雌性先熟 掌編小説800文字
つり革からぶら下がっていたのはサナギだった。驚いている間に電車のドアは閉まっちゃって、中は不思議なにおいで満たされていて、わたあめに包まれたみたいに頭がふわふわした。砂糖水を焦がしてカラメルを作った時のような甘いにおい。それまで私が保健の教科書とかで見たサナギはどれも茶色い枝豆みたいだったけど、まだ蛹化が始まったばかりだからか、一見普通の人にしか見えなかった。服もきちんと着たままで、お祈りでもするように胸の前で合わせた手でつり革につかまってぶら下がっている。でも手やほっぺた