林田直樹

音楽ジャーナリスト・評論家。著書「そこには、音楽と言葉があった」「音響設計家・豊田泰久…

林田直樹

音楽ジャーナリスト・評論家。著書「そこには、音楽と言葉があった」「音響設計家・豊田泰久との対談 コンサートホール×オーケストラ 理想の響きをもとめて」他。音楽之友社社外メディア・コーディネーター。クラシック音楽専門インターネットラジオOTTAVAプレゼンター。

記事一覧

ネゼ=セガン指揮METオーケストラ(6/27サントリー)。バルトーク「青ひげ公の城」は、物語を語ろうとするときの音の説得力が凄い。ガランチャのユディット、ヴァン・ホーンの青ひげとも驚異的に豊かな声。7つの扉を開くたびに血も凍る情景が出現する愛と恐怖の象徴劇を、久しぶりに堪能した。

林田直樹
12時間前
4

ネゼ=セガン指揮METオーケストラ(6/26サントリー)。マーラー5番は指揮者の強靭な統率のもと金管や弦の艶やかな音色が随所で新鮮。ウィーンを離れた作曲家がNYで最後の日々を過ごす中、オペラ指揮者としてどれほどMETを改革し貢献したか。その歴史を思いながら感慨深く聴いた。

林田直樹
1日前

ロイヤル・オペラ「リゴレット」(6/25神奈川県民ホール、パッパーノ指揮、ミアーズ演出)は音楽の充実のみならず、視覚面すべてにおいて演劇の国イギリスの底力を発揮する名舞台。話題の初来日シエラは間違いなく旬のスター。可憐でしなやかな声と演技で、ジルダの献身的な愛が痛いほど伝わった。

林田直樹
2日前
1

チョン・ミョンフン指揮東京フィルのトゥーランガリラ交響曲(6/24サントリー)。宇宙の光全部を集めたように音が輝く、やはり名曲。ピアノ務川慧悟とオンドマルトノ原田節は協奏曲のソリストのような妙音と存在感。「星々の血の喜び」の熱狂の後で一転して「愛の眠りの庭」での静寂は特に印象的。

林田直樹
3日前
3

ナチスにより退廃芸術の烙印を押された作曲家フランツ・シュレーカーのオペラ「クロストフォロス」を聴く(6/23清瀬けやきホール)。愛と芸術に生きる者の苦悩と葛藤を描き、キャバレーやジャズの要素も盛り込まれた驚くべき傑作。日本初演を実現した公演監督・田辺とおるさんの熱意と志に感謝。

林田直樹
4日前
3

近藤嘉宏さんにお声がけいただき、西新宿のガルバホールという豪華なサロンで、ブラームスのピアノ協奏曲第1番のピアノ六重奏版(カンパニーニ編)を聴いた(6/22)。1960年ベーゼンドルファーの響きも美しく、作品の内面性が浮き彫りになる見事な演奏。室内楽版協奏曲の可能性を実感した。

林田直樹
5日前
3

「破滅の予言は楽天主義よりも常に威厳を帯びているが、幸いそれが正しいとは限らない」(ドナルド・キーン)。能の衰退を危ぶむ声があったことについてのコメントだが、この言葉自体に文脈を超えた強い説得力を感じる。優れた文章とは、読者の人生に直接刺激を与えるような煌めきを備えているものだ。

林田直樹
6日前
3

スイスに移住したミハイル・プレトニョフがロシア、スロヴァキア、オーストリア、ウクライナ出身の音楽家たちと共にブラチスラヴァに創設したラフマニノフ国際管弦楽団の新譜2点が素晴らしい。政治的な理由から故国を離れざるを得なくなった作曲家の名前を冠した話題のオケ。熱い思いが伝わってくる。

林田直樹
7日前
3

銀座でひとりメシなら、よもだそば&カレー

銀座は大好きな街である。 最近は海外からの観光客が多いけれど、それでもやはり歩いていて落ち着く大人の雰囲気がある。 高価なブランドショップで買い物などしなくとも、…

林田直樹
12日前
31

天安門に行く

6月4日に天安門に行った。 といっても中国・北京ではなくてJR王子駅近くの中華料理店。 サントリーホールから最寄りの六本木一丁目駅で南北線に乗って埼玉県方面に帰るとき…

