【ねこ好きの本棚】#3 動物たちのセカンドチャンス
こんにちは。今週も見ていただきありがとうございます。
本日紹介する本は
犬や猫を飼っている人、保護施設や動物カフェで働いている人
にはぜひ読んでほしい
『日本の犬猫は幸せか 動物保護施設アークの25年』
エリザベス・オリバー著
です。
少し固いようなタイトルですが、オリバーさんの動物愛がこもった熱いラブレターのようなものなので軽い気持ちでまずは覗いて見てください。
オリバーさんはイギリスで生まれ、現在は大阪で動物保護施設アークを運営し、東京などにも支部を持っています。
どんなお話?
簡単に言いますと
オリバーさんが日本で動物保護施設アークを創設し
今日に至るまでの奮闘記と
保護動物達と歩んだ中で見えた日本の動物保護の問題提起
になります。
動物愛溢れる彼女の情熱と彼女が伝えたい飼い主としての心構えには
うなずけるポイントがいくつもありますので
是非読んでいただけるといいなと思います。
では早速お話に入っていきましょう!
まず一つ目は
ペットを飼う責任
についてです。
ペットを飼う人なら誰もが持つべきものです。
彼女自身がこれを学んだのは7歳の時でした。
イギリスで生まれた彼女の家にはシャム猫やウサギなど
多くの動物と暮らしていました。
すぐに動物が大好きになった彼女は3歳のころ
自分のポニーが欲しくてたまらず母親に
「ポニーが飼いたい!」
とおねだりしたそうです。
しかしは母親はきっぱりと断ります。
「ダメ。ペットを飼うにはそれなりの責任がいるの。
ポニーを飼うにはどんな責任がいるのかあなたが理解してからよ。」
彼女は必死にその責任を理解しようと自ら馬のいる厩舎に行き
ポニーのお世話を学びます。
彼女がポニーを飼うことを許されたのは7歳になるころでした。
めちゃくちゃ早いと感じますよね。ポニーなんて体重300kgはあるような大きな動物です。
それをやっと小学校に上がったばかりの少女がポニーのお世話をマスターし乗馬大会で賞金をとるレベルにまでなったのです。
さてまだ小学生の彼女が学んだ責任とはなんだったのでしょうか。
本書の中では
「おなかが空いていてもまずポニーにご飯を上げることを優先した」
とあります。
いや当たり前でしょ、とおもうかもしれません。
これは国際的な動物福祉基準である5つの自由の一つである
「飢えと渇きからの自由」
にあたります。
日本の飼い主で知っている人はかなり少ないかもしれませんが
書かれている内容はごく当たり前のことだとばかりです。
5つの自由とは
飢えと渇きからの自由
不快からの自由
病気からの自由
正常な行動をとることができる自由
不安とストレスからの自由
要するに
飼い主はペットが空腹や病気、ストレスに苦しむことがなく快適に暮らせるように努めましょう
ということです。
飼い主さんにはぜひ押さえておいてほしいポイントです。
当たり前のことを当たり前にする難しさは何となく分かりますよね。
彼女は少女のころに母親から、厩舎で働く人から、また自らの経験体験を通してこれを学んでいます。
・小さいころに命の大切さを教えてくれる大人が身近にいることの大切さ
・学びたいものに出会う環境の大切さ
もこの本の序章からでも分かります。
さて次は
動物保護施設とはどんなところなのか?
です。
近年では保護犬、保護猫を迎え入れる飼い主さんが多くて大変喜ばしいことです。多くは保護猫カフェや譲渡会が出会いの場だと思います。
ではその背景にある保護猫、保護犬たちを保護している施設はどんなところで、またどんな現実と向き合ってきているのでしょうか。
まず動物保護施設(以下アニマルシェルター)とは
居場所を失ってしまった動物を保護し新しい家族を探すお手伝いをする場所
です。
世界には様々なアニマルシェルターがありますのでご興味のある方はぜひこちらも読んでみるといいかと思います。
ポップな文体とその国の一般の人々の話をたくさんの写真とともに綴っているので読みやすくてとってもおすすめです。シェルターのイメージも大きく変わると思います。
動物が保護される経緯は様々ですが多くは
①飼い主の飼育放棄、多頭飼育崩壊(行政からの依頼、民間の通報)
②一般の保護依頼
③TNRで人になつきすぎてしまった子たち(これは意外かもしれません)
④災害等で飼い主を失ってしまった子たち
があります。
そしてアニマルシェルターでは大きく次のような現実と向き合っています。
①居場所を失ってしまった動物と救えなかった命
②新しい家族のもとで幸せに暮らす生きている命とその家族
③どうして保護してくれないのかという世間からの風当たり
④行政との板挟み
もしかしたら①や②についてはイメージを持つ飼い主さんや世間は多いかもしれません。
しかし保護活動家たちは常に③や④とも向き合っています。
これがまぁ辛い。
そして保護動物たちの未来を明るく照らすにはここが鍵になると
オリバーさんは言います。
ところで皆さんは
「保護シェルターは動物を保護して当たり前」
そう思っていませんか??
