ゼルダBoWに習う「面白さの作り方」
誰もが知る「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(以下BoW)
このゲームを遊んだことある人は多いと思いますが面白いポイントはたくさんありますよね。
今回はこのゲームを例に、ゲームシステムとはどのようにして面白く作られているのかを書いていきたいと思います。
■BoWの面白さ
まずはBoWの面白さについてです。
色々なポイントがあると思いますが、その中でゲームデザイナー目線で私が注目した点は以下の点です。
他にもいくつもありますが、大きくはこの3つです。
1.歩いてるだけで楽しい!
というのはこのゲームを遊んで自分が持った第一の感想です。
とにかく歩くことで楽しい事(報酬)が見つかる。
これは「歩く手間」を支払って様々な報酬が貰えるガチャだと思いました。
が、詳細は別の記事で今度書きます。
2.試練の祠を考えるのが楽しい。
これの面白さは解法が1つではないこと。
パズルゲームというのは通常「作り手が想定した方法」でクリアするもので、解法が一つであることが多いです。しかし、正解への道筋をたくさん用意することでプレイヤーの「やってやった感」を増幅させることができ、プレイヤーの満足感が高くなります。
3.パラセールで飛ぶのが楽しい。
これがもう相当楽しい!
マイクラのエリトラなど、似ているシステムは色々ありますが実はそれらとは異なる部分が多々あります。
では何故パラセールが楽しいのか紐解いていこうと思います。
■パラセール解析
パラセール、楽しいですよね。
ずっと飛んでいたいですよね。
では何故パラセールが楽しいのか。
まずはこの楽しい要素を分析して箇条書きにしたいと思います。
こんな感じでしょうか。
なんか後半はデメリットなのでは…と思うかもしれませんがそうではありません。むしろそこが重要なんです。
ゲームシステムは便利で楽しくて爽快感があればあるほどいいというものではありません。
不便さとデメリットも必要なんです。
また、ゲームシステムというのは複数のシステムが複雑に絡み合って出来ているので、他のシステムとの差別化や親和性を考えて作ることが重要になります。
BoWの移動手段には他にも馬や祠ワープもあるので、それとの差別化といった観点からも合わせて先ほどの要素を説明していきたいと思います。
■パラセールの楽しさ解説
・地形を気にせずに飛べる
ゲームの大半が移動しているBowにとって、地形を気にせず目的地へ一直線で向かえる事はかなり爽快です。(ゼルダの一番のストレスポイントである壁面昇ってる時に雨が降ってくるストレスと戦わなくても良いですし…)
速度に関しては馬の方が断然速いですが馬は段差や障害物には弱いので、そこが馬と差別化がされている点です。
・未知の発見がある
上空から見下ろして探せるので探し物にはパラセールが圧倒的に便利です。
コログの謎解きなどのフィールドの様々な仕掛けも上空から見てわかりやすいように考慮して配置してある(周りとの高低差があるオブジェクトが多かったり、探し物が物陰にあったりしない)ので、その点でもパラセールの価値を高めています。
また、移動手段として優秀な祠ワープは目的地へ近づく手段としては速いですが、一度行った場所にしか行くことができず、瞬間移動なので未知の発見はありません。そこが祠ワープと差別化されています。
・景色が綺麗
自然が多く、遠くまで見渡せることで景色を見ているだけでも楽しいです。
また、突然大きな龍が空を駆けていたり、近づくと神秘的な BGM が流れると言う演出も相まって景色を眺めるのが楽しくなります。
私がこのゲームで一番テンションが上がったのが龍を見つけた時でした。
このようなレアイベントを発見しやすいこともパラセールの価値を上げていると思います。
・手軽に使える
ボタンひとつで使え、アイテムとして持ち歩いているのでいつでも使える手軽さが魅力です。
馬のように近くまで迎えに行ったり、特定の場所に行く必要がありません。
・高所からじゃないと意味がない
マイクラのエリトラとは違い上昇することができないので、使用するときは高所に登ることが必要になるのですが、そういった手間が必要になることで使用する状況が限定され、飛べた時の喜びもアップします。
また、基本的に人は高いところが好きなので、より高いところを探すのも楽しくなります。
・スタミナが必要
飛ぶためにはスタミナが必要になりますが、これが本当に重要です。
スタミナを消費するようにすることで限定感が出ます。
