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『五色のメビウス-「外国人」と ともにはたらき ともにいきる』信濃毎日新聞社【読書感想文#4】

こんにちは!
私たちBONDは入管問題に取り組む団体です。今回の記事は「BOND×読書感想文」企画の第4弾となります。

早いものでもう第4弾ですね。過去の読書感想文記事は、記事末尾からチェックしてくださいね!

今回#4として紹介する書籍はこちらです!

『五色のメビウス-「外国人」と ともにはたらき ともにいきる』信濃毎日新聞社

感想文の書き手は、BOND学生メンバーのSさんです。是非最後まで読んでみてください~

はじめに


 日本政府は「移民政策」はとらないとしています。しかし、現実には少子高齢化にともなう人口減少で、国外からの労働力は必要な状況になりつつあります。そうした中、正面から労働力を受け入れず留学生、技能実習生を利用してきた日本社会はどのようなひずみを抱えているのでしょうか。
 今私たちが暮らしている日本社会の残酷な一面を描き出した1冊です。

要約


 長野県の地方新聞である信濃毎日新聞の連載「五色のメビウス」をまとめた本です。主に長野県内で働く外国人労働者に取材を重ね、1人1人の人生や思いに寄り添った内容となっています。後半では2021年3月に起きたスリランカ人女性ウィシュマさんの死亡事件をうけて、主に牛久入管の被収容者や支援者、入管法改悪反対運動に参加した学生にも取材がなされています。

感想


 「外国人は使い捨ての存在ではなく、人間だ」。読了後に、そんな思いにかられました。
 
 技能実習生の方々は夢や希望をもって日本にやってきます。しかし、彼らの希望を裏切るように、現実では彼らは様々な形で搾取されています。そんな様子をありありと本書は描き出しています。

日常的に暴言を吐かれ、12時間以上働かされる。未払いの給料。
激しい雷雨の中、作業を強制させられ落雷に巻き込まれて亡くなった方もいます。遺族は謝罪を受けていないと憤りをあらわにしています。

中にはブローカーにだまされて、オーバーステイ(超過滞在)状態で在留資格を持たないまま働いている方もいます。そうした方は仕事中にケガをしても、労災として報告されないケースもあるそうです。

お金のことだけ考えれば労働者を搾取するだけ搾取するのが「もうけ」につながるのかもしれません。しかし、それで本当にいいのでしょうか?外国人も同じ人間です。彼らの母国には私たちと同じように大切な家族がいます。私は彼ら・彼女らを踏みにじることで動いている社会に暮らしていることが恥ずかしいし、憤りを感じています。

 同時にこれまで、技能実習生らが搾取されている現実を知らなかった、議論しようとしなかった自分自身にも恥ずかしく思います。人間を人間として扱わない社会で、自分だけが無関係ではいられません。

本書では実習生を支援する人たち、状況を改善しようとする経営者・農家や自治体も登場します。1人1人が声をあげ、同じ人間として寄り添うことで今ある不健全な制度や、その背後にある私たちの差別意識を乗り越える第一歩になるのではないでしょうか。

すでに多くの外国人の方々方が日本で働いています。彼らのおかげで生活が成り立っているにもかかわらず「受け入れる」か「受け入れないか」という議論をして、排他的な意見を投げつけるのは愚の骨頂ではないでしょうか。どうすればお互いに支えあい、見せかけだけではない「共生社会」をつくれるのかという議論が求められています。

終わりに


 「外国人労働者の問題は私たちと関係ないこと」と思っている人も少なくないと思います。でも、普段口にしている野菜はもしかしたら技能実習生の方がつくっているものかもしれません。

私はBONDで面会活動などに参加しています。そこで会う方の中には長年日本で働かれてきたかたもいらっしゃいます。外国人労働者の受け入れと入管問題は地続きだと感じます。

本書では技能実習生を雇用している経営者にも取材がされています。経営者からすれば、人手不足を解消してくれる実習生はもはやなくてはならない存在です。この本を読むと身近にある食材・商品への見方が変わってきます。

本書はどこか関係ないと思いがちな外国人労働者が置かれている現実を、すぐ近くのものとして突き付けてきます。この本を読んで今の日本の産業が外国人労働者を搾取して成り立っている側面があることに気づき、搾取をする構造を変えるために声を上げるきっかけになれば幸いです。

どうだったでしょうか?ぜひ『五色のメビウス-「外国人」と ともにはたらき ともにいきる』(信濃毎日新聞社)を読んでみてください!

それではまた次回の投稿で~

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