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『外国人差別の現場』安田菜津紀・安田浩一【読書感想文#7】

こんにちは!
私たちBONDは入管問題に取り組む団体です。今回「BOND×読書感想文」企画の第7弾としてこちらの書籍を紹介します!

『外国人差別の現場』 安田菜津紀・安田浩一

書き手は学生メンバーのMさんです。ぜひ読んでみてください!

はじめに

「差別は良くないこと」という認識は多くの人に共有されているはずなのに、なぜ国家機関による人権侵害が黙認されているのか。現状を知れば知るほど、これを無責任に放置できてしまうことの恐ろしさを、強く感じるようになりました。

入管問題、外国人への差別は、「外国人の問題」では決してありません。今、自分たちの生きる社会で起こっていることです。知らなければ、抗議の声を上げなければ、加害をしているのと同じです。

この本では、現場で起きていることから問題の背景まで、事実にもとづき詳細に指摘され、人々の差別的な態度や日本の制度の問題点が克明に描写されています。問題をよく知らない人に、強く勧めたい一冊です。

◎イギリスの収容施設

日本の収容問題との比較として、本書で例示されているイギリスの収容施設では、被収容者の自由や権利が保障され、娯楽や有償の仕事も用意されているといいます。そして、権限と独立性を持つ収容施設視察委員会が、収容施設の運営状況を厳しくチェックしていて、信頼、安全が確保されています。

日本で暮らしていると、外国人への差別感情にもとづく管理と排除、さらに不都合な事実の隠蔽を、国が公然と行い、問題視すらされない状態が当たり前のように感じられますが、これは明らかに異常なことです。

◎「隔離と排斥が目的化」

日本の外国人収容における問題の背景は、まさに「隔離と排斥が目的化」していることにあります。

入管収容の本来の目的は、強制送還の準備にあります。そのため、帰国できない切実な事情を抱えた人を収容するのは、そもそも間違いです。これは、本書でも指摘されているように、収容が「治安維持」のための装置として悪用されていて、戦前の予防拘禁と変わらないといえます。

外部から遮断された閉鎖的な空間で、適切な食事や医療すら提供されず、衰弱していく。仮放免申請の許可は完全に入管の裁量によって行われており、明確な基準は示されない。身体の拘束、権利自由の侵害を伴うにも関わらず、司法や公正な第三者による監視は一切行われていない。… 被収容者は、強制的に母国へ送還されること、自分がいつ死んでもおかしくないことへの恐怖を常に抱えながら、終わりの見えない収容生活に耐えています

生きる権利は、誰にでも保障されているものです。どんな背景があっても、権利を不当に侵害されていい人なんていません。それなのに日本では、一部の人が人として扱われていないのです。入管は、被収容者が「死んでもいい」「死ねばいい」と思っているようにしか見えない態度を取り続け、本当に命を落としても誰も責任を負わないのです。

私たちは、これを断固として許さず、徹底して抗議します。

今苦しんでいる入管問題における当事者は、「外国人」という大きなくくりで語れる存在ではないし、「自分とは関係がない、かわいそうな存在」でもありません。一人の人で、生活があって、日本で暮らすことを切に望んでいます。

そして入管(政府)を支え、今の状態たらしめているのは、他でもなく私たち市民ひとりひとりです。変えられるのは、私たちです

◎足りないのは、「多様な人々によって社会が成り立っているという認識」

「ホロコーストはヒトラーひとりが起こしたのではなく、ヘイトスピーチから始まっている」という指摘が非常に印象的でした。最も恐ろしいのは、一人の極悪非道な差別主義者ではなく、無知の集団です。

無自覚に差別をし、自分たちとは関係のない存在として切り捨てる。人を人として扱わず、残虐な行為を躊躇なく行う入管、それを支える私たちに必要なのは、本書にある通り「多様な人々によって社会が成り立っているという認識」だと思います。日本社会で不当な扱いを受けている外国人に対して、排除するのではなく、生きる権利を保障するために、ひとりひとりがこれを意識するべきではないでしょうか。

差別の問題を知るだけで終わらせず、私たちと一緒に抗議の声を上げ、変えていきましょう


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