限定感を出すことで飛んでいる状況にありがたみが増し、自分がその限定された状況の中にいると言う満足感を得られます。
それに加え、スタミナを増やす=パラセールで遠くまで飛べるという事になり、取ったら終わりではなくスタミナを増やすことでパラセールが成長するので、それが小目標となりゲームを続けるモチベーションにもなります。
この様にパラセールはスタミナというシステムの重要性を上げ、スタミナの存在はパラセールの爽快感を上げることに一役買っているので、お互いのシステムがお互いに楽しさを生み出して最高のシナジー(相乗効果)を生み出しています。
飛ぶのにスタミナが必要というのは人によっては不便と捉えるかもしれませんが、スタミナはゲーム内で増やすことができるので、そこで不便から便利になる快感も得られますし、実はその不便さが楽しさの素でもあります。
・序盤は使えない
序盤は移動手段が歩くことしかありませんが、その「不便さ」を体験させておくことでパラセールで空を飛べるようになった時の喜びが非常に大きくなります。
その瞬間が一番不便から便利になる快感を得られるのではないでしょうか。
■楽しさの答え
上記のことからまとめるとパラセールはただ飛ぶだけのシステムではなく、多くのシステムがパラセールの爽快感や楽しさを底上げする為に上手くシナジーを生み出していることがわかります。
先ほどの各項目の太字の箇所を見ていただけると分かると思いますが、馬が障害物を軽々乗り越えられたり、コログ等の仕掛けが上空からでは分かりにくい配置となっていたり、レアイベントも特に存在せず、スタミナ不要で飛び放題で、最初から使うことができ、上昇もできてしまっていたらパラセールの面白さや価値は大きく下がってしまいます。
『馬は速い代わりにあえて使い辛くすること』や『パラセールは最初からは使うことができない』『スタミナが必要』という一見不便だと思う要素が実はパラセールの面白さの秘訣だったりします。
このように一つのゲームシステムは他のシステムによってお膳立てされることで楽しさや価値はどんどん上がっていきます。
なので、何も考えずに独立した面白いシステムを大量に作るよりも、一つ目玉となるシステムを作り、そのシステムを他のシステムがサポートしたり、逆に制限したりしてあげることでそのゲームシステムを昇華させることができるのだと思います。
システムを作る際には決して単品で見ずに、他のシステムとの相乗効果をよく考え実装していくことでより面白いシステムを作ることができるので、ゲームシステムを作る際にはこれを頭の隅、いや真ん中に置いていただければと思います。
間違っても「パラセールたのしー!明日うちのゲームにも入れよう!」
と何も考えずに自分のゲームに実装しないように…。
デミグラスハンバーグが美味しいからといってそのままカレーに突っ込まないで、せめてデミグラスソースを落としてからカレーに入れましょう。
どんなものも馴染ませる事は重要です。
■最後に
私は面白いゲームシステムを見つける度に「それが何故楽しいのか」をお風呂なり、布団の中なりで日々考えています。
そうやって解析して分解することで面白いゲームシステムを作る材料が集まっていってます。
クリエイターの方はゲームを遊び終わった後には、そのゲームが何故面白かったのかを考えてメモしておくのが本当にお勧めです。(大抵の方はやっていると思いますが)
そうするといつの間にか面白いゲームを作る材料が溜まっていくので、是非遊び終わった後はそのゲームを分析してくださいね。
それでは今回はこの辺で…
終わりではありません。
私がその集めた材料で作っているゲームがこちら!(宣伝)
気軽に遊べるタワーディフェンスゲーム「犬神ディフェンダーズ」。
ゲームシステムとレベルデザインに全力を込めて「面白さ」と「中毒性」を詰め込んでいます。
「システムとバランスによる面白さ」をどこまでも磨き上げた作品です。
遊んでみて初めて面白さを体験できるので完成した際には是非触ってみてくださいね。
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必ず「もう一回」と何度も言わせてみます!
以上、LibragamesのNesがお送りしました。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
この記事が皆さまの面白いゲーム作りの手助けになりますよう。
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