様々なことに応用できる「ゲームシステムの作り方」

■はじめに

クリエイターの方々は日々色々なものを作っていると思いますが、なぜそれを作ろうと思いましたか?

生活する中で実際に体験したことや、動画を見たりゲームで遊んでいる時に何かに対して「すごい!」と思うことはたくさんあると思います。

そしてその「すごい!」を感じたときに、自分でも作ってみたいと思ったことありませんか?

ありますよね。
あってください。

はい、あることにしましょう。

そしてその「すごい!」は人によって何がすごいか違うと思います。

・すごい面白かった!
・爽快感があってすごい気持ちよかった!
・なんか単純にすごい!って思った。
などなど。

このように自分の過去の「すごい!」と感じた体験を自分流にアレンジして作った経験がある方も多いのではないでしょうか。

その結果、良いものが作れた方もいればあんまり上手くいかなかった方もいると思います。

でもそれで終わりじゃない。
また作りたい…クリエイターだもの。

というわけで、そんな人のためにモノづくりの方法をゲームシステム作りを例にして「ゲームシステムの作り方」を書いていこうと思います。


おにぎり美味しいよね

■ゲームシステムの作り方

まずはじめに自分の経験をもとに何かを作る方法ですが、簡単に言うと以下の手順になります。

  1. 参考にする体験とアレンジの方向性を決める

  2. 体験の分析(分解)

  3. 抽象化

  4. 核の理解

  5. 方向性をアレンジしつつ具体化

この5つの手順になります。

しかし、これだけ言われてもわからないと思うので、まずは簡単に私の好きな「たらこおにぎり」を「洋風」にアレンジするという例で説明します。

  1. 参考にする体験とアレンジの方向性を決める
    →美味しかったたらこおにぎりを洋風アレンジして作ろう。

  2. 体験の分析(分解)
    →たらこおにぎりを以下のように分析、分解。
    「海苔」で包んだ「ごはん」の中に「たらこ」が入っているもの

  3. 抽象化
    「海苔」→「持って食べやすくするもの」・・・①
    「ごはん」→「主食」・・・②
    「たらこ」→「塩気のある具材」・・・③

  4. 核の理解
    「①持って食べやすい②主食に③塩気のある具材にが入った物」
    というのがこの食べ物の

  5. 方向性をアレンジして具体化
    「①持って食べやすい」+「②主食」→「フランスパン
    「③塩気のある具材」→「明太子クリーム


これで明太フランスの完成です。
スーパーのパンのコーナーに大体あるアレです。

さてここで注目してほしいのは、アレンジ前のたらこおにぎりも、アレンジ後の明太フランスも「持って食べやすい主食に塩気のある具材が入った物」という核の意味では同じものですよね。

このように核が変わらず別のものにアレンジするのが、何かを参考にした時の上手いアレンジだと私は思ってます。

別物になっとるやないかーい!と思う人もいるかもしれませんが、ゲームシステムって似せすぎたものを作るとパクリって言われるんでね…。

ゲームだと「たらこ」を「半生たらこ」にするぐらいだと叩かれることもあります。
たらこの量を50gから45gに変えただけだと裁判起こされる場合もあります。

…とまぁそれはいいとして、作り方としてはそんな感じになりますが「核って何?」とか「もう少し詳しく!」と思う人もいると思いますので、これをゲームシステムバージョンで詳細に説明していきたいと思います。


VRすげー!やったことない人やったほうがいいよ!

