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『ルポ入管ー絶望の外国人収容施設』平野雄吾【読書感想文#3】

こんにちは!
私たちBONDは入管問題に取り組む団体です。今回の記事は「BOND×読書感想文」企画の第3弾となります。

早速ですが今回、#3として紹介する書籍はこちらです!

『ルポ入管ー絶望の外国人収容施設』著:平野雄吾

感想文の書き手は、BOND学生メンバーのKさんです。ぜひ最後までお楽しみください~


はじめに

こんにちは。
私は定期的に品川入管、牛久入管で面会活動を行っている学生です。

昨年の入管法改悪反対の動き、ウィシュマさん死亡事件の真相究明・ビデオ全面開示(ご遺族への受け渡し)を求める動きに賛同し、酷すぎる入管の実態に抗議する意思表明として、自分も何かしなきゃ、自分もできることがあるはずと思い、BONDに加入することを決めました。

支援活動に加わる前にニュースで見聞きした日本の『入管』。
支援活動・抗議活動をする中で見聞きする日本の『入管』。

日々、知れば知るほど残酷で絶望しかない『入管』に、衝撃や怒りを受け続けています。

BONDの活動として、面会したり、勉強会を開催したり、デモや記者会見に参加したりする中で、入管に翻弄される人々の声や入管の歴史、入管法や入管庁本庁が各地方入管に対して出す通達、政府の動きなどを把握し理解しきれていないと感じることも多々ありました。

そこで、入管に翻弄される人々の声や入管の歴史・体質など、もっと詳しく客観的な情報・現実を知りたいと思い、この本を読み始めました。


要約

 入管によって苦しめられている当事者の声、入管(国)の言い分、および入管の歴史について、客観的なデータを用いて解説している本で、以下の内容が含まれます(目次を多少変更して記載)。

  • 壮絶な過去を持ち難民申請しながら日本で生き続けるクルド人

  • 精神的肉体的な苦しみ

  • 不必要な「制圧」「監禁」

  • 正当化される暴言暴力

  • 医療知識のない職員による「容態観察」

  • アイデンティティを無視した対応

  • 強制送還の恐怖

  • 引き離される家族

  • 在留資格を求める闘い

  • 定住を望まず外国人を徹底排除する国家の出入国管理政策


感想

 BONDでの活動を通してある程度は入管のことを知っていましたが、知っていたのは氷山の一角に過ぎないと改めて感じました。

入管庁、法務省、および日本政府の方針・政策により、民族差別、人権侵害、および排他的で非人道的な扱いを受けた結果、希望を持つことが非常に難しい状態に置かれながらも、今も日本で生き続けている人がいます。

絶対に許されてはならないことなのに、日本はそうした外国人差別をずっと行っています。

この本を読んで改めて日本の入管政策を考えると、私たちが学校で教えられてきた『多様性』、『個性』、『多文化共生』、『平等』、『平和』、『安全』とは何だったのだろうと思います。

そして、難民保護、人道的配慮、家族、仮病・詐病、移民・難民、労働者、裁判所、入管とは何なのでしょうか?

しばしばよく分からなくなります。

誰のために、誰の利益のために、今の入管が存在しているのでしょうか?

法務省管轄の入管庁が決めたルールから一度でも外れた人たちは徹底して排除し、人間の希望も未来も日常も自由も奪うのが入管という行政機関の存在目的なのでしょうか。

終わりに

 今日の喫緊の課題として、ウクライナ情勢によるウクライナ難民(避難民)の保護が叫ばれています。ウクライナから日本に避難してきた人は、878人(5月8日時点)に上り、官民で受け入れ体制が整備され始めています。

良い動きだと思った方もいるかもしれませんが、日本国内には既に難民がいます。

日本にいる難民の多くは、難民なのに難民と認められないため保護を受けられず、命の危険がある国への帰国を迫られながら、心身ともにギリギリの状態で入管に収容されているか、働くことも健康保険に入ることも生活保護を受けることも認められない仮放免の状態で入管の外に放り出されているか、どちらかの状況に置かれています。

既に日本にいる難民や、バブル期から日本で働いてきて生活基盤が日本にあったり、日本に家族がいたりして帰国できない人を、全て一括りにして悪者扱いし、「国に帰れ」と命じています。

難民が庇護を求めて来日した以上は、受け入れ保護するのは当然です。国や民族、人種、宗教、性別などによって受け入れ差別があってはなりません。

本書は、日本の入管問題、日本における難民受け入れの実態、外国人の権利に関心を持った人への入門書として最適だと思います。多くの人が本書を読んで考えることが、今後何らかの行動を起こすきっかけになればと思います。

ぜひこの機会に『ルポ入管ー絶望の外国人収容施設』』(著:平野雄吾)を手に取ってみてください。

それではまた次回の投稿で~



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「読書感想文企画」過去記事
#1『やさしい猫』中島京子 

#2『定点観測新型コロナウイルスと私たちの社会  -忘却させない。風化させない。-2020年前半』、第17章「共感の種を育てるために-コロナ禍で孤立する難民と仮放免の人々」安田菜津紀



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