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家の鍵をなくしたら、国宝級イケメンに会えた

人生で初めて、家の鍵をなくした。

車で片道40分の友人の家に遊びに行き、見事に置き忘れてきたか、どこかに落としてきた。


その最も悲しいお知らせに気が付いたのは、帰宅した19時半、マンションの階段を登りながらでした。

友人に連絡すると、外食に出てしまい鍵を探せない状況だと言います。
いそいで管理会社に電話を掛けるも、虚しく流れる営業時間終了のアナウンス。


外は、コンクリートを叩き付けるような激しい雨。

開けられない扉の前で、一緒に出掛けていた愛犬が、くぅんと声を出します。


泣ける。


かつて思い描いた人生計画では、イケメンでイクメンな旦那さんが親子丼を作って待っていてくれるはずだった25歳。

しかし現実は、食材の詰まったエコバッグを片手にした独身アラサーと、腹すかしの犬です。
こんな所でおいおいと泣いている場合ではありません。



マンションの管理会社は、営業終了からすでに1時間半が経っています。
ダメ元で店舗へ向かうと、ロールカーテンの下がった建物内は灯りがついていました。

ほっと胸を撫でおろし、トントンと窓を叩きますが、反応がありません。


これは一世一代の大ピンチ。


勇気を振り絞ってドンドンと、身体に動物園のチンパンジーを宿して(?)暴れると、奥で人影が動きます。
どう考えても怪しすぎる。


少しすると裏口のドアが音を立て、暗闇から様子を伺いながら、スーツ姿のお兄さんが現れました。


「こちらでお世話になっている者ですが…」と、不審者ではない旨、状況を口早に説明したところで、私の思考は停止しました。

薄明かりに照らされた、ノーマスクのお兄さん。
ものすごっっっっっくイケメン………!!!


国宝級イケメンとはよく言ったものです。

彼は人気俳優さながらの王道 国宝級イケメンで、
人生で出会った人の中でずば抜けて一番の美形でした。


清潔感のある黒髪に、スーツ姿。
誠実な話し方と、品のある佇まいも相まって、話がまったく入ってこない。
数秒前、チンパンジーばりにガラスを叩いたことを、海より深く後悔しました。


しかしここで相棒の腹すかしの犬が、隣に停めた車から大きく吠え、わたしは気を確かにします。


イケメンお兄さんは、
「僕たちが直接行って開けると6,600円、スペアキーを作ると2,200円料金がかかってしまうんですよ」と、丁寧に説明してくれます。


国宝級イケメンと夜のドライブ
(マンションまで約5分)を楽しむには6,600円?!

結構いいお値段ですけど、悪くないかも……。


一人で帰れて、料金も安く、すぐ鍵が手元にくる。

何をどう考えても2,200円でスペアキーを作ってもらうほか選択肢はないはずです。

されども、冷静な判断ができなくなってしまうのが、国宝級イケメンの恐ろしさ。



結局田舎大特価の2,200円を払って、イケメンお兄さんに新しい鍵を作ってもらいました。

出来立てほやほやの生温かい鍵を受け取りながら、
素敵な人って、会えるだけでこんなにワクワクするんだ……と感動を噛み締めます。

営業時間外に対応していただいたお礼を伝え、無事家路に着きました。



女優の吉高由里子さんが、
“どんな人でありたい?”という質問に

好かれようとは思わないけど、
また会いたいって思われる人間でいたい。
人生を好きに謳歌して結果、長生きできたらそれでいい。

美人百花 インタビューより

と語っていた言葉が蘇ります。

美男美女にかかわらず、素敵な人に会えると嬉しいものです。


お兄さんに作ってもらった鍵を宝物にし(色んな意味で)
より一層、人間的に成長していきたいです。


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