・参考にする体験とアレンジの方向性を決める

作りたいと思ったときに既にこれは決まっていると思うので、これは特に問題ないですね。
自分が作りたいと思う体験を決めます。

今回は例としてダークソウルシリーズのパリィ(*1)をアレンジしていこうと思います。エルデンリングも発売したことですし。(発売日に書いてます)

次にアレンジの方向性。
方向性としてはダークソウルは1人用で高難易度のアクションゲームなので、今回は少し違う系統の2~4人用で普通の難易度のアクション RPGにしていきます。(ファイナルファンタジークリスタルクロニクルみたいな感じ)

※1 パリィ:ダークソウルの代表的なシステム。敵の攻撃をギリギリに引き付けて盾で弾くことで敵に大きな隙を生み、その隙に攻撃することで大ダメージを与えることができるシステム。

・体験の分析(分解)

まずはアレンジする前にその体験が
「どのようなもの」「どのようにすごかったか」
の2点を分析する必要があります。
(ここでは「すごかった」では少しわかりづらいので
ゲームではとても大切な「気持ちよさ」「快感」に変換して説明します。)

ではパリィがどのようなものか。
分析した結果は・・・

「敵の」
「攻撃に合わせて」
「タイミングよく」
「防御行動することで」
「自分に大きく有利 or 不利になる(失敗時)」

体験の分析

こういうシステムだと分析しました。
そしてこれは一旦おいておきます。

次にパリィがどのように快感なのかを分析します。

・敵の攻撃を無効化できる
・敵に大ダメージを与えることができる
・タイミングが難しいので成功時の達成感がある
・失敗時にはダメージをくらうのでスリルがある
・自慢できる(配信していたり、友達が見ている場合)

体験から何が得られるかの分析

こんな感じでしょうか。
分解はこれで完了です。(この他に音や演出が気持ちいいというのもありますが、システムには少し関係が薄いので省きます)

次にこれらの要素を抽象化していきたいと思います。


ぼやぼや~

・抽象化

ここで先ほどのパリィがどのようなものどう快感かを思い出してください。これを抽象化します。

▼パリィがどのようなものか
「敵の」 → 「誰かの
「攻撃に合わせて」 → 「アクションに合わせて
「タイミングよく」 → 「タイミングよく
「防御行動することで」 → 「アクションすることで
「自分に大きく有利 or 不利になる」 → 「有利 or 不利になる

体験の分析結果を抽象化

そしてこちらも抽象化します。

▼パリィがどう面白いか
・敵の攻撃を無効化できる → 防御面で得をする
・敵に大ダメージを与えることができる → 攻撃面で得をする
・タイミングが難しいので成功時の達成感がある → 達成感がある
・失敗時にはダメージをくらうのでスリルがある → スリルがある
・自慢できる(配信していたり、友達が見ている場合) → 気持ちいい

体験から得られる結果を抽象化

このように抽象化してみました。
そして次は核の理解です。


・核の理解

このシステムのどのようなものどう快感かのそれぞれの核は何か。
それは以下の通りになります。

誰かのアクションに合わせてタイミングよくアクションすることで有利or不利になる

「どのようなものか」の核

防御面と攻撃面で得をして、達成感があって、スリルがあって、気持ちいい

「どう面白いか」の核

この核をなるべく変えずにアレンジするのが大事になります。


こうやってみようぜ~

・方向性をアレンジしつつ具体化

それではこのシステムを最初に決めた
「2~4人用で普通の難易度のアクション RPG」
という方向性でアレンジしつつ具体化したいと思います。

わかりやすいように核のそれぞれに番号を付けました。

「①誰かの」「②アクションに合わせて」
「③タイミングよく」「④アクションすることで」「⑤有利or不利になる」
というシステムで
「⑥防御面で得をして」「⑦攻撃面で得をして」
「⑧達成感があって」「⑨スリルがあって」「⑩気持ちいい」
という結果を得たい。

これをアレンジして具体化していきます。
まずは複数人用にするためにこのようにしていきます。

①誰かの → 味方の

太字は核

複数人で遊んでいるなら、敵にタイミングを合わせるより一緒に遊んでいる味方と合わせると面白そうなので「①誰かの」という部分を「味方の」にしました。
更に複数人ならではの変更として以下のように具体化します。

