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#3-3 北海道名寄市あったかICT物語【シーズン3(運用編)】

エピソード3「利用者さんの笑顔のために」

シーズン3では、2021年7月の本格導入から1年が経った名寄市医療介護連携ICTの運用状況について、引き続き、ICTを活用している専門職の目線で追っていきたいと思います。

エピソード3では、介護の現場にスポットライトを当てていきます。
名寄市南部に位置する風連地区にある「社会福祉法人 名寄市社会福祉事業団 デイサービスセンターフロンティアハウスふうれん」の宍戸さんにお話を伺いました。 

社会福祉法人名寄市社会福祉事業団デイサービスセンターフロンティアハウスふうれん宍戸さん

―大曽根(インタビュアー/地域包括ケア研究所)
宍戸さん、本日はよろしくお願いいたします。
 
―宍戸
はい、よろしくお願いいたします。

★「デイサービスのしごとが大好き!」

―大曽根
宍戸さんは風連のご出身ですか?
 
―宍戸
はい、風連で生まれ育ち、そして仕事もずっと風連です。
高校を卒業して最初は事務仕事を3年ほどしてしました。
 
―大曽根
最初から介護の仕事というわけではないのですね?
 
―宍戸
高校生の時に介護の仕事してみたいぐらいは少し思っていました。
事務の仕事を3年くらいしていた平成9年に、こちらができるって聞いたんで転職したんです。
 
最初は、デイサービスの介護員でした。
無資格で入って、ヘルパーや介護福祉士の資格をとっていきました。
 
―大曽根
地元で介護のお仕事ですと、利用者さんとの距離も近く、ものすごく親しみがあるんじゃないですか?
 
―宍戸
はい。
近所のお年寄りも来られてましたし、実際に私のおばあちゃんも通っていました。
 
―大曽根
そうだったのですね!
それはとても親しみ深いですね。
 
ちなみに、相談員になったのはいつ頃からなのですか?
 
―宍戸
運営主体が名寄市社会福祉事業団に代わったタイミングで、5,6年前でしょうか。
今でも介護員としても動いています。
管理の仕事も多くなってきて、最初は相談員の仕事が半分くらいだったのですが、徐々に増えてきましたね。
 
―大曽根
なるほど、そうなのですね。
宍戸さんは、介護の業界に入られてずっとデイサービスのフィールドということですか?
 
―宍戸
はい、そうです。
デイサービス大好きです!

利用者さんの作品などをエピソードと共に説明してくださる宍戸さん

―大曽根
大好きって言えるのステキですね!
どういう瞬間が宍戸さんにとって楽しかったりするんですか?
 
―宍戸
とにかく喜んでもらえることですね。
お風呂で背中を流してあげることもですし、敬老会などのイベントをすることもですし。
お年寄りってあまり喜ばないこともあるんですが、後から聞いたら「楽しかったよ!」って言ってくれるとうれしいですね。
 
―大曽根
なるほどですね!
先ほど初めて宍戸さんにお会いした瞬間から、お仕事を楽しみながらしていらっしゃる空気を感じてました。
 
―宍戸
しごとを始めた最初のころは、いつの間にか時間だけが過ぎていった感じですが、利用者さんとの時間を通してどんどん楽しくなっていきました。
でも、最近は事務仕事が多い時は、チーンってなってることも多いです(笑)。
 
―大曽根
利用者さんと会っている時にエネルギーが上がるんですね!
 
話は少し変わりますが、利用者さんとの接点以外の業務ということでいうと、事業所の外の連携という観点ではいかがですか?
 

★相談員になってはじめて見えてきた連携とICTで変わったこと

―宍戸
相談員をやる前は内側のことばかりで、連携のことまで考えることはほとんどありませんでした。
さまざまな調整が必要で、もちろんケアマネさんの名前も覚えなければいけない。

インタビューに答える宍戸さん

本当に相談員やってみないと、ICTが何かっていうのも分からなかったと思うし、でもTeamを使い始めてさらにさまざまな職種の方たちが利用者さんごとに関わっていることが見えてきました
 
ドクターも見てくれているのは安心です。
風連国保診療所の先生方や看護師さんたちもみんな見てくれてるんですよ。
 
今すぐ病院にかからなくても良いけど、少し診てもらいたいなという時に、Teamに投稿しておいたら見てくれてるんです。
 
―大曽根
そのように宍戸さんはICTを活用されているんですね。
 
―宍戸
はい。
他にも、ヘルパーさんから、「次回の受診はいついつです」って入れてくれたりするので、デイで気づいた様子や皮膚の状態などをこちらから入れておくと、「軟膏出しておきましたぁ」など返信があったりします。
 
―大曽根
Teamが入る前と後で連携や調整でどういう風に変わった感覚ですか?
 
