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拘置所に面会に行った話

今から二十年ぐらい前に人生で一度だけ面会って言うものに行ったことがあるんです。この頃は大阪の教育センターであれこれ子どもたちのことでやらせてもらっていた時期です。

昔からの友人がお金関係のことで犯罪を犯して逮捕されたんです。私も他の友人もその友人が真面目に働いていたんで、そんなことしているなんて誰も知らなくていきなり聞かされた状況でした。

逮捕の話しを聞いて私以外の友人達はみんな呆れてまして。ええ大人が何してるんやと言っていました。

みんなの意見もごもっともでその通りやと思います。しかし、私はその時会いに行こうと思ったんです。会いに行かないといけないと思ったんです。

その逮捕された友人とは小学校からの友だちです。弟のこともお父さんお母さんのこともよく知っています。

お父さんの仕事の手伝いをさせてもらっていたこともあり、車で3人で移動して一緒にたこ焼きや焼きそばを焼いていたこともあります。

そのお父さんのお葬式も数年前に出席しました。


その友人がお父さんに警棒が曲がるまで殴られていることも知っていました。

一緒にマンションの階段から獅子座流星群を見たこともありました。

一緒にたこ焼きを何回も食べました。

会いに行くべき理由は次々と浮かびます。そして、私1人だけが面会に行きました。

拘置所に着くと差し入れが出来る売店のような場所がありました。私は彼の名前を紙に書き込みいくつかのお菓子や雑誌を差し入れします。

待ち合い室に行くとそこでは色々な人たちが順番を待っていました。家族連れや若い女性、みんな下を向いて名前を呼ばれるのを待っています。少し待つと私は名前を呼ばれ、狭い部屋のアクリル板越しに彼と再会をしました。


「こんなんなってるんやな。これじゃたこ焼き食べに行かれへんな。」


私は彼にそう話しかけます。彼は


「そうやな。」


っと少し気まずそうに答えます。私は


「時間があまりないようやから話すで。」


そこから私は狭い部屋でアクリル板越しの彼に大声でこう言いました。


「おまえは何を考えてるんや!一生懸命働いてお金を稼ぐ大変さ、ようわかってるやろうが!人様のお金取ってその人にとってどれだけ大変やった思いのお金かわからんかったんか!」


彼はこう答えます。


「ほんまそうやな。」


続けて私は言います。

「人が頑張って苦労して稼いだお金を取るなんて最低の人間がすることやぞ!ましてや弱い立場の人からお金を取って何を考えとるんや!」


彼は無言で頷きます。


「今日はおまえにお菓子の差し入れを入れといた。これはおれが子どもたちと毎日悪戦苦闘しながら働いて頂いた大事なお金で買った差し入れや。それを人のお金を楽して取ったおまえに使ってやる。どういうことかよく考えろ。」


彼は泣きながら


「わかった。ありがとう。」


っと答えました。すると、同じ部屋にいた記録をしていた刑務官の方がいきなり立ち上がりました。すると大声でこう言います。


「この人の言う通りやぞ!おまえしっかりやれよ。」


彼は泣きながら

「はい」


っと答えました。そして、面会は終了となりました。多分、刑務官の人は普通は話さないと思うのですが有難い限りです。

私は拘置所を出た後に1人で泣きました。これで良かったのか何が正解なのかもわからず、なんで泣いているのかもわからずに泣きながら歩いて駅へ向かいました。

話しは先に進みまして友人が出所した後は私が昔していたバイト先を紹介して働かせました。きつい仕事なのですが、2年ぐらい真面目に働いていたと思います。その給料で被害者の方に弁済をしました。

それからは他の仕事をして今は家族も出来真面目に働いています。それでも全てのことが拭われる訳ではありません。

実は去年から私は色々な所をまわっていてひっそり少年院を慰問する方法を探しています。警察署にも聞きに行き、役所にも行き、保護司の会の事務所も訪ねて回りました。誰にも言ってないんですけどね。こっそりね。

私も真面目に生きて来たと言えない人生を歩んで来ましたが、だからこそ返していきたいと思っているんです。自分の人生はどれだけ頑張ろうが人としてプラスの人間にならないと思っています。ずっとマイナスの人間です。しかし、それをマイナスのままで開き直るか終わらすかは自分次第です。

私は死ぬまで0に近づけるように出来ることを最大限やっていきたいと思っています。

昔小学生の頃に「ああ、無情」という本を読みました。映画のタイトルで言えば「レミゼラブル」です。内容は主人公は幼き頃貧しさからパンを1つ盗んでしまいます。その後、努力して区長か何かにまでなりますが、昔パンを1つ盗んだことが発覚し仕事を辞めることになります。この本がずっと忘れらずにいます。きっと自分と重なる部分を感じているのだと思います。

罪の終わりも反省の終わりもないのだと思います。一生終わらないなら私は前に進んで行こうと思いました。逃げずに前に進むことが本当の反省のように思っております。逃げずに止まらずに自分が出来る最大限のことを返していければと思います。

私の人生はまだまだこれからです。


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