気持ちいい → 達成感を共有できる

太字は核

これで「⑩気持ちいい」の抽象化前の「自慢できる」が複数人用にアレンジされ「達成感を共有できる」という別の気持ちよさに生まれ変わりました。

これでこのシステムを複数人用にアレンジできたと思います。

そして次に「高難易度」から「普通の難易度」に変更するために
「⑤有利 or 不利になる」の「不利になる」を削除します。

有利or不利になる → 有利になる

核を方向性に従って少しだけ変更

これで失敗時に不利になることがなくなり難易度が下がりました。

そして出来たものがこちら。

味方のアクションに合わせてタイミングよくアクションすることで有利になる
というシステムで、その結果として
防御面と攻撃面で得をして、達成感がありそれを共有できる
という結果を得られる。

というものになりました。
最初のシステムからどのように変わったかというと以下の通りになります。

「誰かの」→「味方の
「攻撃に合わせて」 → 「アクションに合わせて
タイミングよく
「防御行動することで」→「アクションすることで
「自分に大きく有利 or 不利になる」 → 「有利になる

太字は現在の状態

・敵の攻撃を無効化できる → 防御面で得をする
・敵に大ダメージを与えることができる → 攻撃面で得をする
・タイミングが難しいので成功時の達成感がある → 達成感がある
失敗時にはダメージをくらうのでスリルがある → スリルがある
・自慢できる → 気持ちいい → 達成感を共有できる

太字は現在の状態

こんな感じです。

難易度を下げるために「不利になる」を削除してしまったので、どう面白いかの部分の「スリルがある」は消えてしまいました。

さて、これで方向性のアレンジは完了しましたのでここから更なる具体化をしていきたいと思います。

このシステムを具体的にどのようなシステムにしていくか。
抽象化したままでまだよく分からない項目がいくつかあるのでそれを具体化していきます。

具体化しなければならないものはこの6つ。

「②アクションに合わせて」→ アクションとは?
「④アクションすることで」→ アクションとは?
「⑤有利になる」→ どう有利になる?
「⑥防御面で得をして」→ どんな得をする?
「⑦攻撃面で得をして」→ どんな得をする?
「⑧達成感があって」→ どんな達成感?

ここで一つ気になるのが、先ほど難易度を下げるために不利になるという項目を削除してしまいました。
少しリスクの部分を削りすぎてしまったかもしれませんので、少しだけですがリスクを足しつつ具体化をしていきたいと思います。

パリィには失敗時にダメージを受けるという大きなリスクがありましたが、これを削ってしまったので、リスクが減りその分スリルがなくなってしまいました。

しかしリスクを付けすぎるとまた高難易度向けのゲームになってしまうので、MPが減るという少し小さなリスクに変更したいと思います。
そのために②と④の「アクション」を「魔法」に変更します。

こうすることで失敗時に小さなリスク「MPが減る」を追加しつつ、②と④を具体化することができました。

次に「⑤有利になる」の部分がまだ具体性が足りないので、そこを「威力が増大する」にしてどのようなシステムかは完成です。

そして仕上げに、その結果どう快感なのかを考えます。

「⑥防御面で有利になる」を「周りにいる敵は吹き飛ぶ」にします。
周りの敵が吹き飛べば攻撃されないので、防御面で有利になりますね。
⑦は⑤とほぼ同じなので、既に⑤が具体化されているのでOKです。
そして「⑧達成感がある」は抽象化前の「タイミングが難しい」のままでいいと思いますのでそのままにしておきます。

これでやっと完成です。


人はほめて伸びる。ほめのび。

■完成

そうして完成したシステムはこちら!

