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一生懸命に生きています。

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新宿毒電波通信 第二号 INFORMATION「うどん屋ギビツミ」

INFORMATIONうどん屋ギビツミ 灼熱の新宿で出会う、絶品冷やし肉味噌坦々うどん 新宿駅から、徒歩十五分。オフィス街の「うどん屋ギビツミ」からは、今日も元気に女店主・晴子の声が響く。本店の特長は、やや細めの自家製麺に絡む、関西風の金色の出汁。これだけでうどん好きなら垂涎、間違いなしだ。うどんの基礎がしっかりしているからこそ、他のうどんのバリエーションも引き立ってくる。例えば、アサリうどんでは優しい滋味が、天ぷらうどんでは揚げ物の香ばしさや食感が堪能できる。このように

    • 新宿毒電波通信 第二号「新宿幻影」

      鬼の葬儀 中野沙羅  もう何年も会っていない父方のババアが北新宿で死んだ。口からヘドロみてえな激臭がするから、会うたびに近づいてくんなババアって思っていたけど、死んでぽっかり開いた口からは、なにもにおわなかった。  葬儀は叔父がしきった。遺影がなぜか、法廷画タッチの鬼のイラストだ。おれはババアの顔を覚えていなかったけれど、さすがにこんなんじゃないんじゃないの、と伝えた。でも、父も母も親族も気にしなかったので、そのまま過ぎていった。  焼き場は立川とかの方なのかなと思ったら、

      • 新宿毒電波通信 第二号 「この家無を見よ」Vol.2「悲劇の誕生」

        アウトドア哲学 この家無を見よ 悲劇の誕生鶴内手刀  生きることはカネを支払うことだ。ただ生きているだけで金銭を支払わねばならない。居酒屋でビールを飲みとんぺい焼きを食った場合、金銭を支払うのは理解できる。しかし家賃はいったいどういうことなのだろう。そこに暮らすだけでカネを支払わないといけないというのは、結構すごいことなのではないだろうか。私はながらく当たり前に家賃をおさめてきたが、腹が立ってきた。なぜ生きるために働かなければならないのだ。生きているだけで私たちは素晴らし

        • 新宿毒電波通信 第二号 「新宿黄金害」第二回

          新宿黄金害 第二回若宮とおる  下落合駅を降りてすぐの喫茶店「山びこ」に、若い女性客がいた。彼女はメロンクリームソーダをストローでぐちゃぐちゃにかき回しながら、目の前の『先輩』に話しかける。  「ねえ、先輩。『新宿黄金害』のビール、酸っぱくて不味いから行かない方がいいですよ。一杯八百円も払わされたんですよね。店長はプライド高くて、レイシスト。最悪の店です」  『ちょっと前までイケメンがいるって騒いでたじゃない。またヤリ捨てでもされた?』  「……結婚してたんですよ。子どもの

        新宿毒電波通信 第二号 INFORMATION「うどん屋ギビツミ」

          新宿毒電波通信 第二号 RED TRIP〜赤い旅路 第二回

          旅行記第二回 RED TRIP〜赤い旅路山本 拓也 ポンポンおじさんは毎朝、決まった電柱に向かって立ち小便をしていた。すっきりしたところで、路地をブラブラしながら登校中の生徒たちに声をかける。  「何年生?」  「学校楽しい?」  彼は基本的にこの決まり文句以外口にしない。私もしばしば声かけの対象になる。  「2年生」  「あんま楽しくない」  お定まりの返事をする。いつも同じやり取りなので、いい加減こちらの顔も覚えそうなものだが、彼はあたかも初対面みたいな感じで話しかけて

          新宿毒電波通信 第二号 RED TRIP〜赤い旅路 第二回

          新宿毒電波通信 第二号 音楽評 MUSI苦 「リボルバー」ザ・ビートルズ 

          MUSI苦「リボルバー」ザ・ビートルズniimino サイケデリアとともに新たな地平へ  1966年にリリースされたザ・ビートルズのサイケ大名盤。ここでは本作の制作にあたって最初に録音され、アルバムの最後を締めくくった1曲「Tomorrow Never Knows」について解説したい。  本曲はチベット密教の死後体験とLSDの変性意識の共通点を指摘したティモシー・リアリーの著書「チベット死者の書:サイケデリックバージョン」の影響下にある。その内容を暴力的にまとめてしまえば

