林田直樹

音楽ジャーナリスト・評論家。著書「そこには、音楽と言葉があった」「音響設計家・豊田泰久…

林田直樹

音楽ジャーナリスト・評論家。著書「そこには、音楽と言葉があった」「音響設計家・豊田泰久との対談 コンサートホール×オーケストラ 理想の響きをもとめて」他。音楽之友社社外メディア・コーディネーター。クラシック音楽専門インターネットラジオOTTAVAプレゼンター。

記事一覧

作曲家フィリップ・マヌリのオーケストラ・ポートレイト(8/23サントリー)。世界初演曲「プレザンス」は、不安の霧のような響きが忘れ難い。一度耳にしたら世界の風景が変わってしまうほどの音があった。8人の奏者がホールを去る最後も意味深。ブラッド・ラブマン指揮東京交響楽団も見事な演奏。

林田直樹
1日前
4

アルディッティ弦楽四重奏団(8/22サントリー)。武満「ア・ウェイ・ア・ローン」から容赦なく攻める。ピアノ北村朋幹を迎えた細川「オレクシス」は最も抒情的。音の冒険ではハーヴェイ第1番とラッヘンマン第3番「グリド」。知性と狂気、厳しさと愉悦。さすが現代音楽のレジェンドは格が違う。

林田直樹
2日前
2

ノット指揮東京交響楽団によるマーラー6番。第4楽章のハンマーが通常2回か3回のところを5回使われたことで話題になった2023年5月のライヴ。闘争と破滅の響きの合間に夢のような美しさのある見事な演奏。録音優秀。この交響曲を聴くたび、人が生きるとはこういうことなのだろうといつも思う。

林田直樹
3日前
3

アダム・フィッシャー指揮デンマーク室内管によるハイドン後期交響曲集第3集。彼らのベートーヴェンやブラームスと同様、ハイドンもきびきびとした力強い音楽の運びが素晴らしい。いたずらに喚いたり叫んだりせず、にこやかで味わい深い、大人の日常性の音楽。今最も楽しみにしているシリーズの一つ。

林田直樹
4日前
3

チェリビダッケ&ミュンヘン・フィルのブルックナー作品集12枚組。作曲家の生誕200年を機にリリース。旧EMI盤の再発だが最新リマスターで音質がリフレッシュされた。自分にとって圧倒的な影響を受けた巨匠。若い世代にも支持が広がっているのは嬉しい。常に参照し学ぶべきものがここにはある。

林田直樹
6日前
4

ヘンデルのオペラ「リナルド」(8/17@サントリー)濱田芳通指揮アントネッロ。野性的で愉悦溢れる美しい演奏。彌勒忠史、中川詩歩、中嶋俊晴、中山美紀ら各歌手が大胆な即興を交えた見事な歌唱と演技。演出と衣装も良く、十字軍とイスラム教徒の戦争や人物関係を的確に伝えた。記憶に残る名舞台。

林田直樹
7日前
3

「覚えておきたい芭蕉の名句200」(角川ソフィア文庫)は、制作年代順に並んだ俳句に簡潔な現代語訳が付く。四季折々の色彩感や味覚、小さな生き物への愛やユーモア、秋の寂寥と死の予感など、どの俳句も味わうほどに読者の人生を豊かにしてくれる。巻末の芭蕉名言抄も深い芸術観を簡潔に伝える。

林田直樹
8日前
2

サヴァール指揮によるハイドン「天地創造」を再聴。重量感と繊細さを併せ持った味わい深い名演。フォルテピアノの響きも効果的。旧約聖書の創世記の物語を題材に人間と自然の調和と愛をうたうこの曲は、聴き手を偏狭な争いや迷妄から解放し、人類的・地球的な視野に立たせてくれる。偉大な知恵の音楽。

林田直樹
10日前
5

東京二期会(8/13オペラシティ)、ミシェル・プラッソン指揮東京フィル、大村博美と小森輝彦のソロ、石丸由佳のオルガン。フォーレのレクイエムの最後に両手を握り祈るように頭を下げた姿勢に、来日を強く希望した90歳の老巨匠の作品への敬愛の全てが集約されていた。アンコールはラシーヌ賛歌。