林田直樹
3週間前
25

今の世の中、どんどん紙の雑誌は休刊している。
その中でクラウドファンディングで復活させてもらえる雑誌なんて、一握りあるかどうか。たとえアンチでも関心を持ってもらえるだけでも幸せだと思う。
再スタートできるだけでも奇跡みたいなもの。
愛情ある読者に恵まれたレコ芸の今後に幸あれ。

林田直樹
1か月前
6

「レコード芸術」への思い~元編集者の立場から

音楽之友社を辞めて24年間、フリーランスとして生きてきた。 クラシック音楽業界を足場としながらも、いろいろな出版社や新聞社、そして放送局とも仕事できるようになった…

林田直樹
1か月前
134

ルネ・マルタンが語った、ラ・フォル・ジュルネ2025年のテーマ予定は「音楽の首都」(les capitales musicales)

今年のラ・フォル・ジュルネ(LFJ)TOKYOは、個人的にはスロースターターな感じでゆるりと参加した。爽やかな好天に恵まれたこともあって、居心地のよいものだった。 会場…

林田直樹
1か月前
44

死にかけた。
左側の歩道を歩いていたら、急に曲がってきた車に轢かれそうになった。運転手の不注意。夕暮れ時で見えにくかったか。反射神経でとっさに飛びのいて事なきを得たが、もしまだ松葉杖だったら...間違いなく危なかった。
一瞬の出来事。かなり怖かった。神様に守ってもらったかも。

林田直樹
1か月前
5

月2本発行のメルマガより、毎号チラ見せをご覧いただけます。それなりにしっかり読めます。
フランスで生まれた、吉田進作曲・台本の能オペラ「隅田川」の日本初演について。
https://mypage.mag2.com/ui/view/magazine/164298368?share=1

林田直樹
1か月前
1

札幌のクリークホールでアドヴァイザーを務めさせていただいていますが、公式サイトで「静寂の向こう側」というコラムを連載することになりました。
https://www.creekhall.com/column

林田直樹
1か月前
3

ネゼ=セガン指揮METオーケストラ(6/27サントリー)。バルトーク「青ひげ公の城」は、物語を語ろうとするときの音の説得力が凄い。ガランチャのユディット、ヴァン・ホーンの青ひげとも驚異的に豊かな声。7つの扉を開くたびに血も凍る情景が出現する愛と恐怖の象徴劇を、久しぶりに堪能した。

ネゼ=セガン指揮METオーケストラ(6/26サントリー)。マーラー5番は指揮者の強靭な統率のもと金管や弦の艶やかな音色が随所で新鮮。ウィーンを離れた作曲家がNYで最後の日々を過ごす中、オペラ指揮者としてどれほどMETを改革し貢献したか。その歴史を思いながら感慨深く聴いた。

ロイヤル・オペラ「リゴレット」(6/25神奈川県民ホール、パッパーノ指揮、ミアーズ演出)は音楽の充実のみならず、視覚面すべてにおいて演劇の国イギリスの底力を発揮する名舞台。話題の初来日シエラは間違いなく旬のスター。可憐でしなやかな声と演技で、ジルダの献身的な愛が痛いほど伝わった。

チョン・ミョンフン指揮東京フィルのトゥーランガリラ交響曲(6/24サントリー)。宇宙の光全部を集めたように音が輝く、やはり名曲。ピアノ務川慧悟とオンドマルトノ原田節は協奏曲のソリストのような妙音と存在感。「星々の血の喜び」の熱狂の後で一転して「愛の眠りの庭」での静寂は特に印象的。

ナチスにより退廃芸術の烙印を押された作曲家フランツ・シュレーカーのオペラ「クロストフォロス」を聴く(6/23清瀬けやきホール)。愛と芸術に生きる者の苦悩と葛藤を描き、キャバレーやジャズの要素も盛り込まれた驚くべき傑作。日本初演を実現した公演監督・田辺とおるさんの熱意と志に感謝。

近藤嘉宏さんにお声がけいただき、西新宿のガルバホールという豪華なサロンで、ブラームスのピアノ協奏曲第1番のピアノ六重奏版(カンパニーニ編)を聴いた(6/22)。1960年ベーゼンドルファーの響きも美しく、作品の内面性が浮き彫りになる見事な演奏。室内楽版協奏曲の可能性を実感した。

