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シロクマの子
あるところに真っ白なからだのシロクマがいました。
シロクマは一度でいいから自分のからだが真っ黒になったのを
見てみたいと思っていました。
「黒くなったらもっと強くてかっこよくなれるかなぁ」
そこでシロクマは真っ黒になるために
「黒」を探す旅にでることにしました。
![](https://assets.st-note.com/img/1661759394140-kP11yLB4OE.png?width=800)
シロクマはまずパンダに出会いました。
「おや、こんなところで何をしているんだい?」
そこでシロクマは訳を話しました。
「すてきだね。その黒いところ」
「そうかいそうかい。それじゃあ君にわたしの黒いところをあげよう」
そういうとパンダは自分の黒いところをシロクマにあげました。
パンダは黒い部分がなくなり、からだ全体が真っ白になりました。
シロクマはお礼を言ってまた歩き出しました。
シロクマは次に黒猫に出会いました。
「あら、こんなところでどうしたの?」
そこでシロクマは訳を話しました。
「すてきだね。その黒いところ」
「ふふふ。それじゃあ君にわたしの黒いところを差し上げましょう」
そういうと黒猫は自分の黒いところをシロクマにあげました。
黒猫は黒い部分がなくなり、からだ全体が真っ白になりました。
シロクマはお礼を言ってまた歩き出しました。
シロクマは今度は海苔に包まれたおにぎりに出会いました。
「やや、こんなところで何をしているのだ?」
そこでシロクマは訳を話しました。
「すてきだね。その黒いところ」
「そうかそうか。それじゃあ君にわたしの黒いところをあげるとしよう」
そういうとおにぎりは自分の黒いところをシロクマにあげました。
おにぎりは黒い部分がなくなり、からだ全体が真っ白になりました。
シロクマはお礼を言ってまた歩き出しました。
みんなから黒いところをもらったお陰で
とうとうシロクマのからだは「真っ黒」になりました。
シロクマは鏡の前で真っ黒になった自分の姿を見つめます。
前を見て
後ろを見て
お尻を見て
両手をあげて
シロクマは自分が望んだ通り
どこもかしこも真っ黒になりました。
けれどシロクマは気づいたのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1661774946893-syHXBZ8Lyk.png?width=800)
「これは僕じゃない」
シロクマは「真っ黒」になってみて、やっとわかったのです。
みんなひとりひとり違うことは自然なことであり
またそれは、とても大切なことであると。
みんながくれた「黒いところ」は
やっぱりみんな「それぞれのもの」だということを。
「よし。みんなに黒を返しにいこう」
シロクマは今度はみんなの元へ
黒いところを返しに行くことにしました。
パンダは喜びました。
「やっぱりこの黒がなきゃ自分じゃない気がしてね。感謝するよ」
黒猫も喜びました。
「やっぱりこの黒じゃなきゃなんだかしっくりこなくて。ありがとうね」
もちろん、おにぎりも喜びました。
「何度も塩むすびと間違えられたわい。やっぱりこの黒がないとな。助かったよ」
シロクマはみんなにお礼を言われました。
シロクマもみんなにお礼を言いました。
助けてくれたみんなはとても優しいひとたちでした。
「シロクマはやっぱり白いのが一番だね」
![](https://assets.st-note.com/img/1661757938391-akPd0VRQ7M.png?width=800)
シロクマは忘れかけていた自分の良いところを思い出しました。
そしてそれはシロクマが初めて真っ黒になったからこそ
気づけたことでした。
(おしまい)
ではまた。
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