Vol.1 第2回Science Hiveを実施します#DeSci Event
私たち、研究コミュニティ ミツバチは、新しい研究者の巣(Hive)を作ることを掲げている研究コミュニティです。
現在は活動を開始してから三年目を迎え、メンバー数は200名を迫まりつつあり、全世界から50大学以上、高校生から研究者まで、研究の専門性も異なった人が集まっています。
私たちはこれらの活動を通じて「研究好き全員が研究をできる社会」を目指して、コミュニティを通じた新しい研究エコシステムの提案を行っています。
その活動の一環として、新しい研究資金の獲得の方式として社会からの支援を受けて研究をするような仕組みを創り出す活動をしております。
今回は、その中で資金面など研究者(特に若手研究者*1)を支援するようなコンソーシアムのコミュニティの構築を目指す「第二回Science HIve "Asia Science Hive"」(旧Mitsubachi Scholarship)を実施します。
新しい若手研究者支援の形が必要な理由
若手研究者を支援することには、社会的に意義が存在しています。例えば、若手研究者の支援は基本的には国家の公的な資金に依存しているという点が挙げられます。
これは日本だけの問題ではなく、例えば実施するマレーシアではほとんどの研究予算を国家に依存しているなどのお話を活動を通じて聞きました。これはつまり、少なくとも東南アジアにおいて若手研究者も国家に依存しているということを主張するにはそこまでの問題はないではないと考えています。
ですので、若手研究者を支援するのを国家が中心となっている現状を支援するためには、国家の支援に加えて若手研究者を支援するスキームが必要となっていると考えています。
具体的な事例としては、アカデミスト株式会社さんや一般社団法人大学支援機構さんが行っているクラウドファンディングや財団による支援などがあると考えられます。
しかしながら、未だにその普及は少ないです。例えばアカデミスト(株)さんでは、現在総額1.9億円以上の規模(2021年度)を誇っているが、キャンプファイアさんでは400億円となっています。単純に同じ手数料の割合としても会社として推進するには経済的な合理性に関してはまだCFメインでは問題があると言えると思います。
ですので、新しい研究者支援の形、特に若手研究者支援の形を考える必要があるのです。
新しい支援の形の方法の提案
現状のシステムの問題とはなんでしょう。
私が考える現状のシステムの問題点は、支援者と研究者の支援コミュニティ(リサーチャーエコノミー)*の生成の方法であると考えています。
例えば、国家レベルであれば、国民や企業という税金を納める人格が存在しており、それらが”無意識に”に研究者を支援しているという点があります。もちろん、国家予算の使い道をある程度知っているとは思いますが、自分の納税がどのようとに使われているというのはー貨幣自体は支払いの際に区別しないという性質上*、それを確認するのは非現実的な提案であると考えられます。
であるならば、もっとわかりやすいものとして支援を可視化する必要があると考えています。これが、いわゆるアカデミスト(株)さんでクラウドファンディングやられていることだと考えています。
次に、いわゆる学術系のクラウドファンディングに関しての問題点に関しては、そお金を通じたコミュニケーションの支援の即時性や越境性の低さが考えられます。例えば、研究者が何かを受賞した際にやはり応援コメントと共にお祝い金などを送りたくなりますが、これをきちんとした形で届けるというのはシステム上難しい。つまり、お金を通じたやり取り(コミュニケーション)が即時性がそこまで高くないと考えています。また、インターネットなどを通じて国を超えた支援を届けづらいと考えています。例えば、通貨の問題や言語の問題などが挙げられますし、そこでの文脈不足など挙げればキリがありません。ただし、近年連携などで英語等への転換はあるものの、さらに地域性を増したものにはなっていないと考えています。
また両者に共通して思う点としては、支援者と支援を受けている研究者の両者のコミュニティをうまく熟成するを支えるシステムができていないと思われる点です。
では、私たちが今行おうとしている世界中の若手研究者を支援する支援のスキームを紹介させていただきます。*5
ここで考えていることは今までのソリューションと以下の点で違いが存在します。
支援する対象である若手研究者は国家や研究内容を超えて支援するという枠組みとする
支援者と支援を受ける研究者との関係性を重視したコミュニティ構築を重視する
金融的な新しい研究リターンを工夫した新しい支援を提案する
私たちの考える方法について
私たちが考える方法は、
私たちの①コミュニティで育ったメンバーが国家や研究内容を超えて、
②Science Hiveというイベントで支援者とマッチして支援を受け、
それが③金融的な新しい研究リターンを工夫した新しい支援を提案する、
ような方法です。
具体的に要素を展開します。
コミュニティで育ったメンバーとは
私たちは上述の通り研究コミュニティ ミツバチを運営しています。研究コミュニティミツバチは、高校生から社会人まで研究でつながっているコミュニティです。そして中では研究に紐づいた活動を通じて親交を深めています。同時に、コミュニティでは、研究を応援する活動を相互的に支援しています。
具体的には、私たちは互いにプログラムなど知見のシェアやプログラムに提出する文章などをコメントし合うことで研究の中で必要なチャレンジを応援しています。例えば、ある研究留学プログラムには毎年弊コミュニティから約3割が弊コミュニティからのメンバーが採択となっています。