―宍戸
そうですね、皮膚のちょっとしたことなどでは、ご家族も「大したことなさそう」「連れていくのが大変」と、病院に連れて行かないことも多かったです。
次に薬を貰いに行った時についでにとなったら、時間が空いてしまうことにもなりますしね。
今まではちょっと流されてしまうようなことがきちんと伝えられるようになったっていうのは大きいかもしれないですね。
 
―大曽根
具体的には皮膚の様子だとか浮腫みなどが多いですか?

★家での様子がデイに来られた時に役立つ

―宍戸
そうですね。
他には、薬のことなども大きいです。
薬剤師さんからも、きちんと薬を自宅でも飲めているかどうかなどの情報が入ると安心します。
デイサービスではきちんと飲んでもらっていますが、普段の家の様子までわからないので。
 
―大曽根
なるほど。
 
―宍戸
薬を自宅で飲めてない情報に触れると、ちょっと認知症が進んできているのかなって感じることもあります。
二人暮らしの方であれば、パートナーの方もちょっと気が回らなくなってきてるのかなって。
 
―大曽根
ちょっとアンテナが張るわけですね。
いろいろなサインとか、情報の切り口が増えた感覚はありますか?
 
―宍戸
あります。
計画書を見ればもちろん分かることなのですが、ヘルパーさんがどのタイミングで伺っているのか、そしてヘルパーさんを通して自宅での様子なども見えてきます
ヘルパーさんも血圧とかを把握されているんだということなども、よく知らなかったことでした。
 
訪問看護とも直接の接点はないですが、Teamに訪問看護でこんなことやりましたよ、という情報などを参考にすることもあります。
たとえば、訪問看護で体操もやりましたという情報が投稿されれば、利用者さんが頑張っている様子が分かるので、デイサービスでも同じ体操をやってみよう、など。
 

ICTの情報をデイサービスでも活用

―大曽根
すばらしいですね。
ICT導入から1年少し経ちますが、その前の状態に戻るとなるとどうですか?(笑)
 
―宍戸
えー!戻るのは困ります!
無い状態に戻ったら、ケアマネさんに事があるたびに電話をしたりとか、ショート利用の方であればショートの方との共有など、やはりやり取りが大変だと思うかもしれません。
 
―大曽根
ちょっと楽になった感覚ですか?
 
―宍戸
そうですね、間違いなく楽になったことあるけど、大したことなくてもちょっと載せてと言われたら、大変な側面もあります。
 
―大曽根
そうですよね。手間が全部なくなるという話でもないですからね。
事務局の方もおっしゃっていますが、利用者さんの状況を一番投稿してくれているのは、デイサービスや訪問看護ステーションや訪問介護のヘルパーさんみたいです。
デイサービスさんから、食事やお風呂など利用者さんの様子が投稿され、それによって他の職種の方からは状況が分かって助かっている部分が多いと。
 
もう少し使用状況について聞かせてください。
どのようにデイの職員さんの中で日々使用されているんですか?
 
―宍戸
現在、Teamに投稿をするのは私が中心です。
看護師さんも次の受診に向けて、なにか変化があれば投稿しています。
介護員さんたちは、毎朝見る習慣はできています


ICTの細かい使い方を守屋潔さん(右)に積極的に確認する宍戸さん(左)

★つながれていることを実感できる


―大曽根
導入時期は手探り感があったりしたのはでないかと思うのですがどんな感じでしたか?
 
―宍戸
何していいか分かんなくて最初は(笑)。
ただ入ってくるの見てただけなんですが、説明会の時にLINE感覚で入れてねって言われたことを思い出して、「今日はこうだったよ」「元気そうでした!」ぐらいな勢いでいいのかな~なんて。
 
―大曽根
じゃあそこはシンプルに捉えたわけですね。
 
―宍戸
はい。
でも、意外とみなさん丁寧な文章を投稿されているなって思っていましたが、自分の投稿に対して確認マークが付いたりして、純粋に見てくれて嬉しいって思ちゃいますね。
 
―大曽根
確かにですね。
確認ボタンはけっこう大事なんですね。
 
―宍戸
そうなんですよね。見てくださるのはうれしいです。
 
最初のころは、利用者さんの様子を投稿し、ケアマネさんが「そうだったんですね、ちょっと様子見ていきましょうか」ってなったところに、風連国保診療所の松本先生から返信をいただき。
そういう連携の繋がりを感じています。
 
―大曽根
いいですね。まさにかかりつけ医と繋がっている感じですね。
 
―宍戸
あと、名寄市立総合病院への受診同行した結果や、お薬の情報なども役立ちます。
デイサービスで血圧を測って、以前よりも下がってきたときに、「あ、この薬出たからだねー」と。
利用者さんに確認しても曖昧だったりすることもあるので、正確な情報を知ることができて助かっています。
 
―大曽根
なるほどですね。
 
話戻ってしまいますが、タブレットは普段どうされているのですか?
 