林田直樹
11日前
3

フェスタサマーミューザ川崎(8/11)藤岡幸夫指揮東京シティ・フィル。ラフマニノフ協奏曲3番は攻めに攻めた名演。務川慧悟は大地に深く根を下ろしたピアノの音。ホルスト惑星は木星での心のこもった歌い方にじんと来た。海王星の女声合唱の最後は幻のよう。各楽章の響きの色彩の違いを堪能した。

林田直樹
13日前
3

今日は原稿書きをしながら、藤田真央「モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集」(2021年録音)をとっかえひっかえ聴いた。ハッとさせられる鋭敏な装飾音の遊び心。まろやかな弱音のタッチの非凡さ。彼自身の音がしっかりある。まるでぷるるんとしたプリンのような多幸感。暑いからそう思うのかな。

林田直樹
2週間前
4

「白い病」カレル・チャペック著/阿部賢一訳/岩波文庫。1937年プラハで発表された戯曲。戦争目前の世界で猛威を振るう未知の疫病の特効薬を発見した医師が弱者が生きる権利のために戦い、独裁者に対し戦争放棄と恒久的平和への転換を要求する物語。人間愛に満ちた言葉の数々に強い感銘を受けた。

林田直樹
2週間前
1

帰宅困難者になったときに、携帯の電源と水と現金がないと困るので、とりあえずその準備だけはしっかりしておきましょう。いたずらに怖がるのではなく、小さな備えを実行するだけでも、少し気分が冷静になると思います。

林田直樹
2週間前
3

フェスタサマーミューザ川崎(8/7)、梅田俊明指揮昭和音楽大学管弦楽団&テアトロ・ジーリオ・ショウワ。モーツァルト「ハフナー」とブルックナー「第7」。細部に丹念な指揮のもと2つの交響曲に懸命に取り組む若いオケが眩しい。ブルックナーの第2楽章終結部の葬送のコラールは特に心に沁みた。

林田直樹
2週間前
4

作曲家・湯浅譲二さんの自宅を訪ねたのは2014年夏。長文のインタビュー記事を「サライ」誌に掲載し「そこにはいつも、音楽と言葉があった」(写真)にも再掲載。音楽のみならずあらゆる隣接芸術に詳しい教養人。アカデミズムへの反抗心も顕わに、前衛の本質を熱く語られていた。ご冥福を祈ります。

林田直樹
2週間前
11

WebマガジンONTOMOに今月の新譜CD3枚を紹介する連載がアップされています。フランチェスコ・トリスターノ「J.S.バッハ:フランス組曲」、藤倉大「ウェイヴァリング・ワールド」、ノット&東京交響楽団「ブルックナー:交響曲第1番」。
https://ontomo-mag.com/article/column/hayashida-cd-2024-8/

林田直樹
2週間前
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作曲家フィリップ・マヌリのオーケストラ・ポートレイト(8/23サントリー)。世界初演曲「プレザンス」は、不安の霧のような響きが忘れ難い。一度耳にしたら世界の風景が変わってしまうほどの音があった。8人の奏者がホールを去る最後も意味深。ブラッド・ラブマン指揮東京交響楽団も見事な演奏。

アルディッティ弦楽四重奏団(8/22サントリー)。武満「ア・ウェイ・ア・ローン」から容赦なく攻める。ピアノ北村朋幹を迎えた細川「オレクシス」は最も抒情的。音の冒険ではハーヴェイ第1番とラッヘンマン第3番「グリド」。知性と狂気、厳しさと愉悦。さすが現代音楽のレジェンドは格が違う。

ノット指揮東京交響楽団によるマーラー6番。第4楽章のハンマーが通常2回か3回のところを5回使われたことで話題になった2023年5月のライヴ。闘争と破滅の響きの合間に夢のような美しさのある見事な演奏。録音優秀。この交響曲を聴くたび、人が生きるとはこういうことなのだろうといつも思う。

アダム・フィッシャー指揮デンマーク室内管によるハイドン後期交響曲集第3集。彼らのベートーヴェンやブラームスと同様、ハイドンもきびきびとした力強い音楽の運びが素晴らしい。いたずらに喚いたり叫んだりせず、にこやかで味わい深い、大人の日常性の音楽。今最も楽しみにしているシリーズの一つ。

チェリビダッケ&ミュンヘン・フィルのブルックナー作品集12枚組。作曲家の生誕200年を機にリリース。旧EMI盤の再発だが最新リマスターで音質がリフレッシュされた。自分にとって圧倒的な影響を受けた巨匠。若い世代にも支持が広がっているのは嬉しい。常に参照し学ぶべきものがここにはある。

