Vampire Survivors 面白さ徹底解剖
2022年、大流行したゲーム
「Vampire Survivors」
このタイトルを知っている人はかなり多いのではないでしょうか。
実際に遊んだ人もいればこのゲームを実況している人の動画を観た人も多いと思います。
そこで、なぜこのゲームが大ヒットしたのかをレベルデザイナー視点から見て分析していきたいと思います。
学ぶところが非常に多いゲームとなっていますので、ゲーム制作をしている方は上手く噛み砕き自分のゲームの参考にすることでゲームは確実に面白くなると思います。
それではいきましょう!
1.遊ぶまでの時間が最短
これがとても重要だと私は思います。
ゲームを立ち上げてから実際に操作できるまでの時間が非常に短い。
ストーリーが語られることはなく、チュートリアルも一切ありません。
こういったゲームをする場合、ゲームを始めたほとんどのプレイヤーはいち早く操作したいのです。
最初に語られるストーリーやゲームを遊ぶためのチュートリアルも興味がないわけではありませんが、いち早く済ませて早く遊びたいと思っています。
そこを大きく省いている設計。
そして重要なのは「チュートリアルがない」のではなく
「チュートリアルが必要ない」のです。
ここには様々な工夫がされているので、そこを解説しながら見ていきたいと思います。
2.自然と理解できるゲームルール
ゲームが始まると敵がすぐに迫ってきます。
それを見たプレイヤーは直感的に敵から逃げます。
そして逃げているとキャラクターが自動で攻撃をするので、攻撃が自動であることに気づき、敵を倒しに行きます。
敵を倒すことで何かを落とすので、プレイヤーは拾いに行きます。
そして拾った時に経験値が増えるので、敵を倒して経験値を拾うゲームということを理解します。
ここで基本的なチュートリアルが全て終わりと言っても過言ではないです。
ここまでにプレイヤーが読んだ文字は0文字。
遊んだ時間は10~20秒ほど。
こんなに完璧な導線があるでしょうか。
プレイヤーはゲームを立ち上げて1分もしないうちにゲームの遊び方を理解し、ここからゲームに没頭することになります。
何も説明をせずとも、たった数十秒でプレイヤーに遊び方を自発的に学ばせることに成功している。それも文字を読ませることなく…。
これはとてもすごい事です。
遊ぶ側の早く遊びたい欲は満たされ、開始からここまでストレスなし。
まさに理想。
自分のゲームもこうありたい…でもどうすれば…。
さて、それではここにどんな工夫がされているか。
一つ一つ説明していきたいと思います。
・開始すぐに敵が迫ってくる
操作を確認させる時間もなくすぐに敵が迫ってくることでプレイヤーは自発的に必ず移動方法を確認し学習します。
ここで重要なのは「すぐに敵が迫ってくる」こと。
時間を空けてしまうとプレイヤーを様々なボタンを押して操作を確認し始めるため、すぐに敵が迫ってくることで始めは必ず移動方法を学ぶことになります。
操作を確認する時間はプレイヤーにとって面白い時間かと言われると特に面白くはないですし、それより早くゲームの面白い部分を味わっていただいた方がプレイヤーも楽しめるので、この方法を取ることで操作確認の時間を与えずにまず移動方法を強制的に学ばせています。
・攻撃が自動
敵から逃げているとキャラが自動で攻撃するのを目にします。
それを見てプレイヤーは攻撃方法を自ら探すということをせず、攻撃するのに操作は必要ないということを学びます。
更にここで敵が一撃で死ぬことも重要で、自分から出ているエフェクトが攻撃だということにも気づきやすく、次の「経験値を拾う」という行動に少しでも早く移行することができます。
・経験値ゲージが大きい
経験値の表示が太く、画面の端から端まで非常に大きく表示されていることでプレイヤーが経験値を拾った際にそのゲージが増えたことが必ず目に入るようになっています。
ここでプレイヤーが経験値ゲージが増えたことに気づかないとそこで導線が途切れてしまうので、経験値ゲージの大きさは非常に重要な役割を担っています。
このようにゲームルールをすんなり理解できる作りになっています。
更にその後のプレイでも理解のしやすさの工夫があるので、いくつか説明していきます。
・武器効果がわかりやすい
経験値を獲得した時に得られる武器は、見た目と性能が某ドラキュラのゲームに似ています。
そのゲームをプレイしたことある人であれば即座にどのような武器かが理解できるので、その点も武器効果の理解に一役買っています。
・武器進化システムが絶妙
ゲームを何回かやっていると自然と武器進化する場面に出くわします。