このようにコミュニティでは各メンバーを支え合いを行うことで成長の機会を提供し合っているのです。そしてここで成長したメンバーを外部からの支援を受ける体制を作る流れを次の②Science Hiveにて実装します。Science Hiveというイベントで支援者とマッチして支援
私たちは、コミュニティで育ったメンバーを従来の国家や財団としての支援に加えて、独自に提供するイベントにて支援者とマッチングを行うことで新しい社会的な支援を受けるようなスキームを提供します。これは具体的には、クラウドファンディングのイベント版のような形となっています。もしくは、プライズコンテストのような形になっています。(これはインパクトマーケットの提案の中にもあるような論拠です。)最終的には実際に支援する際にも、私たちはDAOのような資金のプールとポンプを用意します。このようにすることで、獲得資金の通貨交換の際の問題などをクリアにしていきます。*6金融的な新しい研究リターンを工夫した新しい支援を提案する
研究者の支援に金融的なリターンをつける、というのが今回の最重要ポイントの一つになっています。現状の研究者支援は基本的には支援をして終わり、というのが現状になっています。しかしながら、例えば日本には日本の税金を使ってノーベル賞などの賞を受賞した人がいます。しかしながらその”インパクト”は基本的には納税者に何かしらの形で返ってくることではありません。このことを問題に思っている私たちは、実際に支援した証明書兼支援した研究者からの長期的なリターンのとの交換権とすることでインパクトに対してのリターンを設計します。わかりやすい例として挙げるならば、例えば支援を受けた研究者がリターンを20年後の1時間と設定した時、その間にノーベル賞など著名な賞を受けた際にはその1時間は何者にも変え難い1時間となるはずです。具体的な方法は下のnoteをご覧ください。
最後に
以上が私たちが考える新しい研究者支援のあり方です。このようにすることによって社会と研究のつながりがもっと滑らかになるはずです。
現在では研究者が出した成果は数年、数十年の時を経て市場に届きますが、実際にその研究をした人に直接一般市民が「ありがとう」を伝える様な機会は多くありません。
しかし上記のようなシステムが完成した暁には研究者も社会もより「ありがとう」と言い合える社会になるはずです。*7
もう一方のNoteでは、このスキームを実際に第一回ではどのように実装したのか、そして今年2023年12月10日に開催されるイベントでどのように実装するのかという点を書いております。ぜひご興味ある方は、下記のnoteをご覧ください。
脚注
*1
誰が若手なのかという点には議論がいまだに残る。文部科学省での定義があるが、若手というのを決めるのは今後の議題としたい。
*2
まず、日本を例にとると、実際には研究資金のほとんどを民間企業に依存している。総務省統計局(2021)によれば82%が民間によって負担されている(図1)。国などの公共団体の支援は17.5%となっている。ここから「国家に依存している」という言説は否定されるかもしれません。ただ、ここから読み取っていただきたいことは、その民間企業のお金がどこに動いているのかという点です。文部科学省(2017)によれば、それらの大型資金は一部のシニア教員が獲得しているとしている。つまり、若手研究者が民間企業からの多くの研究資金の流入先というのは少し難しいように感じています。ここで、やっと「国家に依存している」という言説の主張に入ります。実際に文部科学省(2017)は若手研究者(〜34歳) の支援の中央値が142万円となっており、これは若手研究Aや若手研究Bなどの総額とほぼ一致している。このことから若手研究者の研究費は国家に依存しているというのは一定の確度があるのではないかと考えています。
*3
例えばこの紙幣は過去にアインシュタインが使っていたという歴史があれば一定の価値を生み出すかもしれません。ですが貨幣は決済機能において額面以上の価値を見出すことは少ないと思います。
*4
そもそもエコノミーとは現代では特に通貨などの媒介を通してつながる経済活動の集合体と考えています。だからこそ、トークンというコミュニケーションや交換の媒介物を使うことによってリサーチャーエコノミーが生まれるはずです。ただしここで大切にしたいのは単純な法定通貨の増加に依存するのではなく、”研究活動に必要なものを交換できる”というところにユーティリティをおけば可能であると考えている。
*5
私たちの立場としての根拠としては、世界人宣言の第二十七条を挙げたいと考えています。
*6
Mitsubachi DAOという可能性も含め今回の活動を行なっています。
*7
研究者からの研究資金に対する感謝もさらに可視化されるべきかもしれませんが、それは今回は議論を避けます。
参考文献
「2021年(令和3年)科学技術研究調査結果」(総務省統計局) URL
「若手研究者が活躍できる環境の整備」(文部科学省)URL
Faridah Hanum Amran, Ibrahim Kamal Abdul Rahman, Kalsom Salleh, Syed Noh Syed Ahmad, Noor Hasniza Haron, Funding Trends of Research Universities in Malaysia, Procedia - Social and Behavioral Sciences, Volume 164, 2014, Pages 126-134, ISSN 1877-0428,
「世界人権宣言」(外務省)URL
「クラウドファンディング「CAMPFIRE」、国内最速で流通総額400億円突破、延べ支援者数460万人、プロジェクト掲載数47,000件に到達」(株式会社Campfire)URL
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