ヘンデルのオペラ「リナルド」(8/17@サントリー)濱田芳通指揮アントネッロ。野性的で愉悦溢れる美しい演奏。彌勒忠史、中川詩歩、中嶋俊晴、中山美紀ら各歌手が大胆な即興を交えた見事な歌唱と演技。演出と衣装も良く、十字軍とイスラム教徒の戦争や人物関係を的確に伝えた。記憶に残る名舞台。

「覚えておきたい芭蕉の名句200」(角川ソフィア文庫)は、制作年代順に並んだ俳句に簡潔な現代語訳が付く。四季折々の色彩感や味覚、小さな生き物への愛やユーモア、秋の寂寥と死の予感など、どの俳句も味わうほどに読者の人生を豊かにしてくれる。巻末の芭蕉名言抄も深い芸術観を簡潔に伝える。

サヴァール指揮によるハイドン「天地創造」を再聴。重量感と繊細さを併せ持った味わい深い名演。フォルテピアノの響きも効果的。旧約聖書の創世記の物語を題材に人間と自然の調和と愛をうたうこの曲は、聴き手を偏狭な争いや迷妄から解放し、人類的・地球的な視野に立たせてくれる。偉大な知恵の音楽。

東京二期会(8/13オペラシティ)、ミシェル・プラッソン指揮東京フィル、大村博美と小森輝彦のソロ、石丸由佳のオルガン。フォーレのレクイエムの最後に両手を握り祈るように頭を下げた姿勢に、来日を強く希望した90歳の老巨匠の作品への敬愛の全てが集約されていた。アンコールはラシーヌ賛歌。

フェスタサマーミューザ川崎(8/11)藤岡幸夫指揮東京シティ・フィル。ラフマニノフ協奏曲3番は攻めに攻めた名演。務川慧悟は大地に深く根を下ろしたピアノの音。ホルスト惑星は木星での心のこもった歌い方にじんと来た。海王星の女声合唱の最後は幻のよう。各楽章の響きの色彩の違いを堪能した。

今日は原稿書きをしながら、藤田真央「モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集」(2021年録音)をとっかえひっかえ聴いた。ハッとさせられる鋭敏な装飾音の遊び心。まろやかな弱音のタッチの非凡さ。彼自身の音がしっかりある。まるでぷるるんとしたプリンのような多幸感。暑いからそう思うのかな。

「白い病」カレル・チャペック著/阿部賢一訳/岩波文庫。1937年プラハで発表された戯曲。戦争目前の世界で猛威を振るう未知の疫病の特効薬を発見した医師が弱者が生きる権利のために戦い、独裁者に対し戦争放棄と恒久的平和への転換を要求する物語。人間愛に満ちた言葉の数々に強い感銘を受けた。

帰宅困難者になったときに、携帯の電源と水と現金がないと困るので、とりあえずその準備だけはしっかりしておきましょう。いたずらに怖がるのではなく、小さな備えを実行するだけでも、少し気分が冷静になると思います。

フェスタサマーミューザ川崎(8/7)、梅田俊明指揮昭和音楽大学管弦楽団&テアトロ・ジーリオ・ショウワ。モーツァルト「ハフナー」とブルックナー「第7」。細部に丹念な指揮のもと2つの交響曲に懸命に取り組む若いオケが眩しい。ブルックナーの第2楽章終結部の葬送のコラールは特に心に沁みた。

作曲家・湯浅譲二さんの自宅を訪ねたのは2014年夏。長文のインタビュー記事を「サライ」誌に掲載し「そこにはいつも、音楽と言葉があった」(写真)にも再掲載。音楽のみならずあらゆる隣接芸術に詳しい教養人。アカデミズムへの反抗心も顕わに、前衛の本質を熱く語られていた。ご冥福を祈ります。

WebマガジンONTOMOに今月の新譜CD3枚を紹介する連載がアップされています。フランチェスコ・トリスターノ「J.S.バッハ:フランス組曲」、藤倉大「ウェイヴァリング・ワールド」、ノット&東京交響楽団「ブルックナー:交響曲第1番」。
https://ontomo-mag.com/article/column/hayashida-cd-2024-8/