お弁当工場でアルバイト(1)

暖かくなり、GWには東京で展示を出来る機会が出来たものの、活動を広げようとすると、自ずと金銭的な問題が浮上する事もまた一つ。
日々どうしたものか、と考えつつも、ふとお金に囚われてはいけないと感じたり、いやお金は大事と、と思ったりの繰り返し。結論、楽しく生きれればそれで十分なのだが、そのバランスが難しい。

現在の職場はシフト制の為か、気付けば3連休が発生していた。しみじみと、3連休かぁ…とシフト表

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蕾であること。たぶん人間も今は美味しくない。

蕾であること。たぶん人間も今は美味しくない。

ここ数日、最高気温は20℃超えの暖かさで、すっかり気分は春である。道行く花々は一斉に花を咲かせ、見ていて心を躍らせる。
近所のおばちゃんから菜の花を頂く。黄色の花が可愛くて、おひたしにしただけでも、食卓がパッと明るくなる。つぐつぐ色の力と言うものは恐ろしいものだ。

自宅の近くに生えているフキノトウ。生えているうちにと考えていたら、気付けば花が咲いてしまった。花が咲いたからって何なのだ?と思うだろ

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メダカもカビもゾロゾロと、生き物たちが動き始める。

メダカもカビもゾロゾロと、生き物たちが動き始める。

ここ数日、暖かい日が続いている。
気付けば三寒四温の期間も過ぎて、春がやって来たという所だろうか?
集落に引っ越して、早1年。道端にはチラホラ桜が咲き始めている。まるで去年の4月を思い出すかの如く、今までの時間を振り返る。

昨年から、家主さんに借りていた畑は今年から近所に住む同僚家族とシェアする事になった。その関係で、その同僚家族が畑作業をしに毎週末、我が家にやって来る。いつも同僚と一緒にやって

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ホー・ツーニェン「百鬼夜行」、ニットキャップシアター『チェーホフも鳥の名前』

ホー・ツーニェン「百鬼夜行」、ニットキャップシアター『チェーホフも鳥の名前』

職場の事務所。たまたまその場に居合わせた人に「明日、名古屋に行くんですよね」と私は話した。その人は私と同じ集落に住んでいる人で、翌日は全国的に雪予報が出ている日だった。その人は勿論、「大丈夫?気を付けて行きやー」と言った。

翌日、京都駅に朝早くから出発する名古屋駅の高速バスに乗る。バスが出発する時点で名神高速道路は通行止めになっており、新名神高速道路を通る為、到着時間が遅れる、とバスの運転手さん

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世界に対して誠実であれ

世界に対して誠実であれ

雪が降った日の朝、私の家の裏庭に積もった雪はレフ板の効果で、太陽からの明かりを反射して、室内がかなり明るくなっていた。あまりにもその光が眩しくて、私は驚いて目を細めた。
家の前の道は雪で凍結していた。運転初心者の私は迷わず、徒歩で勤め先の農園まで行くことを決める。前日に急いで購入したワークマンのスノーシューズを履いて、一歩づつゴリゴリと音を鳴らしながら歩く。氷を踏んでいく音をこんなにしっかり聞いた

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