#2-3 北海道名寄市あったかICT物語【シーズン2(導入編)】
エピソード3「名寄の医療介護連携ICTの概要」
執筆・インタビューを担当するのは・・・
こんにちは!
「名寄市医療介護連携ICT導入・運用アドバイザー(令和2&3年度)」の大曽根 衛(地域包括ケア研究所)です。
今回は、2021年に導入された名寄市医療介護連携ICT(ポラリスネットワーク2.0)の概要について触れていこうと思います。
ここでは、道北広域救急医療連携システムのポラリスネットワーク1.0(2013年~)ではなく、名寄市医療介護連携ICTのポラリスネットワーク2.0(2021年~):緑のリングについて説明します。
記事作成にあたっては、
・一般社団法人北海道総合研究調査会(通称HIT)さんの令和3年度実施の【北海道の地域住民に関する「医療・介護情報の共有システム構築」に係る調査研究事業 報告書】と、
・北海道総合政策部【北海道Society5.0事例集(名寄市・名寄市医療介護連携ICT)】からの抜粋情報なども使用、参考にさせていただいています。
★一般的な情報共有ツールの系統
一般的に情報共有システムは、グループウェア型とSNS 型 に分かれています。
グループウェア型は、医療機関が有している診療情報や処方、検査結果、レントゲン 画像などの医療情報を開示した上で、一元的に管理し、ネットワークに参加する関係者が必要な時に必要な情報を取り出すことができるものです。
SNS 型は、LINEなどと同様に特定のグループ内でチャット形式で情報共有、コミュニケーションが可能となるものです。日常の経過報告や状態変化、相談などを関係者間でやりとりが可能となります。
★名寄市医療介護連携ICTにおける共有ツール
ポラリスネットワーク2.0では、グループウェア型ツールとしてID-Linkを、SNS 型ツールとしてTeamを導入しています。
ID-Link (グループウェア型ツール) ※HIT資料より抜粋
情報開示機関(病院:4 機関、診療所:2 機関、調剤薬局:7 機 関)の電子カルテや薬局レセコンとのデータ連携により、一部の 医療情報や調剤情報が ID-Link に自動的に同期され、参加機関に共有
情報の公開範囲(参加機関への参照権限付与)や共有項目は情報開示機関が設定可能
Team (SNS 型ツール)
ID-Link から、検体検査・処方・調剤情報が Team に自動的に 同期(ID-Link にアクセス権限がない訪問介護やグループホー ム等も参照可能)
行政システムとのデータ連携により、患者・利用者の介護認定情報が Team に自動的に同期
「経過観察機能」を用いて、個人間・グループ間で即時情報の共有
ケアプランなど介護文書の共有
★名寄市のICTの特徴
<ICTの目的> ※北海道Society5.0事例集より抜粋
名寄市地域包括ケアシステム(医療と介護の連携)を実現するための情報基盤を構築すること
高齢者の生活を支えるために、医療、介護、地域包括支援センター等の連携の強化を図ること
利用者のプライバシー保護を厳重に図りながら、診療情報の一部及び介護情報を地域の連携医療機関と介護施設との間で共有して連携を円滑に行うこと
<名寄市ICTの主な特徴> ※HIT報告資料より抜粋
行政主体による地域全体の最適化
単に従来の電話や文書の郵送・持参等による情報共有手段からデジタルに代替するのではなく、ICT 活用により情報共有の利便性が向上し業務プロセスの構造を変えることで、医療・介護従事者の業務負担を軽減することに軸足を置いている。
そのために市内全ての医療機関と介護事業所・施設が同じシステムを活用することが重要と考えており、行政が主体となって医療と介護の対等な連携体制を構築し、地域全体の医療・介護サービス提供体制の全体最適化を目標としている。
介護行政の DX
特に介護事業所・施設では、行政に申請・提出する文書が多いことから、ペーパーレス化による介護行政の DX により行政手続きの簡素化を図ることで介護側の業務負担軽減につなげることを目標としている。
プロセスを重視したシステムの構築・運用
システムの設計から運用に至るプロセスを重視しており、多職種関係者間での合意形成を図りながらシステムの構築・運用を行っている。
単にシステムを導入して多職種関係者に活用を促すのではなく、運用方法等を決定する ワーキンググループ と現場のニーズを集約するための ワークショップ が連動し、実際にシステムを活用する多職種関係者を システム構築の当事者として巻き込んでいる。
外部ファシリテーターを活用した多職種事例検討会の開催
システムの導入にあたっては、多職種関係者に ICT の必要性や利便性を実感してもらうことを目的に、実際に現場でどのような運用ができるか等を検討する事例検討会を実施している。
システム導入後も、現場に即した実用性の高いシステムの持続的な運用を実現するために、事例検討会を定期的に開催しており、具体的な運用から発見した課題とその解決策等を検討しながら運用改善を図っている。
事例検討会では、事務局からのシステム活用の強要を避けることや、医療側と介護側の多職種関係者が対等な立場で議論できる雰囲気づくりなどを考慮し、ファシリテーターとして外部の地域包括ケア研究者(一般社団法人地域包括ケア研究所)を活用している。
外部ファシリテーターは、事例検討会からでた意見を客観的な立場でとりまとめることにより、当事者同士では気付かないニーズや改善点等を補完するアドバイザーの役割も。
中核病院の参加
専門医や在宅医の不足等の医療資源の偏在により、中核病院である名寄市立総合病院がかかりつけ医機能も兼ねている。そのため、名寄市の地域包括ケアシステムの構築における医療側の中心は必然的に名寄市立総合病院となる。
従来ヘルパー等の介護職は、本人やその家族、ケアマネジャーを通じて利用者の医療情報を得ていた。システム導入により市立病院等の医療機関が持つ情報を容易に取得できることで、利用者の全体像を把握し、適切なサービス提供につなげることを可能としている。
以上、シーズン2エピソード3は2021年に導入された名寄市のICTの概要について触れてみました。
続いて、エピソード4は名寄社協指定居宅介護支援事業所ケアマネジャー井上正義さんの視点からICT導入前後の様子について触れていきます。
★★名寄市あったかICT物語の構成★★
【シーズン1(導入前夜編)】
【シーズン2(導入編)】
· エピソード6:「医師としての紆余曲折の全てが今につながる」
【シーズン3(運用編)】
· エピソード4「前編:薬剤師だから創り出せる、在宅でのあたたかい連携のカタチ」
· エピソード5「中編:薬剤師だから創り出せる、在宅でのあたたかい連携のカタチ」
· エピソード6「後編:薬剤師だから創り出せる、在宅でのあたたかい連携のカタチ」