もちろん保護活動家たちも全力を尽くします。
ですが当然キャパシティはあります。
シェルターがシェルターであり続けるためには条件があります。
それは動物たちのQOLを保ち続けるために
・保護できる動物たちの数
・動物たちが生活できるスペースとお世話する人材
・動物たちをお世話できるだけの経済力
この3つのバランスを保つことです。
そうすることで保護した命を新しい家族につなげ続けることができます。
このバランスが崩れてしまえば、シェルターは一転して
アニマルホーダーとなり多頭飼育崩壊を起こしてしまいます。
それではせっかく保護したのに本末転倒ですよね。
なのでそのバランスのために受け入れられないこともあります。
ですが全く手を差し伸べられないわけではありませんのでそこは
『お願い』ではなく『相談』をしてもらえるとこちらもすごく助かるのです!
では次にオリバーさんが最も伝えたいであろう
動物保護の問題と改善、私達ができる手助け
についてです。
問題点についてですが、これは対処療法ではなく原因療法が肝心です。ではオリバーさんが唱える日本の最も大きな問題は何かというと、
行政や各活動家間で連携が取れていないこと
です。
日本には
『動物の愛護及び管理に関する法律(通称動物愛護管理法)』
が制定されています。
簡単に言えば悪質な動物取扱業者が出ないように取り締まり、また飼い主の責任を定めるものです。
海外にも同様に動物愛護に関する法律がありますが、大きく違うのは
行政に動物の問題に対処する専門家がいかいないかということです。
実は日本には動物の専門家はいても問題に対処する専門家は
行政にはいません…
海外では動物問題に対して警察と連携して取り組んだりすることが普通です。ですが日本ではそういったこともなければ、動物保護の専門家もいないので問題に対して行政だけで対応するとどうしてもお役所主義のお堅い対応になったり、行政でどうにもならなくなってから手遅れ寸前で民間に丸投げなんてことになるわけで、
そこに対処する保護活動家や、冷たくあしらわれる対処を依頼した一般の方の風当たりは強くなってしまう、という悪循環が今の日本です。
そこをすぐに解決できれば早いのですが、なかなかそうはいきません。
ではどうするか、
それは一般の方の意識を別の方法で変え、
また動物保護間で連携を強くすること、です。
人々の意識は集団になると強いものがあります。
多数決なんて正にそのいい例ですね笑
この意識改革について本書で示された面白い実例があります。
イギリスには『ドッグトラスト』という動物保護組織があります。
ドックトラストはもともとNCDLという名で、犬を動物実験に使うことに反対の声をあげたり保護犬活動をする団体でした。
しかし活動自体に暗いイメージがあり、看板の色も藍色だったり、犬の辛い現状を訴えるようなものでした。
https://www.news-digest.co.uk/news/features/5614-dogs-trust.html
そこに一人の女性クラリッサボールドウィンという女性が広報として参画することで団体の成長とこの活動は急加速します。
イギリスではクリスマスプレゼントに子犬を贈ることが多く、その後の捨て犬が増えていました。これを受け
「A Dog is for Life, not just for Christmas.」
(犬はクリスマスだけじゃなく生涯のパートナーだよ)
というメッセージを発し、これが犬の過剰繁殖や捨て犬を呼びかけるきっかけとなります。
また団体のイメージも一新し、藍色の看板からポジティブな色の黄色で犬たちが笑っている看板に変更、保護施設も市民が訪れやすいように明るい場所へと変えていきました。
因みにイギリスは1800年代中盤まで闘牛などで動物虐待にあたるようなことを娯楽にして楽しんでいた国です。
時のイギリス政府が
「動物虐待をして楽しむなど、貴族としての品位に著しく欠ける」
として動物虐待防止法が作られています。
このように人々に与える印象や打ち出す言葉を変え、人々の意識を180度
変えていったのです。
ではそんな日々奮闘している彼らに対して私たちができる手助けとはなんなのでしょうか。
それは
・保護施設を見に行ってみること
・既にペットを暮らしている方はこの先もペットを愛し、一緒に暮らすこと
・施設や一時預かりボランティアをすること
・寄付
です。
ペットを飼いたいと考えている方はまず、動物がいる場所に行ってみましょう。
