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オススメ作品集

33
私が読んで感銘を受けたものをブックマーク的に置かせていただいております。 よろしければぜひ皆様にも読んでほしいと思います。
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#詩人

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秋山さんのリクエスト
照れ臭いけどやってみました
どんだべ?

青とコンクリート

海が学校も住宅も原発も
パジェロミニもランドセルも
家族のアルバムも全部飲み込んだのに
13年目の今日はガラス細工みたいに
精密でずっとずっと穏やかな波

まだ3万人が全国に避難してて
まだ仮設住宅が600戸あって
この日だけ被災地の様子をニュースで
やってて今日まで一年間被災地の事を
忘れて生きてた罪悪感を刺激する

昨日まで
あるお笑い芸人のスキャンダル一色だったのに今日だけ深刻そうな顔をして

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告白

告白

のたうち回って痛がって悔しがって
寂しがって死にたがって生きたがって 
祈りあって懺悔しあって言葉に迷って
溺れて縋って歯形がつくぐらい強く齧って飲み込んで咀嚼して白紙の上に吐き出して手垢も唾液もまみれた言葉だからこそ安心するってやっぱりあるよそういうの
わたしはやっぱり詩人が好きだやっと言えた

手遊び

手遊び

詩の中で語られる悲哀と喜びを
ちぎっては投げてこねてつなげて
「あ」から「ん」の組み合わせで
何通りあるんだろうね 気が遠くなるね
みんなただかえりたいだけなのに
ただ泣きたいだけなのに
先がみえない
道に迷った苦し紛れに
組み合わせた中でも
いちばん酷い言葉をついつい言ってしまう 人の分まで汚れる必要などないけど逃げずに自分の分はちゃんと汚れたなら もっとしゃんと胸を張ったらいいよ 誰にも押し付

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その作法

その作法

直面してしまうと全てをわたしのせいにしてしまう治らない悪癖
たどたどしく
自分で納得しないとたちまち動かなくなってしまう良心
よかれとおもったその助言
有り難く頂戴するが
推奨された映画 ずっと観ないまま
ずっと読まれない小説も畳の上に無造作に置かれてうずくまっているからチビだとおもったら平山夢明のハードカバーだった 
他人に評価を委ねてもそれが本心かどうかはわからない なにを言われてもピンとこな

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坂本やつあたる

坂本やつあたる

今日はいいこともわるいこともない
なんでもない日だった
私の都合の悪い方にことが進んだ気もするが 眼をつぶる思考停止 楽しい事もそうじゃない事も なくならないよな
まばたきしたぐらいで 私の前を素通りしてゆく奇跡的ななにか 私はもういいから  あの人や本当に哀しい人の
泣く事も忘れてしまった人の前に立ち止まってなんかないのか恩恵や救いの類い
いつまでシカトしてんだよ
スーツケースに詰められて捨てら

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日曜日

日曜日

常夜灯を凝視したまんま
睡眠のしっぽ掴み損ねた
眠剤齧る 瞼開閉繰り返し
私のそばを旋回する光の虫と遊ぶ

辛いのはいつまでですか
家鳴りする築五十年の民家
またなんか悪いことを思い込んでしまう
夜がうまく流れない四隅で留まって
はじの方からくさる夜

気づきたくなんかなかったな
私のさみしさなんか
思いもしなかったよ春をこんなに嫌いになるなんて 
感傷は贅沢な感情だって言ってた友達
二十歳前に泣

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残機

残機

サーターアンダギーひとつでいいのに
五つもいらないのにもってけもってけって妻は甘いもの嫌いだし
長男は川崎で携帯電話売ってるし
次男は出張だし 金返さなかったり
バイオハザード借りパクしたり不義理ばかり繰り返したら友達もいなくなっちゃったし
ほとほと困ったわたしではあるが 病気以外はなんでももらえが
坂本家の家訓であるからして 
似たり寄ったりの解決策にはもうたくさんだ
優しくなりたいな詩にもなら

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深爪を気にしながら埋める余白

深爪を気にしながら埋める余白

深爪を気にしながら埋める余白
米を研ぐ午前三時
真四角のテーブルの上で
ごはんですよときゅうりの浅漬けを
泣きながら食べていた母親を思い出しながら

米を研ぐマイナス五度の台所で
神様の悪口を思いつく限り数えながら
やれるもんならやってみろよって
わざと聞こえるように歯軋りをしながら

米を研ぐ指先が
かじかんで赤紫色になるのを少し気にしながら

あの日
カウンセラー志望の女の 子宮に入れたのは人

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ソナチネ

ソナチネ

昼に傷ついた人たちを
癒す夜 軽傷だからいいよ俺は
気合いと正露丸で治すわこんな傷 
心の底から願った言葉が誰にも
本当に届かないならあなたがあの時言ってくれたとにかく生きてなさいってお守りみたいにその言葉大事にぶら下げてこんな歳になってこないよこんな遠くまで
人に傷ついた人たちをやっぱり抱きしめて癒すのも人 触れなくていいよ俺には
本当にかなしいのはいつだって俺じゃないし平気だよツバつけときゃ治

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