          新宿毒電波通信 第二号 音楽評 MUSI苦 「リボルバー」ザ・ビートルズ 

          新宿毒電波通信 第二号 書評 二十億光年の誤読「日々のきのこ」高原英理

          福音としての胞子山本拓也  失われた連続性のイメージ。そんな、存在するはずのない記憶が喚起させられるような雰囲気の幻想小説だ。舞台は近未来と思われ、世界中で菌類が大繁殖している。胞子は人々の脳にまで入り込み、意識を変容させる。あちらこちらで「わたし」という存在がじんわりと溶解していく。登場人物たちは各々の過ごし方で、「緩やかな死」を待っている。やがて全身が菌類で覆われて、土の中まで菌糸を伸ばし、山や森の巨大なネットワークと一体となり、自他の境界は消失する。  ヒトはコトバに

          新宿毒電波通信 第二号 書評 二十億光年の誤読「日々のきのこ」高原英理

          新宿毒電波通信 第二号 保笑無「思考するきのこ」

          保笑無思考するきのこ空気に溶ける快楽が 木々をわたり 地に宿る 人類よりも長い旅路と 静謐なダイアローグ 深長な内省は 愛らしい頭でっかちに変え 饒舌への嫌悪は 胞子という言語を与えた 日々の憂鬱を哀しい毒に 日々の退屈を極彩色の夢に 日々の歓びを我々に分け なおも妖しく光るきのこ お前は何を考え 何を話すだろう 土砂降りの梅雨の 果てしなく続く真夜中に

          新宿毒電波通信 第二号 保笑無「思考するきのこ」

          新宿毒電波通信 第二号 特集「梅雨こそ読みたい、魅惑のキノコ。」 CASE.3 ヨニゲタケ

          ヨニゲタケniimino  空梅雨の眠れない晩だった。連日の湿気と暑さで早くも夏バテ気味だった私は、有給休暇を取得、その喜びを肴に冷蔵庫へと向かうと、缶ビールのプルタブをすかさず開け、その音に乗じて夜明けの新宿へとくり出した。  歩きながらビールを飲んで新宿三丁目。新宿駅周辺の喧騒と比べると、森閑と形容したくなるほど静かだった。  小さな公園のベンチに腰かけ、3本目のビールを飲んでいると植え込みから物音。ネズミかと思い、身構えて立ち上がると、物陰から出てきたのは大小さまざま

          新宿毒電波通信 第二号 特集「梅雨こそ読みたい、魅惑のキノコ。」 CASE.3 ヨニゲタケ

          新宿毒電波通信 第二号 特集「梅雨こそ読みたい、魅惑のキノコ。」 CASE.2 ウソダケ

          ウソダケ 鶴内 手刀 N社が2064年に販売を開始した「嘘茸の味のお吸い物」は、湯に溶くだけで嘘の香りが楽しめるスープとしてベストセラーとなり、2124年の今でもあらゆるスーパーマーケットに陳列されている。  N社に納品する嘘茸の栽培工場が私の生まれた場所であり、現在は倒れた父に代わり私が経営している。父は嘘茸の嘘の成分を安定させることによって、N社との取引を勝ち取り、工場の経営を軌道に乗せた。  大手食品メーカーのN社は原料の品質チェックが厳しく、社員の少ない零細企業の我が

          新宿毒電波通信 第二号 特集「梅雨こそ読みたい、魅惑のキノコ。」 CASE.2 ウソダケ

          新宿毒電波通信 第二号 特集「梅雨こそ読みたい、魅惑のキノコ。」 CASE.1 ドウチョウダケ

          ドウチョウダケ 若宮 とおる 西新宿駅から、徒歩十分。オフィス街の定食屋「YOKOSEYA」からは、今日も元気に女店主・タル子の怒声が響く。  「江淵ィ、キノコ買ってきたの? 100g430円? おめぇバカか? それはよお、同調するだけの能無しだから、頭がでっかくなって、根元から折れてるのをよく見かけるだろうが」  「なに言ってんだ、タル子。キノコは同調しねえだろが」  「ばか。なんも考えてねえ菌類だから、置かれた環境にすぐ左右されるってことだよ」  江淵は「それはほかほか