これは後で詳しく説明しますが鍵となるシステムで、武器進化のための条件が「何回か遊ぶと自然と発見できる」ようになっています。
条件が簡単すぎないことで自分で見つけた達成感も得られ、難しすぎないことで進化システムに気づかれずにゲームを辞めてしまうこともない、絶妙なバランスだと思います。
このように自然とルールを理解するための仕掛けが数多く工夫されています。
3.爽快感の演出
このゲームに仕掛けられている数々の爽快ポイント。
これを解剖していこうと思います。
・武器進化の爽快感
ゲームを進めていると敵が徐々に強くなりますが、プレイヤーはある箇所で一気に強くなります。
それは「武器を進化させた時」です。
そのタイミングでプレイヤーは敵の強さに大きく差をつけれます。
ここが気持ちいいのです。
がんばってきた努力が報われる瞬間です。
ゲームをしていて最も楽しい時間の始まりです。
強くなった力で敵をいとも簡単に倒せる時間…!
ここで大きなご褒美をあげることでプレイヤーに「気持ちいい」を届けることができ、このゲーム楽しい!と思っていただけるわけです。
ではそれはどのようにすればいいか。
このゲームでは時間と共に敵の強さが上がっていきますが、以下の難易度の遷移があるとします。
時間と共に敵の強さが上がっていく様子が赤い線で表されており、青い線はプレイヤーの強さを表しています。
階段状にちょいちょい上がっている箇所はパワーアップアイテムを獲得してプレイヤーの強さが上がった瞬間です。
武器選択を間違えたりレベルアップが追い付かなくなり青い線が赤い線を下回ってしまうとゲームオーバーです。
つまり線同士が近づくほどプレイヤーは「緊張」し、離れるほど「緩和」します。
ここで注目なのは青い線が大きく跳ね上がっている箇所(8分の位置)です。
そこが武器を進化させたタイミングです。
このタイミングでプレイヤーは一気に強くなり、安心感と優越感などの気持ち良さを味わえるのです。
この瞬間プレイヤーは最高に気持ちいいのです!
間違ってもここでプレイヤーが武器を進化させたらそれに合わせて敵も追加で強化される、なんていうシステムにしてはいけません。
せっかくプレイヤーが頑張った努力をぶち壊すことになります。
味方の強さと敵の強さを常に合わせることがバランスが良いわけではありません。
適度に緊張と緩和を繰り返す方がプレイヤーは楽しさを感じられるのです。
その為には頑張った時間の後に、少し気を抜いて達成感に浸れる時間というご褒美を与えてあげましょう。
がんばったらご褒美をあげる。
これは必ず意識しましょう。
・ノリの良いBGM
前の項目が長くなってしまったのでここからはさらっと紹介です。
このゲームでは敵から出現する宝箱を取ったときのBGMがとてもリズミカルで、BGMの終わりのSEに合わせて宝箱の内容が出現するようになっており、遊んでいる方も楽しくなってきます。
更に運が良いとBGMも演出も豪華なバージョンもあり、1回味わうと次からはそれを期待するようになり、宝箱を取る時のワクワクも増加します。
1度知った快感は人間は再度求めてしまうのです…。
プレイヤーのテンションを上げるこの仕掛けもこのゲームの大きな特徴だと思います。
・一気に〇〇
「一気に」は楽しさを感じられる魔法の言葉です。
炎を噴き出して敵を一気に倒すアイテム。
落ちている経験値を一気に集められるアイテム。
さっきの武器進化の話も「一気に強くなる」ですね。
ゲームで何か気持ち良さを感じられるシステムを作りたいときは
「一気に〇〇」を意識してみるといいかもしれません。
・褒める演出
プレイヤーが頑張った後には褒めましょうと言いましたが、それは演出にも関わっています。
このゲームではレベルアップした時に上から宝石をいっぱい振らせて、経験値ゲージも七色に光っていますね。
「光らせること」は人間は本能で好きなのです。
バスの降りるボタンを子供が押したがるのは「光って」「音が鳴る」からですし、パチスロ等も演出では派手に光りますね。
あれも人間の依存心を煽るための仕掛けです。
以上のように光と音には楽しさを与える効果があるので、プレイヤーが頑張った際の演出には少し意識してみるといいかもしれません。
他にも宝箱を開けた際の演出もコインが飛び散って線上の光が画面を飛び回りますね。
演出を作るのが苦手な方もいると思いますが、プレイヤーを褒める部分だけは頑張ってみてはいかがでしょうか。
4.配信向け(気軽に遊べて見てて楽しい)
最近は無視できない「ゲーム配信」
特にインディゲームは企業のゲームのように広告にお金をかけられない為、配信していただけることで少しでも多くの人の目に触れられ本当に助かります。
(私のゲームを動画投稿や生配信をしてくれた方、本当に感謝です!)