―宍戸
どこにでも持って行って見てますね。
タブレットを持ち歩いて、浮腫みの写真を撮ったりします。
たとえば、脱衣室で皮膚の様子に変化があったらプライバシーに配慮しながら撮ったりします。
 
外来の診療では気づきにくいところも、入浴時など私たちならではの視点で気づくこともあるかと思います。
服脱いで初めて、「あら、転んじゃったのかな?」っていう話から始まることも時にはありますからね。

変化をキャッチしたら写真やテキストで多職種で共有、相談を行う

―大曽根
なるほど。
機能として動画も使いますか?
 
―宍戸
まだ全然使えていないのですが、以前名寄市立総合病院に入院されて、自宅に帰ってくるタイミングで、「今からベッドから車椅子に移動しますよ」っていう動画を病院の連携室の方が送ってきてくださり、頑張っている様子とともに、帰ってこれるんだ、と嬉しくなりました。
動画は有効な気がします。
 
―大曽根
なるほど。
まだICTは始まって間もないですが、これから連携においてこうなっていくとより良いのではという期待などありますか?
 
―宍戸
どうなっていくと良いか…。
そうですね、願いというか…みんなICTに登録されているといいなと思います。
この方入っていたかな?入ってなかったかな?と考えてしまうことがあります。
半分以上の方が入っていますが、あれ入っていなかったということもあるんです。
 
―大曽根
なるほど。
ケアマネジャーさんによっては、すべての方を登録されていると思いますので、ある程度元気な方でもICTには登録されていくと今後良いのかもしれませんね。
 
―宍戸
あと、あまり私自身も経験がないような症状の利用者さんの場合、相談できたり指示やアドバイスをもらえたり、というような使い方もあるのかと思います。
ICTの中で教えてもらったり、勉強会などで知らなかったことを学べることも大きいです。
 
 

★利用者さんの笑顔が私のビタミン

―大曽根
なるほどですね。
 
最後になるんですけど、改めてICTや連携のことを色々お聞きしてきたんですが、宍戸さんがおっしゃっていた「デイサービスのしごとが大好きです」という言葉が耳に残っています。
宍戸さんの中で大切にされてきたことってあるんですか?
 
―宍戸
利用者さんの「笑顔」です!
年を取られても、笑っていただきたい。
 

利用者さんの笑顔の写真を見せてくださり、エピソードを語る宍戸さん

だんだんコロナで暗くなって、行事もあまりできない時期も続いて。
買い物バスツアーや遠出などもやってたんですが、コロナになってから外に出る行事を減らさざるをえなくなりました。
職員はもちろんですが、利用者さんも本当に頑張っていらして。
 
早く日常が戻ってくることを願いながら、できることを工夫しながら行なっていきたいです。
 
―大曽根
宍戸さん、今日は本当にありがとうございました。
宍戸さんのような方がいらっしゃる地域は幸せだなと感じました。
 
―宍戸
こちらこそありがとうございました。
 
シーズン3エピソード3はデイサービスの宍戸さんにお話を伺いました。
※内容はインタビュー実施時点(2022年9月14日)のものになります。

社会福祉法人名寄市社会福祉事業団デイサービスセンターフロンティアハウスふうれん宍戸さん

 

 ★★名寄市あったかICT物語の構成★★

【シーズン1(導入前夜編)】

·        エピソード0:「名寄ICT物語、始めるにあたって」

·        エピソード1:「つながったら動いてみる」

·        エピソード2:「焦りとICT」

 【シーズン2(導入編)】

·        エピソード1:「想いをカタチへ①」

·        エピソード2:「想いをカタチへ②」

·        エピソード3:「名寄医療介護連携ICTの概要」

·        エピソード4:「ケアマネジャーから見たICT①」

·        エピソード5:「ケアマネジャーから見たICT②」

·        エピソード6:「医師としての紆余曲折の全てが今につながる」

·        エピソード7:「孤独に陥らないあたたかいシステム」

 【シーズン3(運用編)】

·        エピソード1:「名寄ならではの訪問看護を探究し続ける」

·        エピソード2:「訪問歯科がある安心感と連携のこれから」

·        エピソード3:「利用者さんの笑顔のために」

·        エピソード4「前編:薬剤師だから創り出せる、在宅でのあたたかい連携のカタチ」

·        エピソード5「中編:薬剤師だから創り出せる、在宅でのあたたかい連携のカタチ」

·        エピソード6「後編:薬剤師だから創り出せる、在宅でのあたたかい連携のカタチ」

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