「破滅の予言は楽天主義よりも常に威厳を帯びているが、幸いそれが正しいとは限らない」(ドナルド・キーン)。能の衰退を危ぶむ声があったことについてのコメントだが、この言葉自体に文脈を超えた強い説得力を感じる。優れた文章とは、読者の人生に直接刺激を与えるような煌めきを備えているものだ。

スイスに移住したミハイル・プレトニョフがロシア、スロヴァキア、オーストリア、ウクライナ出身の音楽家たちと共にブラチスラヴァに創設したラフマニノフ国際管弦楽団の新譜2点が素晴らしい。政治的な理由から故国を離れざるを得なくなった作曲家の名前を冠した話題のオケ。熱い思いが伝わってくる。

銀座でひとりメシなら、よもだそば&カレー

銀座でひとりメシなら、よもだそば&カレー

銀座は大好きな街である。
最近は海外からの観光客が多いけれど、それでもやはり歩いていて落ち着く大人の雰囲気がある。
高価なブランドショップで買い物などしなくとも、素敵な飲食店はたくさんあるし、教文館という都内屈指の素晴らしい書店があるし、お洒落な文房具を伊東屋で探す楽しみもある。GINZA SIXの地下3階にある観世能楽堂にも最近は足を運ぶようになった。
何よりもクラシック音楽ファンにとっては、室

もっとみる
天安門に行く

天安門に行く

6月4日に天安門に行った。
といっても中国・北京ではなくてJR王子駅近くの中華料理店。
サントリーホールから最寄りの六本木一丁目駅で南北線に乗って埼玉県方面に帰るときは、王子駅で京浜東北線に乗り換える。その際に立ち寄ることが多い。

取り立てて特徴のある店ではない。
どこから見てもオンボロで、昭和な町中華。入店してくるのは地元のおじさんっぽい人か、若いサラリーマンのグループ。女性は一人では入りづら

もっとみる

今の世の中、どんどん紙の雑誌は休刊している。
その中でクラウドファンディングで復活させてもらえる雑誌なんて、一握りあるかどうか。たとえアンチでも関心を持ってもらえるだけでも幸せだと思う。
再スタートできるだけでも奇跡みたいなもの。
愛情ある読者に恵まれたレコ芸の今後に幸あれ。

「レコード芸術」への思い~元編集者の立場から

「レコード芸術」への思い~元編集者の立場から

音楽之友社を辞めて24年間、フリーランスとして生きてきた。
クラシック音楽業界を足場としながらも、いろいろな出版社や新聞社、そして放送局とも仕事できるようになったのは幸いだった。美術や演劇や舞踊など、隣接するいろんな分野ともかかわりを持てるようになった。
音楽之友社に在職したのは13年間。私にとっては懐かしい、卒業した学校のような場所といえるかもしれない。
6年くらい前からは再びご縁があり、アドバ

もっとみる
ルネ・マルタンが語った、ラ・フォル・ジュルネ2025年のテーマ予定は「音楽の首都」(les capitales musicales)

ルネ・マルタンが語った、ラ・フォル・ジュルネ2025年のテーマ予定は「音楽の首都」(les capitales musicales)

今年のラ・フォル・ジュルネ(LFJ)TOKYOは、個人的にはスロースターターな感じでゆるりと参加した。爽やかな好天に恵まれたこともあって、居心地のよいものだった。

会場整理係のメガホンの大声もなく、混雑しすぎのストレスもあまりなく、CDショップはコンサートの余韻をぶち壊すようなBGMを流すことがなく、楽器店などの出展ブースもスピーカーから音声が出る時間を節度良く決めていたおかげで、全体的に騒がし

もっとみる

死にかけた。
左側の歩道を歩いていたら、急に曲がってきた車に轢かれそうになった。運転手の不注意。夕暮れ時で見えにくかったか。反射神経でとっさに飛びのいて事なきを得たが、もしまだ松葉杖だったら...間違いなく危なかった。
一瞬の出来事。かなり怖かった。神様に守ってもらったかも。

月2本発行のメルマガより、毎号チラ見せをご覧いただけます。それなりにしっかり読めます。
フランスで生まれた、吉田進作曲・台本の能オペラ「隅田川」の日本初演について。
https://mypage.mag2.com/ui/view/magazine/164298368?share=1

札幌のクリークホールでアドヴァイザーを務めさせていただいていますが、公式サイトで「静寂の向こう側」というコラムを連載することになりました。
https://www.creekhall.com/column