その為、配信されやすさを意識する開発者も多いのではないでしょうか。
このゲームもゲーム配信によって大きく広がったゲームなので、どのような点が配信に適していたのかを分析してみましょう。
・短時間で遊べる
ゲームの進行が時間で管理されていて、1プレイが30分で必ず終わるので時間の管理がしやすいのは大きなポイントだと思います。
ちょっとした時間でも遊べるというのは大きいのではないでしょうか。
・見ていてわかりやすい
これは今まで書いてきた項目に書いてあることですが、プレイヤーだけでなく見ている人にもわかりやすいことが重要です。
生配信では途中から見る人も多いので、その人たちが途中からでもゲーム性を理解できることは非常に重要です。
わかりやすさについてはルールがシンプルなのに加え、前述した「自然と理解できるゲームルール」の項目がそのままなので参考にしてください。
・演出が面白い(気持ちいい)
演出が面白いことで配信者の方がそれに乗ってくれて更に面白くしてくれます。
このゲームで特に面白い演出はやはり宝箱を開けたときです。
開けるときのリズムに合わせて配信者が面白い動きをしてくれたりして配信も盛り上がります。
5.まとめ
いかがだったでしょうか。
Vampire suvivorsはしっかりと流行るポテンシャルを秘めているゲームだということが分かったと思います。
ゲームが流行るには誰かに見つけてもらう運ももちろんあります。
しかし運よく誰かの目に留まったときに面白いゲームであることという条件を満たしていないとその運をみすみす逃してしまうことになります。
誰かに見つけてもらったときに、その人を魅了する作りにしておくことがとても重要です。
その為にはどのような事に気を付ければいいか、それを少しでも伝えられていたら幸いです。
まだまだ色々な角度から見れば面白い要素はたくさんありますが、他のゲームに取り入れやすい要素としてはこれらが大きいのではないかと思います。
もちろん全く同じ真似をするのではなく、抽象化して自分のゲーム用にアレンジして取り入れることで自分のゲームを自然にパワーアップできるのだと思います。
システムを抽象化して新しく作り出す方法については以前に記事を書いていて、今までの記事の中で一番好評だったのでこちらを読んでいただければと思います。
長くなってしまいましたが、以上がVampire Survivorsの面白さの解剖でした。
最後に…。
これらの分析をしてわかった良いところを、自分流にアレンジして詰め込んだゲームを現在製作中です。
その名も「犬神ディフェンダーズ」。
ワンちゃんと一緒に防衛するタワーディフェンスゲームです。
短時間で気軽に遊べます!
現在体験版を配信中なので是非遊んでみてください。
とても嬉しい感想をいっぱい頂いています!
こんな感想を言ってもらえると本当に作った甲斐がありますね…!
皆様も良ければ以下からDLして遊んでみてください。
ゲーム性は全く違いますしルールも違いますが、開発中の現在は良いところを吸収して面白さをかなり盛り込めています。
(そして面白かったらウィッシュリストに追加ボタンを是非に…!)
以上でVampire suvivors面白さ徹底解剖を終わりたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました!!
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