見出し画像

久住昌之、久住卓也(Q.B.B)『古本屋台』 : 日本的な、如何にも日本的な。

書評:久住昌之、久住卓也(Q.B.B)『古本屋台』(集英社)

いかにも、古本好きの「あったらいいな」という、リアルな幻想物語。

そう。古本好きを自認する者なら、つい褒めて、仲間宣言をしたくなるような作品だ。

だが、あえて注文をつけさせてもらうと、本作は、いかにもガロ系の人らしい「渋好み」に、裏返しのエリート意識が漂い、そこはかとなく鼻につく。

それは、重厚長大耽美豪奢な文学作品とか、構築的な作品とか、ハードSFや本格ミステリといった論理性の文学だとか、西欧哲学や思想書といったものを、「古本趣味」から敬して遠ざけながら、それ以外の「渋い本」に「通好み」を見るようなセンスだ。

言い換えれば、「私小説が最も深い文学だ」と主張し、それを奉じた日本人的感性が、こんなところに生きていた、ということにもなるだろう。

そういうものもまた、「趣味」として理解できるし、悪いとは思わないが、「この渋さこそ、古本趣味の極まるところ」みたいな顔をされるのは、ちょっと黙認し難いところであるので、一言、意見させていただいた。

初出:2018年4月12日「Amazonレビュー」
  (2021年10月15日、管理者により削除)

 ○ ○ ○















この記事が参加している募集

読書感想文

マンガ感想文