日本の保護施設はネガティブな場所が多いですが、譲渡会や保護猫カフェなど出会いの場はしっかりあります。そしてそのあと保護施設を見に行ってみてください。まずは知ってもらうことが彼らの助けになります。
ペットと暮らしている方はこの先も一緒に暮らしていくために引き続き愛してあげてください。いやいや十分愛しています、そういう方も多いでしょう。ありがとうございます。
でももう一歩先、災害時に一緒に避難できるように準備をしておいてほしいとオリバーさんは言います。
日本は自然災害とともに生きる国です。
日本はここ5~6年周期で大規模地震も起こっています。
東日本大震災では多くの人の命が亡くなり、そしてペットと同行避難ができず、飼い主を失った犬猫もたくさんいます。
アークはできる限り保護しましたが、
一緒に避難し、保護されないことが一番なんですよね。
あとはボランティアです。
保護施設の運営は本当にボランティアのサポートなくして成り立ちません。
実はボランティアは助けるとともに結構楽しいものです。
私も保護猫カフェでボランティアしていますが、猫の成長を間近で見れたり、ひそかに推し猫ができて、合間時間に遊んだりしてます笑
犬のボランティアであれば、お散歩することで実際に犬を飼った時の
シュミレーションにもなります。
お友達とかとお気軽にやってみてはどうでしょう。
もし合わなければやめればいいだけです。
ボランティアとは自由に参加するものなのですから。
そして寄付。
これめっちゃ大事。
なぜかって、海外の動物保護施設はほとんど寄付金だけで運営できてるからです。
そんな感じで手助けは思いだけでなく形にしてもらえるとすごく助かります。それは寄付でもボランティアでもただ見に行くだけでもいいんです。
そしてそれをSNSで紹介したりしてくれるとすごく助かるって寸法です。
そんなサポートをして生きてきた動物達の様子を最後に綴ります。
動物たちのセカンドチャンス
本書で出てくるキーワードですね。
セカンドチャンス、つまり新しい家族に迎え入れられたり、居場所を見つけるチャンスのことです。
本書ではいくつかセカンドチャンスをつかんだ動物のエピソードが登場します。
その中で特に私がいいなと思ったのは
【スポンサードックのジョーイ】
です。
ジョーイは多頭飼育崩壊の現場で死にかけの状態で救出された雄犬で
後ろ足が栄養失調等で変形している子でした。
彼はその容姿や、タイミングも重なり里親が見つからず数年をアークで過ごしました。
そこでアークは彼を「スポンサードッグ」にしました。
スポンサードッグとは飼えないけど飼いたい、応援したいという人が
その犬に養育費を支援したり、施設に来てお散歩をしたりできるもので、そうやって飼わずともまるで飼っているかのようにできる制度です。
そうしてチャンスを得る時間を長くもらったジョーイは新しい家族を見つけることができた、というエピソードです。
日本ではアレルギーや住宅の条件などで動物を飼いたくても飼えない人、が多くいると思います。
そんな人はスポンサー制度を利用してみるとどうでしょうか。
飼っている気分になれ、またお世話も実際にできます。
このアークという施設は動物福祉先進国であるイギリスを参考にして作られており、スポンサー制度をはじめとして園内のドッグランや、自然豊かな場所での開園、明るく開けた雰囲気で市民も訪れやすい作りにするなど多くのしています。
動物保護施設は暗い場所というイメージを一新する場所です。
また日本では他にもセカンドチャンスを得るための場所、その受け皿を担う場所が最近できました。
岩手県にある『ペットの里』です。
ここは12万平米という広大な土地に、ドッグランや保護猫カフェ、キャンプ場などを併設しています。
この施設は海外の施設と同様にスポンサー制度があったり
高齢者でも犬猫の飼い主になれ、もし飼えなくなってもまたペットの里で引き受けができるところにあります。
コンセプトはペットにとっての最後の砦、そしてペットと暮らす人がより楽しく訪れられる場所、人とペットにとっての聖地です。
詳しい内容はwebサイトやこの施設を作っている出前館創業者花蜜氏のフェイスブックを見てみてください。
ぜひ訪れてみる、サイトをのぞいてみてください。
このように保護動物たちのセカンドチャンスを得られる場所を作ること、その仕組みを構築することも保護活動家たちは日々奮闘しています。
ぜひ動物保護の背景を知って、彼らに差し伸べられる手があなたにあることを気づいてもらえられたら幸いです。
ではまた来週!
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