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空が高くなるころに

高校は廊下に出ると山が目の前にあり、新緑、深緑、黄色、赤… ともくもくした葉を染めながら楽しませてくれた。

蝉の鳴き声が弱まり風がきゅっと引き締まってくると、夏から秋に変わる合図だ。



空が高くなってきたね



空を見上げるたび、友達はそう言ってたっけ


今年の夏から秋の変わり目は、3年ぶりに日本で過ごす。


いつもお盆明けくらいに留学先へ戻っていたから、気温、香り、音、一つ一つが懐かしくてその変わりなさにほっとする。


毎日35度を越えていたのが夢だったかのように30度までしか上がらない気温
明け方から大音量の目覚まし役になっていた蝉は短い一生を終えて道路でひっくり返っている
夏休みが終わり通常の学校モードに戻る学生たち、スカートやバッグ、靴下から今の流行を知る
夏野菜の美味しい食べ方を特集するテレビ番組を見ながら、家庭菜園の野菜はとっくに終了したよ、なんて家族と話す



8月最後の日は祖母の誕生日だ


父は朝から近所のお店にケーキを買いにいった。
「今日はおばあちゃんの誕生日だからケーキ食べるよ。誕生日おめでとうって言っとくんだよ。」


うーん、と曖昧な返事をする。



何のケーキがいい?



チーズケーキ

と答える。


なんとなくケーキを食べる気分じゃない。
しかし「食べない」という選択肢はなさそうなので一番食べやすそうなチーズケーキをリクエストした。


実家にいると自分の今までとこれからの人生、家族関係なんかを無意識に見つめなおしている。


大丈夫、自分のペースで生きていこう
自分の選択は自分にしか肯定できない


You are right on time.
You are not too late.


友達の残した言葉を何度も脳内で再生し、あの子は元気かな~と思いを巡らす8月最後の日。

頂いたお礼は知識と経験を得て世界を知るために使わせていただきます。