味方の魔法に合わせてタイミングよく魔法を撃つことで威力が増大する

パチパチパチ!
ようやく完成しましたね。

(どんなシステムか想像が付きにくい方はファイナルファンタジークリスタルクロニクルのマジックパイルというシステムに似ていますので、そちらを参考に。昔CMで「せーの、ファイガ!」って言ってたやつです。)

さて、ここでこのシステムの核が何であったかを思い出してください。
誰かのアクションに合わせてタイミングよくアクションをすることで有利になる」でしたね。

生まれ変わったシステムと比べてみてください。
味方の魔法に合わせてタイミングよく魔法を撃つことで威力が増大する」なので、核は変わっていませんね。

そしてもう一つ大事なのが、このシステムを見て「パリィのパクリだ」という人はいませんよね。
それが上手くアレンジできた証です。

このような手順を踏むことによって、核は変わらずに新しいシステムを作り出すことができました。

そして忘れてはいけません。
そのシステムがどう面白いのか。

変更前と変更後を比べてみましょう。

▼新システムがどう面白いか
攻撃を無効化できる → 防御面で得をする → 周りの敵が吹き飛ぶ
タイミングが難しいので達成感がある(変更なし)
失敗するとダメージ → スリルがある → 失敗するとMPが減る
敵に大ダメージ → 攻撃面で得をする → 魔法の威力が増大する
自慢できる → 気持ちいい → 達成感を味方と共有できる

太字が核です

しっかりと核を維持したままアレンジできたと思います。

ふぅ、疲れましたね。
お疲れ様でした。

過去の体験をアレンジして新しいゲームシステムを作る方法、わかりましたでしょうか。

それでは最後にまとめに入りたいと思います。


no note is no life.

■まとめ

このようにゲームシステムにしろ何にしろ、自分の過去の体験を上手くアレンジすることで、同じような体験でも別の方向性のものへと生まれ変わらせることで自分独自のゲームシステムを作ることができます。

しかし、実は自分が経験した「すごい!」と思ったことを参考にするということは皆さんが自然としていることなのです。
意識的にしている方もいるでしょうし、無意識にしている方もたくさんいると思います。

ただそれをなんとなくでしているか、理論立ててしているかで結果は変わってくるのではないでしょうか。
私は後者の方が良いものができる可能性は高いと思っています。

なので、是非何か作ろうと思った際にはこの方法を試してみてください。


人間は自分の過去の体験で何かを面白いと思ったからこそ、それが面白いんだということを理解し吸収し、その面白さを自分でも再現できるんだと思います。

自分がひらめいたと思うアイデアも必ず自分の過去の体験に基づいている、言い換えれば元ネタがあるものなので、その元ネタを増やすためにも参考になりそうな体験を沢山していきましょう。

ゲームクリエイターであれば世間で流行ったゲームはとりあえず少しは触ってみて損はないと思います。

そしてもしそれを自分でも再現してみたくなった時、この話を思い出してみてください。

これはゲームを作る場合以外にも色んなクリエイターの方も同じだと思いますので、自分が感じた体験で参考にできそうなものは日々メモしておくと良いと思います。
そして何かを作りたくなった時にその自分のメモが大切な引き出しとなりますので、それを上手く自分流にアレンジして自分だけの最高の〇〇を作り出していきましょう!

それでは長くなりましたが、この辺りで終わろうと思います。

あ、最後にひとつ。


ゲームクリエイターの方への余談ですが、ゲームシステムというものは単独で面白いものではなく他のゲームシステムとの関係性(親和性)がとても重要で、他のシステムとの噛み合いを考慮しなくてはいけません。

せっかく今作ったシステムも、他のシステムとの噛み合いが悪ければ本領を発揮できません。

もし、その話も興味がありましたらそれに関しては以前にnoteを公開しているのでそちらも読んでみてください。

以上です。
長文をここまで読んでいただきありがとうございました!

Nesでした。

↓おまけ

そんな私がこのような考えを元に作ったゲームがSteamで発売されているので良ければ遊んでみてくださいね(宣伝)

遊んでいただいた方からは「時間が溶ける」と好評です!

Twitterのフォローも是非に~

↑ここを押すと飛べるよ!

↓のハート押すとキャラクターが飛び出してくるので、この記事がよかったな~と思ったら押していただけると嬉しいです!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?