          新宿毒電波通信 第二号 特集「梅雨こそ読みたい、魅惑のキノコ。」 CASE.1 ドウチョウダケ

          新宿毒電波通信 第二号 特集「梅雨こそ読みたい、魅惑のキノコ。」 扉

          特集梅雨こそ読みたい、      魅惑のキノコ。  雨の降りしきる夕方の薄暗い街。あなたは黒いレインコートの男から突然、こんな質問をされてしまいます。  「あなたはキノコについてどう思いますか?」  いきなりの問いに戸惑いながらも、なんとか回答をひねり出そうとします。  食卓を彩るもの? 夢をサイケに彩るもの? 毒が怖い? 形が可愛い? 胞子って何? 菌類なのに食えるのが意味わからんすぎる? この時期、一夜で育ちきっててウケた? っていうかこの人、何? 新種の変態?  そこ

          新宿毒電波通信 第二号 特集「梅雨こそ読みたい、魅惑のキノコ。」 扉

          新宿毒電波通信 創刊号 INFORMATION「不気味の棚」

          INFORMATION不気味の棚 名状しがたい感情=「不気味」特化型の書籍販売棚  神保町のすずらん通りにあるPassage by ALL REVIEWSは、著名批評家や文筆家、古書店など、多様な人々が棚を借りて、それぞれのカラーに合った書籍を販売している。多くの書籍がひしめく世界最大の古書街、神保町にある世界最小の古書街といった趣の本屋だ。  その店の三階に「不気味の棚」はある。棚主は中野沙羅。彼女は、芥川賞作家=吉田知子主宰の同人誌『バル』の第八号から本格的に執筆を開

          新宿毒電波通信 創刊号 INFORMATION「不気味の棚」

          新宿毒電波通信 創刊号 音楽評 MUSI苦 「この地球の続きを」コブクロ 

          MUSI苦「この地球の続きを」コブクロniimino W不倫デュオが万博に寄生した最低の醜作  22年リリースの今作。関西万博オフィシャルテーマソングにもなっているが、楽曲・歌詞の双方で正直、大興奮した。  まず、楽曲が反吐が出るほどダサいのはさておき、特筆すべきは和太鼓や三味線のソロパート。昨今、日本の音楽家は世界基準の楽曲を作るにあたって、ボカロPの文脈(転調を多く用いる、意外性のあるコードを選ぶ)を駆使している。YOASOBI「アイドル」のサビは、日本的ヨナ抜き音

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          新宿毒電波通信 創刊号 書評 二十億光年の誤読「ジャスミンおとこ」ウニカ・チュルン

          niimino 精神病を 主観的に捉えた傑作  著者は球体関節人形作家、ハンス・ベルメールのパートナー=ウニカ・チュルン。彼女もアーティストとしての活動を行っていたが、統合性失調が原因で投身自殺。その生涯の幕を閉じた。本作は、精神病が原因による複数回の入退院を終え、回復期に書かれた小説で、死後に上梓された。  あらすじは、幼少時に現れた幻覚「ジャスミンおとこ」が、人生のあらゆる場面で顔を出すというもの。  さて、この幻覚の男=ジャスミンおとこという存在が不気味である。幼少

          新宿毒電波通信 創刊号 書評 二十億光年の誤読「ジャスミンおとこ」ウニカ・チュルン

          新宿毒電波通信 創刊号「新宿幻影」

          新宿幻影「プラスチックの炎」ニイミケイタ(カイザーストロングバーツ)  どうも。カイザーストロングバーツというバンドのボーカル、ニイミケイタです。古い曲のひとつに「プラスチックの炎」という曲があるんやけど、それは新宿で見た光景やそっから受けた印象が歌詞になったもの。  まだ西口に小田急があって、駅前から見上げる空が激狭だった頃。昼過ぎに西口の上空に蠢く3本の透明な触手を見た。深海にいるチューブワームを巨大にしたようなそいつは、ぎこちなく蠢いとった。気のせいやろと思って、大ガ

          新宿毒電波通信 創刊号「新宿幻影」