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『すいかの匂い』 江國香織 著

簡単なあらすじ

あの夏の記憶だけ、いつまでもおなじあかるさでそこにある。
つい、今しがたのことみたいにー

バニラアイスの木べらの味、ビニールプールのへりの感触、おはじきのたてる音、そしてすいかの匂い。

無防備に出会ってしまい、心に織り込まれてしまった事ども。
おかげで困惑と痛みと自分の邪気を知り、私ひとりで、これは秘密、と思い決めた。
11人の少女の、かけがえのない夏の記憶の物語。

感想とおススメポイント

本作品は11の短編集ですが、それぞれ、11人の女性が幼いころに体験した、記憶に深く残っていることを、回想するかたちで構成されています。

それらはどれも、決してインパクトの大きいものではなく、日常の中に溶け込んでいる、ささいな一場面であったり、ともすれば忘れてしまいそうなものばかりです。
ですが、それをこんこんと語るところが、子ども心がリアルに表現されている
なとおもいました。

おススメポイントは、なんといっても、江國香織さんの繊細な文体です。
どれも、劇的な展開はないのに、読後はなんとも言えない寂寥感があり、他の作品も手に取りたくなるでしょう。

幼少期の淡い記憶、夏の思い出を再体験したい方、一読してみてはいかがでしょうか。



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