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真剣な顔も見ていたい。

真剣に髪の毛を切る夫。

そう。

私は今、自分の後ろの髪の毛の全てを
夫に託している。

ま、ただのヘアカットのお話なんですけどね。

ただしびっくりなことに
夫は超真剣です。
「大変だろうから、適当でいいよ〜。」
話しかけても返事はない。
おいおい、大丈夫かいな。

コロナをきっかけに、初めて自分でセルフカットなるものを
やってみようと思ったのがこの出来事の始まり。
もともと前髪は自分で切っていましたが
流石に全体は怖いので、なかなか勇気が出ませんでした。
しかしその後YouTubeなどでカットの方法をよく見るようになり
段々と影響され、やってみたくなったのです。
しかし、前や横は自分でできるものの、
やはり後ろは危険な香りがぷんぷんしました(笑)
そこで夫の出番です。

私「髪切りたいから、後ろの方切るのお願いしまーす。」
夫「え。嫌だ…」

夫は結構拒否してましたねぇ。
失敗したら嫌なんです、と。
申し訳ないんだって。

私「大丈夫だよ〜少しずつ切っていけばいいし途中で確認するし。
      少しズレてても気にしないから全然適当でいいよ。」
夫「こんな大事なこと責任とれないしやだなぁ…
  しかも今まで人の髪なんて切ったことないよ?
  それでもいいの大丈夫?」

真面目な夫は心配して何度も聞いてくれたが、
ちょっとめんどくさくなってきた私は(笑)、
とりあえず準備を始め、髪を切る環境をつくったのだ。
そして前やら横やらを自らザクザク切り始め、
残すは後ろのカットのみになった。

笑顔で夫にハサミを渡す。
夫も覚悟を決め、ハサミを受け取る。(何かの儀式か?)
そして私は、手鏡で後ろにいる夫の様子を見つめる(笑)

切るか切らないか位の感じで、まずはハサミを入れる夫。
そこから静かに小さくチョキチョキ聞こえてくる。
優しく自信なさげなチョキチョキ。
時折「ふぅ…」と、なにやらため息が漏れる。
声をかけても反応なし。
手鏡で後ろの様子を探ると
そこには
めちゃめちゃ真剣な夫の顔が映っていた。

「あ、すごい一生懸命やってくれてる…」
適当でいいのに、なんでそこまで気にしちゃうかなぁ
と最初は夫の気持ちがよくわからなかったけれど、
真面目な夫は、自分のせいで私の髪型が変になっちゃたら
とても可哀想だと思ったのだろう。
基本、優しいのでね。
だからこそ、やると決めたからには一生懸命に切っていた。
丁寧に丁寧に、整えていく。

ある程度切り終わったのか、急に
「後ろのとこ、鏡でチェックしてみて」と言われた。
なんとまぁ、上手にカットされている。
「すごいね~上手じゃん。ありがとう。」と言うと
夫は満足気な表情で、
「でもやっぱり難しいや。美容師さんってほんとすごいね。」
と言っていた。

いや、あなたもすごいですよ。
あんなに真剣に取り組んでくれるなんて。
しかも綺麗にまとまってて、こちらはびっくりです。

本当にありがとうね。
とっても助かりました。

その日の私の夢には、
あの夫の真剣な表情がまた出てきました。
何をしていたのかは
全く覚えていませんが。

もしかすると
夫のあの真剣な顔を
もう一度見たいと
私は思ったのかもしれない。


ではまた。


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